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決意


「いや〜夢にまで見たお姉ちゃんと一緒のクリスマス!テンション上がるねー!」

春香は朝からテンション高い。いつもの事なんだけど今日はいつも以上だ。


「それより、友達ってどんな子なの?それに私に会いたがってたんでしょ?失礼の無い様にしないと」


「お姉ちゃんは固いなーそんなに丁寧にしなくても大丈夫だよ。昼頃には友達来るからね」


「いや、だからどんな子って聞いてるだけで…ほら!テンション高い子ならテンション高く接するし低い子ならそれなりのテンションで話すから!」


「うーん…まあいいや!あまりテンションは普段高くないよ。一部除いてだけど」


「それならいつも通りで良さそうだね。じゃあ私は料理するから春香は軽く飾っておいて」


「はーい!それにしてもお姉ちゃんはスペック高いねー相変わらず」


「?…普通だよ?」


「勉強・スポーツ出来るし、手先は器用だし、料理も出来るし、今だってエプロン姿可愛いし私の嫁になって!!」

そう言って、抱き付いてくる春香。咄嗟に手で頭を抑える。


「日本は女性同士は結婚できないよ?それに私は春香の事羨ましい。春香は誰とでもすぐ仲良くなるし、周りの人も明るくしてくれる。それにとても可愛いし。自慢の妹だよ?」


「おっお姉ちゃん…」


「それに比べて私は、一つの事に集中すると周り見えないし、春香みたいに友達多くないし…」


「そんな事無いよ!てか今日のお姉ちゃん大丈夫?何かあったの?」


「最近ちょっと考え事が多いだけだよ。気にしないで」


そう…ちょっと考え事多いだけ。私は、女だからという理由だけでどうせ無理だと勝手に決めつけてた。

でも、仁科飛鳥の様な女でも甲子園目指す人もいる。それに口だけじゃなくて実力もある。


私はどうなんだろう…実際に紅白戦に登板して投球が通じなかった訳ではない。ただ翔平や古川を抑えれるかと言えば間違いなく自信が無い。前より格段に実力が落ちてる以上、逃げの投球しかないだろう。


そんな今の自分の卑屈さが嫌い。挑戦してないのに、諦めてる自分が嫌い。こうやってウジウジしている自分が大嫌いだ。もし甲子園に挑戦するなら速く始めた方がいい。でもそれが分かっていても踏み出す勇気がない。でも諦める勇気も無い。自分がどうしたいのかが分からない。悩めば悩むほど結論は出ない…


「ハァ…」

思わずため息が出る。でもこんな姿を春香には見せられない。気持ちを切り替えよう。





〜2時間後〜




「お姉ちゃん料理出来たー?こっちは準備オッケーだよ!」

春香は飾り付けを終えたみたいだ。ただサンタのコスプレはどうかと思うけど…


「うん。出来たよ。夕食の分も下準備出来たし後は友達を待つだけかな?」


「そうだね!」

ピンポーンと音が鳴る。どうやら友達が来たみたいだ。


「って噂をすればだね!」

春香がすぐに玄関に向けて走り出す。埃がたつからあまり食事前は走るのは駄目なのに…後で注意しとかないと。まあクリスマスだからはしゃぐ気持ちは分かるんだけどね。


どんな子が来るんだろう…ってえ?

