第072話 採掘屋
俺達は一度、別荘に戻って着替えると、転移で家に戻る。
すると、ノルン様とタマヒメ様が大乱闘なゲームをしていた。
「あ、帰ってきたわよ……ノルン? P〇サンダー!?」
テレビから目を切ったヨッ〇ーがぶっ飛ばされた。
「昼食に何か作ろうと思いますけど、食べたいものとかありますか?」
「何でもいいです」
ノルン様がこちらを見ずに早口で答える。
ホント、ゲームをしている時はガチだな。
「私も何でもいい……」
タマヒメ様がぷいっとテレビ画面を見た。
「こやつ、まだ人見知りしておる……」
「タマヒメ様は卵が好きですよ」
あー、そういえば、天津飯を頼んでたわ。
「だったらオムライスでも作ろうか」
定番の卵料理といえばそれだろう。
俺でも作れる。
「良いと思います」
ジュリアさんが頷く。
「じゃあ、行こうか」
「はい。では、ちょっと出てきますね」
「プリン、買ってくれ」
「私はコーラ」
「あ、だんご……」
タマヒメ様だけ目を落とし、遠慮がちに言う。
その隙を逃さないノルン様はまたもやP〇サンダーでヨッ〇ーをぶっ飛ばした。
多分、ゲームで友達を失くすタイプの人だ。
「わかりました。ちょっと待っててくださいね」
俺達は部屋を出ると、車に乗り込み、近くのスーパーに向かう。
「タマヒメ様って人見知りなの?」
「あまり表に出られない方ですので。すぐに大丈夫になると思いますよ」
中華料理屋で会った時にまったく目を合わせてくれないなとは思っていたが、人見知りか。
てっきり、俺が岩見の人間だからだと思っていた。
ちょっとほっとし、車を運転していくと、スーパーに到着したのでまずは要望があったプリンとコーラと3色団子をかごに入れた。
「卵はあります?」
ジュリアさんが聞いてくる。
「あるね。ご飯も冷凍したやつがある」
「では、あとは鶏肉ですかね?」
シンプルなやつでいいだろう。
「だね。あ、ケチャップを切らしていたからそれも買おう」
「はい。こっちですね」
俺達は他にもサラダなんかもかごに入れ、レジに行くと、会計を済ませ、早々に帰宅した。
そして、いまだに格闘ゲームをするノルン様とタマヒメ様、それを眺めているサクヤ様を尻目に2人で料理を作っていく。
とはいえ、狭いキッチンなので片方が作業している間は片方は見ているだけだ。
「ジュリアさん、上手だね」
鶏もも肉のブロックを買ったのだが、ジュリアさんが細かく切り分けていた。
「そうですか? まあ、慣れですかね? 基本的には自炊していますし、昔からやってましたから」
「すごいねー」
その後もジュリアさんはチキンライスを作り、載せる卵を焼いていく。
そして、最後にはチキンライスを包み、お店とかで見たことがある綺麗なオムライスを作った。
「上手だねー」
「ありがとうございます」
「ケチャップで名前書いてあげようよ」
「そうですね」
ジュリアさんは各オムライスにひらがなで名前を書いていく。
タマヒメ様だけは猫みたいだった。
【たま】って……
「できましたよー」
テーブルにオムライスとサラダを持っていくと、さすがにノルン様とタマヒメ様もゲームをやめ、昼食となった。
「綺麗なオムライスじゃのう」
「上手ね」
「ハルトさんが作ったんですか?」
ノルン様が聞いてくる。
「ジュリアさんと作りました」
「いや、おぬし、材料を冷蔵庫から取りだして、ジュリアに渡しておっただけじゃろ」
だって、ジュリアさんの手際が良いんだもん。
「2人で作りましたよ。一緒に料理をするのも楽しいです」
ジュリアさんは前世でどれだけの徳を積んだんだろうね。
「ふーん、まあええか。食べるかの」
俺達はオムライスを食べていった。
「午後からはどうします? 午前中の続きでもうちょっと進んでみます?」
ジュリアさんが聞いてくる。
「そうだね。せっかくだし、行ってみようか。疲れとかは大丈夫?」
「それは大丈夫です」
「じゃあ、行こうか」
俺達は昼食を食べ終え、少し休むと、別荘に戻り、着替えた。
そして、午前中で進んだところに転移し、再び、進みだす。
すると、分かれ道が見えてきた。
まっすぐ進む道と右の方に進む道だ。
「看板があるのう」
俺達は分かれ道まで行くと、看板を見る。
「【この先、行き止まり】……まあ、そんな気はしますね」
ジュリアさんが言うように右の道は岩山と岩山の裂け目のような道であり、どこかに続いているようには見えない。
「どうする? 別に転移があるし、どっちでもいいぞ」
「せっかくなんで行ってみませんか? ゲームだと宝箱があります」
「絶対にないと思うが、行ってみるかの」
俺達は先程とは違い、登り道ではなさそうなので右の道に行ってみる。
道幅が先程までの道より狭く、3メートル程度しかない。
しかも、両壁はかなり高いため、空は見えているのだが、少し薄暗かった。
「魔力を感じますね。多分、ルージュ石でしょう」
「確かに感じるの」
ぜんぜーん、感じない。
「また岩山の中ですかね?」
「かもしれんのう」
俺達がそのまま進んでいくと数十メートルくらいで行き止まりになった。
しかし、足元にはキラキラと光る結晶が落ちている。
「採掘跡って感じですかね?」
ジュリアさんが落ちているルージュ石らしき欠片を拾いながら聞いてくる。
「多分、そうじゃない? 岩の削れ方が不自然だし」
自然に削れたのなら丸みを帯びるはずだ。
しかし、岩山は立体的に尖って削れているし、多分、ハンマーかつるはしで砕いたのだろう。
「まだ魔力は感じますね」
「そうなの?」
「はい。多分、採取して満足したんでしょうけど、奥にまだ魔力を感じます」
まあ、普通は手前で採取したら奥は探さないわな。
「じゃあ、やってみるよ」
岩肌に手を掲げると、ジュリアさんとサクヤ様が下がったので魔法を使う。
すると、午前中のように岩が崩れ、中から真っ赤な結晶が姿を現した。
「さっきよりも大きいかも」
「頑張れ、ハルト! 売ってもいいし、飾っても良いと思うぞ」
「夕日に映えそうですよね」
確かに。
頑張るか。
俺は午後からも型抜き作業をすることになった。
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