表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/93

ファランボ理術アシスト

 

「ついでに言うたら、東の術は西の理術に勝ったためしもあらしまへん。そこの奥さんの妙なまやかしも、もーう効かしまへんでぇッッ」



 ああ、西方ティルムン語のけんか腰! はんなりしてるだけに裏がこわい!



「こんなところで見境みさかいなく派手に術使つこうて、おっさん頭どんだけ悪いねん! 何も知らん他人さまに見られてひきつけ起こされても、理術は責任とらへんのやでッ。悪人は悪人らしう、とっととそまのぶぶ漬けあがってお帰りよしッッ、ほうきがないから杖に手ぬぐい引っかけたろか!」


 つかつかつか……。ものすごい早口で謎の悪態をまくしたてながら、マグ・イーレ理術士隊長ファランボはカヘルの背後に歩み寄ってきた。転じて低く問う。



「大丈夫おすか。カヘル侯」



 カヘルは理術士に、くっとうなづいて見せる。何故ここにファランボ理術士がいるのかははかり知れぬが、ともかく助けられた!



「あの理術士、ベアルサとは私が何とか拮抗しますよって。とにかく他のの制圧をお願いします」


「はい」



 ぎ、ぐわんッ!


 カヘルたちの前方に広がる光の泡、半球の理術≪防御壁≫が揺れひびいた。


 すけて見える金の光のその向こう、ベアルサが杖を高く掲げている。彼の周りの一味を包むように、さらに大きな別の泡が輝いていた。



「我らを隔てる壁となれ……。 なめくさってんじゃねぇよ、脱走兵が」


「自分こそ危ないもぐり・・・のおっさんが、何言うてはんのや。高みより高みより いざつどえ……」



 ベアルサとファランボ、両者の繰り出す≪防御壁≫が、ぐりぐり・じりじりと押し合いを開始する。



――しかしこの状態から、どう切り込めば良い……? 理術の≪防御壁≫に対して我々の直接攻撃は意味をなさぬ。前回のようにディンジーさんの≪声音こわね≫が加わらねば、突破は難しいのではないか!


「これより切り替えます」



 カヘルの内心の声を聞いたかのような頃合で、ファランボが低く言った。早口詠唱をとぎれなく続けるその呼吸のあいまに、理術士はデリアド騎士三人に向けて指揮をも放つ。



「集い来たりて 悪しき物の怪を撃つ 我らがもののふの やいばやじりつぶてをささえよ――――カヘル侯、皆さん、行てまえぇぇぇッッ」



 ローディアは、自分の長剣が白く発光し始めたのを見てぎょっとする。



「正面攻撃、捕縛対象ッ」



 しかし続くカヘルの声に、毛深き側近はすぐさま反応した! こちら側の光の泡が消滅し、ベアルサの顔が膜ひとえの向こうにはっきりと見える。


 じゅわぁぁぁん!


 ローディアの渾身の打ち下ろしが、ベアルサの光の膜に切り入った・・・・・。長剣の切先が、身を引いた敵理術士の肩をかすめる。



「ふんッ」

 


 続いてのカヘル打席! 


 白く輝くいぼいぼ戦棍が、ぶいぶいと光る泡を裂くようにベアルサを攻めてゆく。連打だ! 危なっかしいところでそれをかわしながら、敵理術士は徐々に後退していった。


 ひゅいっ……!



「ぬっ!?」



 迫った気配を察知して、プローメルは渋く身体を左に移した。きいん! 手中の中剣、その半ばほどに矢が擦れる。


 ベアルサの後方、かなり離れて波止場まで退いていた一味の者たちが、射撃してきたらしい。


 ひゅい、……ひゅい!


 さほど風圧のないところを見ると、小弓のたぐいである。


 ぷわっ!


 ローディアに向かって放たれた一矢は、瞬時に出現した光の泡によって阻害され地に落ちた。しかしすぐに泡は消え失せる、




「くーっ。ひとり何役の器用できるほど、私もうつわ・・・広くないよってッッ。いざ来たれ 群れなし天駆あまがける光の粒よ、……」



 ファランボが、いっぱいいっぱいのところで攻撃援護と防御とを交互に詠唱しているのだ。恒常的な≪防御壁≫のないカヘル側は、その射撃によって次第に牽制され、ベアルサはぐっと間を広げた。とその時、ベアルサの前の光の泡がふいに消滅する。



「いざ来たれ 群れなし天駆あまがける光の粒よ、高みより高みよりいざつどえ つどい来たりて 我が敵を、薄闇の眷族を撃て!!」



 かッ、とカヘル頭上が明るくなった。



「なッッ……、こんなところで! おまい、人間あいてやぞぉぉぉっ!?」



 ファランボの絶叫に驚愕がまじったが、カヘルの耳には届かなかった……空を見上げる副団長の青き目に、信じられぬほどに(あか)い炎のかたまりが映っている。



「後悔して派手に死ねやぁぁぁ、若僧カヘル!!」



 ベアルサの高笑いとともに、天から降り来る巨大な炎の奔流が、デリアド副騎士団長をめざして落ちてきた……。業火がカヘルの身を焼きつくしに迫ったのである、しかしその時!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