何でこの子が…



「お姉ちゃん紹介するね!私の友達の仁科飛鳥ちゃん。」


「仁科飛鳥です。飛鳥って呼んで下さい。今日はお世話になります。」

そう言って頭を下げる飛鳥ちゃん。それにしても本当に可愛い。一つ一つのパーツが完璧だし、テレビだと帽子被ってて気付かなかったけどちょっと出てるアホ毛も可愛い。


「こちらこそよろしく飛鳥ちゃん。私は春香の姉の秋です。…ちなみに2人は何で知り合ったの?」

当然気になったので聞いてみる。


「いやー私がお姉ちゃんとのデートの下見してたら変な人に絡まれてその時に助けてもらったの。でお返しに無理矢理コーヒーでも奢って話してたら気があったんだよね」

私とのデートの下見はこの際ツッコミ入れないけど、お礼言わないと。


「春香を助けて頂いてありがとうございます。」

頭を下げる。まさかそんな繋がりがあるとは…世の中狭いな。


「いえ、こちらこそ春香には御世話になっていますので。それに今日もこうして秋さんに会わせて頂いてますから」


「でも本当にありがとう。そういえば何で私に会いたかったの?」


「私は市山高校のスポーツ推薦が決まっててそれで練習を見に行かせてもらったんです。


そしたら紅白戦で投げ合ってる1人はエースの桐谷さん。もう1人は女の人で、正直ビックリしました。まさか自分と同じような人がいるとは思わなかったので。


結果、最後ボールを左手で受けながらも完封。本当にカッコよかったです。女の人でも野球は出来る。私も上を目指さないとって…思ったんです。で、どんな人か気になったので」


そう言ってニコッと笑う飛鳥ちゃん。あの紅白戦見られてたんだ。紅白戦に呼ばれたのはこれを見越してだったのかな…何か照れると同時に私は飛鳥ちゃん みたいに目指してる訳じゃない…というかまずスタートラインに立てていないという自分に嫌悪感を感じる。


「そっか。ありがとう。でも私は野球部に入ってないし、飛鳥ちゃんの方が凄いよ」


「それは春香から聞いてます。何で秋さんは野球部入らないんですか?」


「それは…女だからかな」

いきなり質問に動揺してしまう。飛鳥ちゃんの前で女だからって理由が通じる訳がない…


「……女だからですか?完封したのに?投球だって男に通用してるのに?この先どうなるかなんて分からないのにですか?」


声を荒げている。さっきまでとは全然違う人みたいだ。けど言ってることは正論だ。私は逃げていただけなんだ。古川とのリベンジの約束も果たしていない…翔平との約束だって…でも…


「ごめん。女だからって理由は訂正するよ。私は市山高校に来る前野球やってたの。でも病気になって。そしたら思ったようにピッチングが出来なくなって。スタミナも無くなって。野球から自然に目を逸らしてた。


でも私のピッチングが好き、もう一回見たいっていう人が居てくれて、一度だけだと思って投げたらやっぱり野球は楽しくて諦めたくなくて…でも古川あいつ勝てる自信がない。病気の前でも打ち取れ無かったのに。今の私じゃあ…」


「やっと本音で話してくれましたね。北条高校の古川にも勝てますよ。悠先輩と力を合わせたら。2人とも怪我持ち病気持ちかもしれませんけど2人なら大丈夫ですよ」


微笑みながら優しい声で話す飛鳥ちゃん。少し気持ちが楽になった気がした。


「2人?」


「あの人と同じ中学校ですけど才能だけなら一級品ですし。奈川の時みたいに秋斗さんがエースで引っ張らなくても大丈夫ですよ」


「え?………何で知ってるの?」


「そりゃ投球フォームや打席でのルーティンまで一緒ですし、何より春香を前に見た事あるんですよ。秋斗さんの応援に来てたお兄ちゃーんて大きい声で応援する春香を」


「それはバレて当たり前か…でそれ知って何がしたい?」


春香は変わってないしそれはバレて当たり前…か。完全に迂闊だった…


「秋斗さん何がしたいんですか?」

真剣な目だ。その曇り一つもないような眼は私の背中をそっと押してくれたような気がした。私も逃げてばっかりじゃいけないと…


「俺は…野球部に入って古川とのリベンジの約束を果たしたい」


「なら答えは出てるんじゃないですか?私も先輩の力添え出来るように頑張ります。だから先に野球部入って、春の大会から活躍して下さい。私はすぐに先輩の背中に追いついて見せますから」







「ああ。分かった。元天才投手高橋秋斗の本気を春の大会で見せてやる」


今日私は野球部に入る事を決意した。


この長い話に入れない春香


「そういえば何で私に会いたかったの?」

(まあそりゃあ会いたかった理由ぐらい聞くよね。我慢我慢)


「何で秋さんは野球部に…」

(あれれー後半に入っても続いてる…わたしの出番が少なく…)



「ごめん女だからって理由は…」

(長い…もう後半も終わりかけなのに。こうなったら最後強引に話に)



「お姉ちゃんいい加減に「秋斗さんの応援に来てたお兄ちゃーんて大きい声で応援する春香を」」


(…私の所為!?って急にツッコミづらい…まとめ入ってるし…うぅ)


春香の戦い 完


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