余波
私は朝早めに学校に登校していた。一日目が色々ありすぎて、二日目はゆったりと過ごしたいな。
でもそういえば野球の件結局落ちたのは何気にショックだ…受かってから辞退するつもりだったのに。元々楓にピッチング見せたかっただけだし、女の身体では上は目指せないしな。何か自分に言い訳をしてるみたいで心が痛い。もう諦めたはずなのに…はぁ…
溜息をついていると楓が教室に入った。
「楓おはよー!」
「おはよう。身体は大丈夫?」
「うん。大丈夫。寧ろ今なら9人打ち取れる気がするよ!」
「良かった。でも無理したら駄目だよ。」
「ごめんごめん。次から気をつけるよ。」
「それならよし!」
ふふっと楓がワザとらしくドヤ顔をした。それを見て私は笑った。昨日が嘘みたいに和やかだなーこれが続いたらいいのに。「おい!高橋秋って奴いるか?」
また何か来たよ…しかも世に言うイケメンだ…何か負けた気がする…今は女。今は女だ!負けてない!
「昨日転校してきた奴でオレのクラスらしいんだけど!オレが病院で休んでる間に転校しちゃってさーオレが学校に登校している日に転校してこいよ!転校リアクション乗り遅れたじゃねえか!」
心底どうでもいい理由キター!…はぁ…何かめんどいな…
「で誰なんだ?ウチの野球部を8人全員三振に抑えやがった、筋肉女は?」
「私ですけど…」
筋肉女ってちょっと嬉しいな…いや女の子は喜ぶべきじゃないけど今までの努力が褒められた気がして何か嬉しい。
落ち着けオレ…何か嬉しいのと恥ずかしいので顔が赤くなる。
「え!?お前が?…めちゃくちゃ可愛いじゃん…え?本当に君?庇ってるとかじゃなくて…?その細い身体で流石に県ベスト8のウチの野球部を抑えたの?ウチしかも負けたの優勝校だぞ?強いぞ?」
「はい…私です。」
「ほっ本当に?」
「はい。本当です。」
何回確認するんだろうか。何か繰り返すの楽しいからいいんだけど。
「マジかよ…オレ好みサラサラヘアー、顔はどのパーツも完璧で清楚系だし、それに控えめな胸も可愛いし、足はモデルみたいに細い。君に出会えて良かった〜!それにゴニョゴニョ」
何か小声で呟いてるけどさっぱり分からない。でもどこかでこの顔見た事あるようなー
「あっ俺の名前は桐谷悠。一応野球部のエースで5番打ってる。」
なるほど。どおりで見た事ある顔だと思った。秋の対戦時のスコアが2対0だったから確かいいピッチャーだった気がする。まあ私が勝ったけど!!!
「知ってるみたいですけど一応自己紹介します。私は高橋秋です。昨日転校してきました。これからよろしくお願いします!」
恥ずかしくて下を向いたまま挨拶する。こいつも対戦してみたいな
「でさーどうやって打ち取ったの?石田とか紅林さんとか。あの2人は甲子園レベルのピッチャーでも簡単に三振しないぞ?それを女が8者連続三振なんて信じらんねぇ。どんな球投げたんだ?」
うぅ…何て返事したらいいんだろう。選択肢でも作ってみようか…
1.女の子だから手加減してくれたんだよ。
2.お前に言う義理ねえよ。
3.高橋秋斗のピッチングだよ!
うーんロクな選択肢ないな。てか全部アウトでしょコレ…てか最後バラしてるし!!本格的にどうすれば…
「桐谷君。秋は私が高橋秋斗選手に憧れてるって言ったからそれを再現して投げてくれたんだよ。」
自動選択じゃん!!そして楓、ドヤ顔するんじゃない。全然助けられてないから!寧ろ追い込まれてる。ヤバイ終わった…
「高橋秋斗?嘘だろ…?オレ中学の時からファンだったんだよな。無駄一つない綺麗なフォームで中学の時全国制覇の実力の持ち主だし、驕りもないし謙虚で人間性もいいらしいんだよ。だから高校の時対戦した時は嬉しかったんだよなーまあ勝ってたらもっと良かったんだけど」
何この絶賛の嵐は。嬉しいんだけど恥ずかしい。
「あっでも髙橋秋斗転校したらしいぜ。あくまで噂だけど。でも名門校のエースが転校なんて普通はあり得ないし、よっぽど何かあったんだろ。もう投げ合える日が無いと思うと寂しいよな。」
やっぱり女になって色んな人に迷惑掛けてる。この責任は一緒背負って生きるしかない。でも…
私は気が付いたら涙を流していた。これが何の涙なのか私には分からない。私は本当に何やってるんだろう…
「おっおい!泣いてんのか?大丈夫か?」
桐谷の声で周りから注目が集まる。泣いてるのを見られのが恥ずかしい。でも止めようと思っても涙は止まらなかった。
「大丈夫だよ。目にゴミが入っただけだから。目が痛くて話出来そうにないから、話は後で。」
そう言って私は教室から出た。どこにいこうか迷ったので屋上に向かった。確か屋上には人は基本的に居ないらしいし。
屋上に着くとやはりが人がいない。これで見られずに済む。それにしても久しぶりに泣いた。はぁ…何で泣いたか言い訳大変そうだ。
「お前髙橋秋斗なんだろ?」
え?嘘?思わず振り向くとそこには桐谷悠が立っていた。
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