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ハイツ一ツ谷のホッとな日常  作者: モリサキ日トミ


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何が起きたのか

病棟に入った加藤と操たちは、病棟待合室で今回の事件の担当刑事二人と会った。

三十代ぐらいの女性刑事は佐久間ですと、操たちに名乗った。

その隣に立っているのは菊池という柔道が得意そうな体型の刑事で四十代後半といったところだろうか。

二人とも柔らかな表情を浮かべているが、鋭い目線でこちらを見ているのを珠子は感じた。

操は自分を含め三人の紹介をした後、早速、新上と思われる男の画像を刑事たちに見せた。

そして


「この男がソラさんを襲った男なら、早く捕まえてください!我が家の前をうろついています。孫にもしものことがあったら…」


普段はでんと構えている操も、さすがに焦っていた。

新上という男はすでにソラを傷つけている。彼は本気だ。本気で好きな人を殺して誰も触れられない自分だけのものにしたかったのだろう。その結果、一命は取り留めたものの彼女に大怪我を負わせているのだ。

そして過去にソラと自分を引き離した原因であると珠子のことを思っている。


「神波さん、珠子さんが狙われているのは、遊園地で新上から清瀬ソラさんを助けたことによる逆恨みと考えているんですね」


(いか)つい体型の菊池刑事が見かけにそぐわない穏やかな声で聞いた。


「はい」


操ははっきりと返事をした。


「珠子さん」


女性刑事の佐久間が珠子の隣の椅子に座り


「遊園地で、何があったのか教えてもらえますか」


と、聞いた。


「はい」


珠子は覚えている限りのことを佐久間に話した。


その日、珠子は『フラワ・ランド』で孝とデートをしていてジューススタンドでクリームソーダを注文しようとしたら、ステージ衣装の清瀬ソラが割り込んで飲み物を購入し周りを気にしながらどこかに行ってしまった。その後、珠子と孝はクリームソーダを近くのベンチに座って飲んでいた。すると二人の十メートル程前をソラがスタッフに見つかって連れ戻されているのが見えた。その時、物陰から男が手に何か光る物を持ってソラに襲いかかって来た。それに気づいた珠子がその男に向かって行った。そして珠子の眼力で新上の動きを止めたのだが、それを正直に言うわけにもいかないので、彼女はこう話した。


「私が変な顔と動きをして、ソラさんに襲いかかろうとした人が驚いて固まっちゃったの」


「それで、その時のことを逆恨みしたと」


「はい。そういうことだと思います」


「そうですか」


佐久間刑事は、なんだか腑に落ちないと思いながらも珠子の話に頷いた。

二人の刑事は珠子と操の聴取を終え、ドクターから面会の許可をもらいソラの病室へ向かった。




その頃、新上はすでにソラがいる病棟に入り込んでいた。

彼はナイフでソラの肋骨で覆われていない部分を深く刺した。そして彼女は病院ここに運ばれた。おそらく消化器外科辺りの病棟いるのではないかと当たりをつけたのだ。

そして、大人五人と子ども一人が病棟の通路を歩いているのを見つけた。

よし。まず、あの子どもを先に()ろう、新上は思った。


「あの」


突然声をかけられて新上は驚く。


「あの、どなたのご家族様ですか?」


と、聞いたのはこの病棟のナースだった。

この病院のお見舞い等の面会時間は午後一時からで、その時間以外に入院患者以外の人が病棟にいられるのは入退院する場合とドクターの話を聞く時だけだった。


「どなたのご家族様で…」


もう一度ナースが聞こうとした時、


「うるさい!」


新上が上着の内側のポケットからキラッと光るものを取り出し振り上げた。

ナースの顔が引きつる。

刹那、その振り上げられた手首を後ろからごつい手がギュッと掴んだ。

えっ、と新上は眼球が落ちそうなくらい目を見開き振り向こうとする。

手にしていたナイフがカチーンと音を立てながら床に落ちた。


「新上哲夫、十一時四分、傷害未遂の現行犯で逮捕する」


あっけなく新上は菊池刑事によって逮捕された。


「やめろ!なんでだ!」


新上は手錠をかけられた後も暴れた。だが中肉中背の彼はがっしりした体躯の菊池にホールドされて身動きが取れなかった。

その騒ぎに歩ける入院患者が集まって来た。

菊池刑事は病棟スタッフに野次馬を病室に戻すように指示をして、彼らのすぐ後で事の成り行き見守っていた珠子に目線を移し表情を少し緩めて頷いた。

珠子も頷き返す。

その場所からかなり離れているソラの病室から佐久間刑事と加藤と操たちが、院内の決まりを破って走って来た。


「菊池さん、何が起きたんです?」


佐久間が目の前の様子に理解が出来ないという顔をした。

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