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第089話 話し合い


「ハルトさん、ハルトさん」


 心地良い声と身体を揺すられることで目が覚める。

 さすがに何度も経験していることなので状況はすぐに把握できた。


「おはよー、ジュリアさん」

「おはようございます。朝ですよ」

「うん」


 上半身を起こし、身体を伸ばす。

 すると、全身がちょっと痛かった。


「おー、筋肉痛だ」

「私もです。今日はゆっくりしましょう」

「そうだね」


 明日から仕事だしな……おっと、仕事のことは考えないようにしないといけない。


「お風呂に入って、身体をほぐしましょうか」

「そうしよっか」


 俺達は寝室を出ると、リビングのソファーのところに向かう。

 すると、ソファーの下に布団が敷いてあり、一緒に寝ているサクヤ様とタマヒメ様がいた。

 ぱっと見は微笑ましい。


「本当にここで寝るんだね」

「気が引けますが、ここがいいって言ってましたからね」


 昨夜、寝ようということになった際にタマヒメ様をベッドに勧めたのだが、やはり寝室は俺達が使うように言われ、タマヒメ様はこっちで寝ることになったのだ。


「サクヤ様、タマヒメ様、朝ですよ」


 2人の肩に触れ、揺すり起こす。


「おー……もう朝か」

「おはよー……」


 2人が目をこすりながら身体を起こした。


「お風呂に入ってきてください。朝風呂は気持ちいいですよ」

「おー……タマちゃん、行くぞ」

「んー……」


 2人は立ち上がると、階段の方に行ったのでジュリアさんを見る。

 すると、ジュリアさんが頷き、ついていったので任せることにした。


「いたたっ」


 ソファーに腰かけ、翌日に来る筋肉痛はまだ若い証拠と思いながら足をマッサージする。

 そのまましばらく待っていると、3人が戻ってきた。


「朝風呂って良いもんね」


 タマヒメ様も満足したようだ。


「ですよね。タマヒメ様も転移を使えるようですし、いつでも来ていいですから。ここに関して言えばサラさんのご厚意で借りているところですし、好きに使ってください」

「良いわねー。この分だと水の国とやらでも同じような別荘がもらえるんじゃない?」


 ありえる……

 ありがたいことではある。

 でも、気が引けるんだが……


「どうでしょうかね……水の巫女さんがどういう方かにもよると思うんですけど」

「それは知らない。ノルンにでも聞いてみれば? あ、それよりもあんたもお風呂に入りなさいよ」

「そうします」


 立ち上がると、ひょこひょこと階段を降り、風呂に入る。

 湯に浸かり、ぼーっと外の風景を見ていると、気のせいだろうが、筋肉痛が和らいでいくような感じがした。

 そのままじっくりと湯に浸かり、朝風呂を堪能すると、風呂から上がり、上に戻る。

 すると、テーブルの方ではすでに朝食が用意されており、3人共、席についていた。


「あ、遅れました」

「あんたが最後だったんだから仕方がないわよ」

「譲ってくれたわけだしの」

「どうぞ座ってください」


 3人の温かい言葉を聞き、ジュリアさんの隣に座ると、朝食の和食を食べだす。


「今日は今後の話し合いでしたね」


 ジュリアさんが聞いてくる。


「そうだね。この足では動けそうにないし」


 どちらにせよ、行く気はなかったが、街道や修験道を歩けそうにない。


「私もちょっと痛いです。階段が特に……」

「ね?」


 ジュリアさんもひょこひょこ歩きだった。


「情けないのう。運動不足じゃないか? 特にハルト」

「いや、昨日はかなり歩きましたよ。一日中歩いていたじゃないですか」


 むしろ頑張った方だ。


「我はまったく疲れておらんぞ」


 常識の範囲外の神様じゃん。


「俺もウォーキングでもした方が良いっすかね?」

「まあ、適度な運動は良いと思うぞ。単純に健康のためじゃ」


 だよねー。

 今度、やってみるか。


 俺達はその後も話をしながら朝食を食べると、ソファーで食後のコーヒーを飲みながら今後のことについて話し合いをすることにした。


「あんたら、水の国とやらに行くんだっけ? こっちの地理とか知らないけど、どうやって行くの?」


 タマヒメ様が聞いてくる。


「車ですね。えーっと、これがノルン様からもらった世界地図になります。ここが火の国ですね。それで旅行の拠点となっているフロック王国の王都がここです」


 ローテーブルに地図を広げ、説明する。


「ふーん、ここが水の国ね……こうやって見ると、火の国より近いわね……え? 車?」


 地図を見ていたタマヒメ様が驚いたような表情で顔を上げる。


「ええ。浅井の山の車庫にあるオフロードの車を借りて、夜中にこっそり街道を進みます」

「あー、あれか……風情がないわね」


 まあね。


「この町みたいに列車で繋がっていると良いんですが、この世界の移動は歩きか馬車なんですよ」

「時間がかかるわけか」


 タマヒメ様が納得したように頷いた。


「はい。俺もジュリアさんも平日は仕事がありますし、移動時間を少しでも短縮したいんですよ」

「なるほどねー。じゃあ、今回もその手で行くわけ?」

「そうなりますね。王都の東門から出て、水の国を目指します。カーティスさんという王都のお偉いさんが言うには火の国の半分くらいの時間で着くそうです」


 距離的に見てもそんなもんだ。

 車なら3日くらいだな。


「確かそんなことを言っておったのう……どうする? 明日からでも行けるじゃろ」


 サクヤ様が聞いてくる。


「一回、王都に戻ってカーティスさんに話を聞こうと思っています。本を返さないといけないですし、ちょっとドラゴンの素材売却も気になります」

「そういえば、そんなこともあったの。だったら冒険者ギルドで配達の依頼を受けておくか? それで来週王都に行けばええじゃろ」


 そうするか。

 まあ、足も痛いし、今週はゆっくり過ごそう。


お読み頂き、ありがとうございます。

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