第十章54 【覇王杯/オーバーロード・カップ1回戦/第6試合】14/【ゼロレイ】の深刻な話2
【リゼット】と【ゼロレイ】の話は続いている。
【ゼロレイ】は、
「僕の居た【異世界】でも【覇王】と言うもの、制度は存在していた。
僕は少年の様な姿をしているが、実際は1000万歳を超える大賢者だった。
そして、その世界の【覇王】の片腕だった。
【覇王】と言うものが出来たと言う点では、この世界よりも遙かに先輩という事になる。
様々な【覇王】が産まれる数多の【世界】の中では112番目に早い【古参】であると言っても良い【覇王】だ。
そのため【覇王】やその敵となる存在が産まれる仕組みなどをよく理解していると言っても過言ではない。
僕はその【知識】を担当する者だった。
当時の【覇王】とはどちらかと言うと【RPG】で言うところの【大魔王】の様な立場だった。
そのため、敵対者としてあげられるのは【勇者】や【英雄】と呼ばれる存在達だった。
つまり、【覇王】は【覇権】を握っている存在で、【勇者】や【英雄】が挑戦者という立場だった。
だけどね、【覇王】は、自分より弱い敵とされる【勇者】や【英雄】の挑戦を待つ事に飽きて来たんだ。
いや、逆に憧れて居たと言うのが正解かな?」
と言った。
【リゼット】は、
「は?憧れていた?
自分より弱いと思っている相手に?」
と聞いた。
「そう。
憧れていたんだと思う。
僕は本人じゃないから多分、そう思うとしか言えなかったけどね。
なぜなら、物語というものは【弱者】の中から選ばれた【スター】が【強者】を倒す事によって【勇者】や【英雄】と呼ばれる者として作り出されている。
言ってみれば、それは【物語の主役】だ。
【覇王】は、【主役】になりたかったんだ。
だけど、【覇王】の立場で、【勇者】や【英雄】を倒してもそれは弱い者虐めであり、主役とはなれない。
【勇者】や【英雄】では役不足だったんだ。
【覇王】が【主人公】になるには、【覇王】より強い存在を打倒しなくてはならなかったんだ。
そこで選ばれたのは万能の世界/最強の世界として名高かった【全知全能界アンサワルド】を滅ぼしたとされる謎の塊、【総謎超想果ミステアルティ】と第2の脅威とされた【虚他外逆裏アナザアブソ】の2つだ。
この2つを討伐する目標を持つ事で、【覇王】は主役になることが出来た。
【全知全能界アンサワルド】においては全てを知る事が出来る世界とされ、知らない事の代表格である【謎】は悪とされていた。
【謎】は【覇王】よりも遙かに強大であり、限界が見えなかった。
だから、時の覇王達はこぞって、【総謎超想果ミステアルティ】と【虚他外逆裏アナザアブソ】を討伐して行った。
そして、それは簡単に上手く行っている・・・【覇王】達はそう思っていた。
いや、思い上がっていた。
それが、【総謎超想果ミステアルティ】と【虚他外逆裏アナザアブソ】の上っ面を舐めただけに過ぎなかったとも知らずに。
そして、愚かな【覇王】達の攻撃が刺激となり、【総謎超想果ミステアルティ】と【虚他外逆裏アナザアブソ】は増大して行った。
途方もなく。
果てしなく。
際限なく。
どこまでも、どこまでも、どこまでも・・・」
「何が言いたいの?」
「【不知】と言う言葉がある。
【未知】ではない。
【不知】だ。
【未知】はまだ発見されていないもの。
【不知】はそのものが出てこない限り絶対に世に出ない完全秘匿の存在。
似ているけど、それは明確に違う。
そして、【不知】とは元々、【総謎超想果ミステアルティ】と【虚他外逆裏アナザアブソ】が合わさって出来たもの。
全てを知っているとされる【全知全能界アンサワルド】においての絶対悪、知らないと言う事を体現した【不知】が生まれた。
名前を変えて【総謎超想果ミステアルティ】と【虚他外逆裏アナザアブソ】は絶対的な壁として今も存在している。
断言しよう。
君には無理だ。
これには勝てない」
と語った。
話はなおも続く。




