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思い立ったが吉日、ということであたしは癒しの孤児院ではなく、図書館に訪れていた。
……どうしてか、"弟"もついてきたがこの際どうでもいいだろう。
「……いきなり図書館って、どうしたの?姉さん」
「図書館お喋り禁止」
「いや、勝手にルール作るなよ」
……"弟"の言うとおり、図書館でお喋りをしたらいけないことはない。
むしろ、大歓迎と言うぐらいお喋りをしている。
あの本はどうだったとか、この本はどうだとか。
――――だからといって、この"弟"と慣れあうつもりはこれっぽっちもない。
「……よそはよそ、うちはうち」
意味不明だと自分でも思ったけど、気にしない。
隣にいる"弟"はわざわざ聞こえるように溜息を吐いた。
「……調べたいことがあるなら素直に俺に言えばいいのに。――――手伝うよ?」
「いらないから、帰れ」
あたしがはっきりとそう言うと、また大袈裟に溜息をついて余所へ行った。
帰る時は呼んでよ、と言い残して。
……黙って帰ってやる。
◇ ◇ ◇
あたしが調べたかったのはリヒトのことだ。
――――正確には、以前リヒトの立場にいた人物のことだけど。
そもそも、あたしはリヒトの立場が良くわかっていない。
神殿にいるんだから神様、と安直に思ったこともあるけど。
でも、あたしの知っている限り、リヒトがしていることはあたしとのおしゃべりだけだ。
あと、彼が待っている間が次の日の天気ってことだけ。
……あたしのいない時間になにかやってるってこと?
でも、何かって何よ。
彼に何ができるって言うの?外には出たらいけないのに?
疑問はどんどんと膨らんでいる。
そもそも、どうしてリヒトがあそこにいるの?
リヒトじゃなきゃ駄目なの?他の人じゃ駄目なの?
どうして彼だけが掟に縛られてあそこにいなきゃいけないのよ。
それって、なんか変。……それじゃあまるで、生贄みたいじゃない。
本当はリヒト本人に聞けばいいんだろうけど……なんか聞きづらいし。
……とりあえず、"神様"が題名に入ってる本を片っ端から探そう。
まず最初に目に入ったのは……『かみさまとぼく』という題名の"絵本"。
いやいや、絵本は関係ないでしょとあたしはそれをスルーした。
……のだが。
「……なんで無いわけ?」
それ以外に"神様"が題名に入ってる本が1つも無い。
……もしかして、この世界には神様と言う概念がない?
いやいや、神殿のシンは神様の神だ。それはないだろう。
「……しょうがない」
あたしは諦めてその絵本を本棚から出すと、席に座って読むことにした。