ストレート
入部試験の終盤、打者紅林を迎えていた。男の時は抑えれた。でも今は女……もうあの時のようなピッチングは出来ない。でもそれでも投げれなくても抑える。オレの私の本気を楓に見せたい。
気持ちを入れて集中する。丁寧にコースを狙って腕を振る。初球はスライダー。紅林は初球から振って来た。打球はファールゾーンにきれた。一球目からやはり対応してる…
「初球スライダー来ると分かってても打てないか。追い込まれる前に打ちたいんだけどな。スクリューが来るまえに」
ワザと言ってるのか?…でも今は自分のボールを信じて投げるしかない。
2球目、スクリューをオレは投げた。紅林は最初から打つ気が無いみたいに見逃した。軌道を確認してるのか。ふふっ…思わず笑みが浮かべた。
「紅林さん打たせません。スクリューでちゃんと三振にとります」
「それは遠慮願いたいな。さっき軌道は確認したし、今度は打つよ。」
三球目を投じる。投げる球はスクリューだ。紅林はさっきの軌道からしっかりと修正したスイングをしてくる。でも私はスクリューが1球種だなんて一言も言っていない。ボールはさっきより鋭く、速いボールが紅林のバットを躱してミットに突き刺さった。高速スクリューだ。
よし!!後、2人。紅林さんを打ち取ったのは大きい。もう変化球はチェンジアップしか残ってないけど、ストレートが投げれない以上は使えない。つまりもうネタ切れだ。後は総合力で勝負するのみ。
「やられたよ。まだ隠し球持ってるなんて。後、2人頑張れ、高橋さん。」
紅林は苦笑いで最後はエールをした。ここまできたら負けられないよな。
その為にもバッターボックスに入った石田を抑えないとダメだ。
周りの盛り上がりは最高潮だ。女子の人気が凄い石田だからな。しかも男子からも慕われているらしく最早完全アウェーじゃないかこれ…あっでも男子で私の応援してくれてる人もいる。それに女子だって楓と綾がいる。負けたくない。
「秋ー!頑張れー!」
綾は精一杯声を出していた。楓も力が入ってるみたいだし。何か落ち着く。
「凄い人気だね。石田君。」
「それはお互い様でしょ。高橋さん。ただオレは負けないよ。こんなに自分の実力を試したいと思ったのは高橋秋斗との対戦以来だよ。」
「私は高橋秋斗選手に比べたら全然だけどね。名前が似てるだけで」
「それは勿論そうだよ。だって高橋秋斗はストレートが軸の投手だからね。スクリューが軸じゃない。」
はぁ?本人ここにいて、スクリューが軸だと思ってるんですが…そういえば翔平が昔、ストレートもっと自信持てって言ってたっけ…でも今は状況が違うし。
「そうなんだ。取り敢えず勝負始めよっか。」
スクリューが軸じゃないって言うなら初球からスクリュー投げてやるよ。こんにゃロー!
多少意地になって初球からスクリューを投じた。石田は勝負からスクリューを当ててきた。なっ初球から当ててくるなんて。
なら高速スクリューで打ち取る。石田はまたスクリューをファールにした。やはり対応してきてる。口だけじゃないって事か。
スクリューを連投する。石田はファールにしながらも少しづつ芯に捉え始めてきていた。打つ手ないな。スクリューは捉え始めてる。スライダーとカーブで一か八って手はあるけど、確率的に厳しいか。素直に諦めるべきか………
「秋!!!ストレート投げてー!本気を秋のストレートが見たい!!」
楓が小さい身体で精一杯の声を出していた。周りから注目を浴びてすぐに顔が赤くなっていたけど。それでも気持ちは十分に伝わった。迷いはない。ストレートで打ち取る。楓の方を向いて親指を立てた。投手の時に周りの守備を落ち着かせるためにやってた仕草。
一挙手一投足、集中して、ストレートを投じた。石田はそれに答えるようにフルスイングで打ちにくる。ボールはバットの上を通り、ミットに収まった。
周りからはドッと歓声があがった。まだ終わりじゃないのに。この天才少女と市山高校の4番の対戦には華があったからだ。
「高橋さんも凄いストレートもってるじゃん。高橋秋斗のようなポップすると感じるノビのあるストレートを。今日は完敗だよ。」
「ありがとう。とても楽しい勝負だった。またいつか勝負しようね…」
ダメだ…後、1人残っているのに…力が全く入らない…私はフラッとして、マウンドの上で気を失って倒れた。
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