神宮大会決勝
神宮大会決勝、奈川高校対北条高校の試合は大詰めに差し掛かっていた。スコアボードに0の文字がならび、9回裏である事を示していた。
アウトカウントは既にツーアウト。奈川のエース高橋は自分の気持ちを抑えるように息を吸って心臓の高鳴りを落ち着かせた。
後1人…4番のあいつさえ打ち取れば延長戦だ。敬遠なんてするつもりはない。今度こそ…
高橋はカーブ、スライダーを駆使してツーストライクに追い込んだ。よし!これであの球を使える。
この試合一度も打たれていない高橋の決め球スクリューを投じる。しかし無情にもバットはスクリューを捉えスタンドに打球は消えた。
「打ったぁぁぁ!!!4番古川サヨナラホームラン!!一年生エース高橋秋斗の決め球スクリューを打ち砕きました。」
「試合終了!1対0で北条高校、秋の神宮大会八度目の優勝です。類稀な変化球で北条打線を翻弄した高橋ですがあと一歩及びませんでした。」
★★★★
「泣くなよ秋斗」
高橋に声を掛けたのは同じく一年生でありバッテリーを組んでいる松田翔平だった。
「泣いてねぇよ!バーカ!」
「おっ!ツンデレか?男がしても可愛くないから止めといた方がいいぞーいくら女顔でもなー!」
「ツンデレじゃねえし!女顔でもねーよ!あーもう何で最後で打たれるかなぁ…」
「本当、天才投手とかマスコミに騒がれてるのにこんな素顔だったら笑われるぞ?まあそれはそれで面白いと思うけどな」
「そんなもん知るか!春の選抜でゼッテーリベンジしてやる!甲子園出場はもう決まりだし!」
「よし!その意気だな!」
「おう!」
秋斗と翔平は拳を合わせた。
「そろそろミーティングだぞ!」
キャプテンが2人を呼んだ。
「やべぇ!いくぞ」
2人は急いだ様子で走って監督のところ向かった。
「あれ?」
身体がフラッとなって視界が狭くなる。身体が熱い。
「おい!秋斗!」
翔平の声は届いたと同時に秋斗は意識を失った。