第094話 久しぶりの王都
俺達はカラオケを楽しんだ後、タクシーで家に帰る。
すると、ノルン様はおられなかったが、タマヒメ様が1人でテレビを見ていた。
「あ、おかえり……」
タマヒメ様が振り向いて、声をかけてくる。
「ただいま帰りました。ノルン様は?」
「あんたらがそろそろ帰ってくるだろうってことで帰った」
あの人ってどこに帰っているんだろう?
「そうですか。だし巻き、美味しかったです?」
「ええ。良い店ね。ジュリア、居酒屋とカラオケは楽しかった?」
タマヒメ様がジュリアさんに聞く。
「ええ。すごく楽しかったです」
「そう……なら良かったわ」
「はい。それでタマヒメ様、遅い時間になりましたが、あちら世界の別荘に泊まろうということになりましたので一緒に行きませんか?」
帰る時にそういう話をしたのだ。
どうせ明日はフロック王国とはいえ、異世界だし。
「あー……そうね。お風呂にも入りたいし、そうしよっか」
「そうしましょう。それですみませんが、一度、私の家に送ってくれないでしょうか? 着替えや準備がありますので」
「それもそうね。わかったわ。飛ぶわね」
タマヒメ様がそう言うと、一瞬で2人の姿が消える。
「転移は本当に便利だなー……」
「まあの。我らも準備をするぞ」
「ですね」
自分とサクヤ様の着替えを用意していく。
「我、思うんじゃが、人は点数をつけるべきではなく、どれだけ自分が満足したかだと思うんじゃよ」
76点がまだ言ってる……
「そうっすね。ジュリアさんも楽しそうでしたし、それで良かったと思います」
ジュリアさんは79点だった。
俺は77点。
うん、まあ、3人共、その程度だったのだ。
「うむうむ。まったくもってその通りじゃ」
サクヤ様が頷くと、準備を終えたので別荘に飛んだ。
そのまましばらく待つと、ジュリアさんとタマヒメ様がやってくる。
そして、順番に風呂に入っていき、この日は就寝した。
翌日、いつものように朝風呂に入り、朝御飯を食べると、こっちの世界の服に着替える。
俺とサクヤ様が下の脱衣所で着替え終え、上に上がると、タマヒメ様が和服姿のままでソファーに座っていた。
「タマヒメ様は行かれません?」
「行かない。私はここで漫画を読んでるから」
本当に外に出ない人なんだな。
「多分、ノルンから招集を受けるんじゃないか?」
「そうかもね。まあ、そういうわけであんたらで行きなさい。水の国とやらに着いて、安全そうなら声をかけてちょうだい」
タマヒメ様がソファーに寝転がって漫画を読み始めた。
「こやつは冒険の素晴らしさがわからんらしいな。RPGでもやらせるか?」
うーん、携帯ゲーム機でも貸そうかな……
「お待たせしました……って、どうしました?」
着替え終えたジュリアさんが寝室から出てくる。
「タマヒメ様は行かれないんだって」
「あー……まあ、今日はカーティスさんのところとギルドですからね」
人見知りはダメか。
「そういうことじゃ。では、行くかの」
「そうですね」
「行きましょう」
俺達はサクヤ様の転移でちょっと懐かしい王都にやってくる。
建物と建物の間の小道から大通りに出ると、相変わらずの人の多さだった。
「やっぱり朝から賑わってますね」
「さすがは王都じゃの。今日は久しぶりに青船亭の魚介の煮込みパスタにするか」
「良いですねー」
超人気だったが、さすがに1ヶ月くらい経っているし、落ち着いているだろう。
「そうしましょうか。じゃあ、まずはカーティスさんのところですね」
俺達はカーティスさんの研究室を目指して歩いていく。
「おるかのー?」
「さあ? いなかったら本邸の方に行ってみますか」
俺達が久しぶりの王都の町並みを眺めながら歩いていくと、カーティスさんの研究室に到着した。
「カーティスさーん」
玄関の扉をドンドンと叩き、声をかける。
すると、中から音がした。
「おるの」
「みたいですね」
俺達が頷くと、扉が開き、カーティスさんが顔を出す。
「おー! ハルトか! 帰ってきたのか」
「ええ。火の国は良かったですよー」
「そうか、そうか。まあ、入ってくれ」
俺達は相変わらず、本の多い研究室に入ると、テーブルにつく。
カーティスさんもまた対面に座った。
「で? 火の国はどうだった?」
「すごかったですねー。眺めも良いし、見るものすべてが新鮮でしたよ。食事も美味しかったですし、温泉も良かったです」
「それは良かった。あそこは季節で色が変わるからまた行くと良い」
というか、別荘をもらったからしょっちゅう行く予定。
「そういえば、ワイバーンを狩りましたよ」
「ほう! それはすごいな! ドラゴンスレイヤーなら当然だと思うが、狙った狩りは難しいだろう」
「魔法ギルドに専門の人がいたんですよ。手伝ってもらいました」
「専門というと、ハワードか?」
知っているらしい。
まあ、この人は顔が広そうだしな。
「ですね。縦にも横にも大きい怖い顔をしたマッチョマンです」
「そいつだ。嫁や娘には会ったか?」
「冒険者ギルドの方にいた娘さんに会いましたよ。全然似てませんでした」
見た目も雰囲気もしゃべり方も。
「嫁さんを見ると、びっくりするぞ。犯罪臭がすごい」
まあ、シンディーさんと歩いてても犯罪臭がすると思うが……
「へー……」
「そういうネタになってる男だな。ただ実力は本物だ。引退しているはずだが、運が良かったな」
担いで持って帰ってくれたしね。
「巫女さんの祈りの護衛で一緒だったんですよ」
「ほう……それは良かったな。あー、そうだ。ワイバーンで思い出したが、ドラゴンの素材の売却が終わったぞ」
おー!
金だ!
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