第074話 土曜の夜は楽しい
マグマ亭に着いたので店に入ると、まだそこまでのお客さんはいなかったので3人でぐつぐつ定食を食べる。
「美味いの」
「ですよね」
「この辛さが良いですよね」
辛いもの好きにはたまらない。
俺達は2日連続となるぐつぐつを堪能すると、別荘に戻り、順番に風呂に入ることにした。
最初にサクヤ様とジュリアさんが入り、次に俺が風呂場に向かったのだが、ちょうど夕日が沈む時であり、ちょっと感動的だ。
「すごいなー……」
地平線に沈んでいく太陽が幻想的で美しい。
しかも、あれは地球の太陽ではない。
世界広しと言えど、この光景を見られるのはあっちの世界で俺達くらいだろう。
湯船に浸かりながら外を眺めていくと、どんどんと暗くなっていった。
そして、十分に身体を温めると、風呂から上がり、リビングに戻る。
すると、サクヤ様とジュリアさんがブリリアントカットしたルージュ石を飾っているところだった。
「おー、なんか綺麗だね」
温かい灯りとマッチしている。
「ですよね。今度、アロマキャンドルでも持ってきます」
俺の人生で一度も交わることのなかったものだ。
「いいねー」
俺達はソファーに腰かけると、読書タイムに入った。
俺とジュリアさんは隣に腰かけ、ラノベを読みながら感想を言い合い、サクヤ様は対面のソファーに寝転びながら漫画を読んでいる。
「ジュリアさん、お酒でも飲む?」
「あ、そうですね。せっかくですし、1缶だけいただきます」
「サクえもーん」
もうクーラーボックスは家に置いてきている。
「何味が良いのじゃ? 今はレモンとぶどうと桃があるの」
「俺はレモンで」
「私はぶどうでお願いします」
「ほいほい……」
サクヤ様が頷くと、ローテーブルにレモンとぶどうの酎ハイとハイボールが現れた。
「あざます」
「ありがとうございます」
俺達はそれぞの酒を手に取ると、乾杯をし、一口飲む。
「美味いのう……ずっと禁酒しておったが、良かったわい」
良い人が見つかるまで禁酒って言ってたもんね。
「私も美味しいです……あ、ハルトさん、明日はサラさんのところに行くんですよね?」
ジュリアさんが聞いてくる。
「そうだね。ただ、家のこともしないといけないし、午前中だけかな?」
「それもそうですね。私も買い物とか行かないといけません」
こればっかりはねー。
「やること終わったらゲームをしに来てもいいからね」
「はい。多分、夜に行くと思います。それで来週なんですが……」
来週か。
「また来る?」
「いえ……あの、ハルトさんもですけど、組合の健診がありますよね?」
あ、そうだった。
「あれからもう1ヶ月経つのか」
あの時はこうやってジュリアさんとほぼ一緒にいるなんて想像がつかなかったな。
「早いですよね。どうします? せっかくですし、一緒に行きませんか?」
「そうだね。迎えに行くから土曜に行こうよ」
「はい。お願いします」
となると、日曜はこっちか?
いや、待てよ。
最近、ずっとこっちにいる気がする……
「ジュリアさんが良かったら日曜にどこかに出かけない?」
「こっちではなくて、あっちですか?」
「うん。この前の植物園も楽しかったし、またどうかなと思って」
サクヤ様もちゃんとデートはしろって言ってた。
「良いですね。どこか行きたいところはありますか?」
どうだろ……
「お城でも行く?」
「良いと思います。地味に遠足以来です」
俺もかな?
「おぬしらってことごとく真面目なところに行くのう……」
サクヤ様が呆れながらハイボールを飲む。
「良いじゃないですか。あとはゲームかアニメです」
「それも良いですよね」
まあね。
「ふーん……まあ、好きにせい。我はカラオケの方がええと思うがな」
「サクヤ様、音痴じゃないですか」
「おぬしより点数は良かったがな」
サクヤ様が女児アニメのオープニングを歌いたいと言ったから一緒に行った。
なお、どっちも70点台だった。
「ジュリアさんは上手?」
「いえ、私も歌はそんなに得意じゃないです。カラオケも友達と何回か行った程度ですし」
「そうなんだ……意外」
でも、謙遜もありえるな。
「カラオケは2年くらい前に行ったきりですしね……そういえば、空気を読んで流行りの歌だったり、そういうのを歌った記憶がありますね」
あー、わかる。
「俺、高校の時に友達をぽかんとさせたことがあるよ」
メジャーじゃないアニソンはそうなる。
まあ、俺は気にしないけど。
「そうなりますよね」
「何でも歌っていいよ。俺は多少わかるし、サクヤ様に至っては女児アニメのやつしか歌わないしね」
「そうじゃな。好きなやつを歌うと良いぞ。引く奴もおらんし、ぽかんもない。あ、アニメ付きがなお良いぞ」
アニソンの良いところはジェネレーションギャップがないこと。
普通の流行りの歌を歌うと、もろに世代が出るが、アニソンの場合はあまり出ない。
「あー、なんか良いですね。行きたくなりました」
「それも行こうよ。カラオケなら平日でも行けるし、行きたい時に行けるよ」
「確かにそうですね」
やりたいことはいっぱいある。
こっちの世界でもあっちの世界でも……
それが誰のおかげかはもう十分にわかっているし、俺の中で答えは出ていることもわかっていた。
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