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第070話 休日だもん


 住宅区の町を歩き、駅とは逆の方に向かう。


「そういえば、体調の方はどう? お酒は残ってる?」


 ジュリアさんに確認する。


「大丈夫です。朝も普通でしたし、体調はバッチシです」


 やはりお酒に弱いということはなさそうだな。


「一応、確認ですけど、サクヤ様も大丈夫です?」

「私は強いから問題ないな。そもそも2杯しか飲んでいないしね」


 ………………。


「問題ないなら良かったです。今日も頑張りましょう」

「そうだな。お前達は今日も泊まるのか?」

「そうするつもりですね」


 昨日の夜にそういう話をした。


「せっかくですしね。サクヤヒメ様もぐつぐつ定食を食べませんか?」

「それは良いな。私もガッツリ食べたい」


 うーん……


「サクヤ様、普通にしゃべってもいいですよ?」

「普通にしゃべってるでしょ。これが普通」


 根に持ってらっしゃる……


「申し訳ございません」

「怒ってないよ? のじゃロリババア扱いされたことくらいで悠久の時を生きる神である私が怒るわけない」


 ババアは言ってないんだが。


「すみませんって。ジュリアさんが困惑しているじゃないですか」


 してなさそうだけど……


「そうか? まあ良いわ。ハンマーは持ってきたか?」


 もちろん、ルージュ石の採取用だろう。


「いえ……でも、小さい衝撃魔法を作ってきました。それでいけると思います」

「相変わらず、器用な奴じゃな。では、それでいくかの」


 俺達が話をしながら歩いていると、住宅区の奥にある門に到着した。

 門と言っても木柵とロープがあるだけだが。


「全然、守れてなさそうに見えますけど、結界があるからですかね?」

「だと思うぞ。看板があるな」


 サクヤ様が言うようにロープの横の方に立て看板がある。


「えーっと、【この先、危険】と書いてありますね。通って良いんですよね?」


 ジュリアさんが聞いてくる。


「仕事だしね」


 しかし、門番というか見張りもいないのか。


「まあ、行ってみようかの。2人共、この先は魔物も出るし、気を付けよ」

「わかってます。ジュリアさん、俺が先行するけど、俺は探知が得意じゃないから何かあったら教えて」


 ジュリアさんは得意なのだ。


「任せてください」

「サクヤ様もお願いします」

「ん。わかった」


 サクヤ様が頷いたのでロープを跨ぎ、街道を歩いていく。

 街道は幅が5メートル程度なのだが、右側が山になっており、かなり高い。

 そして、左側は崖になっており、こちらもかなり高かった。


「おー……高いねー」

「ですねー。眺めは良いんですけど、転落防止用の柵もないのがびっくりです」


 こういうところだったら日本は絶対に柵を設置するからな。


「気を付けてね」

「はい。それと微弱ですが、魔力を感じます」

「本当に微弱だがのう」


 2人にそう言われたのでその場で立ち止まる。

 どこかなと思い、辺りを見渡していると、岩の影からひょこっと何かが現れた。


「あ、可愛い」

「可愛いけど……恐竜?」


 岩陰から現れたのは数十センチくらいしかない魔物だったが、姿は肉食の恐竜に見えた。

 二足歩行であり、小さいティラノサウルスのようだ。


「ベビードラゴンですかね?」

「そのネーミングがしっくりくるし、そうじゃないかな?」


 ベビードラゴンはこちらをじーっと見ているが、動かない。


「可愛いなー」


 ジュリアさんはニコニコしながら数歩前に出て、カメラを構える。

 その瞬間、ベビードラゴンが動き出し、素早いスピードでジュリアさんに飛びかかった。


「――ジュリア……さん?」


 叫んだ俺の目には剣を振り下ろしたジュリアさんと地面に血を流して横たわるベビードラゴンが見えている。


「可愛くはなかったですね。やっぱり魔物です」

「あ、うん」


 いつ剣を抜いたんだろ?

 速すぎてまったく見えなかった。


「魔石を採取しますね」


 ジュリアさんがそう言って、しゃがみ込んでナイフを取り出す。


「あ、大丈夫。俺がやる。ちょっと見てて」


 ジュリアさんの横にしゃがむと、死んでいるベビードラゴンに手を掲げた。


「どうするんです?」

「俺が最初に倒した魔物はゴブリンでね。ちょっとグロかったし、手が汚れるからこの魔法を開発したんだよ」


 そう言って、手に魔力を込める。

 すると、ベビードラゴンの体内から魔石が飛び出し、俺の手の中に収まった。


「ん? 何をしました?」


 ジュリアさんが首を傾げる。


「魔石を吸い寄せた感じ? 家でずっと練習してたんだよ」


 持ち帰った魔石でひたすらやってた。

 何故、ひと月近くもかかったかというと、魔石を吸い寄せるだけならすぐに習得できたのだが、探知が苦手なため魔石を探すのが難しかったのだ。


「す、すごいですね……」


 そこまでの魔法じゃないんだけどな……

 ただの念動力だ。


「こやつは昔からこうやって色々な魔法を作っておったんじゃ」

「ハルトさんの魔法の腕は本当にすごいと思います。魔力もですが、コントロールも素晴らしいです」


 いや、本当にたいした魔法では……


「そう? まあ、こうやって魔石を採取できるから任せておいて」

「良い魔法ですね。では、お願いします」


 俺達は立ち上がると、さらに歩いていく。


「人はいないね」

「やはりあまり通らないんじゃないでしょうか? この道はどこに繋がっているんです?」

「えーっと、サラさんにもらったパンフレットによるとそろそろなんだけど……あ、あそこ」


 指差した先にはそのまま進む道と上に登る道に分かれていた。


「山を登る道ですね」

「登る方が繁華街に繋がっている道でまっすぐが住居区の別の門に繋がっているみたい」

「なるほど。昔は歩いていたと言っていましたし、その道でしょうね」

「普通はトロッコを使うしね」


 分岐点までやってくると、看板があったので見てみる。


「確かに【この先、繁華街】と書いてありますね」


 山の中に【この先、繁華街】と書いてある看板がシュールだ。

 絶対に嘘だと思うもん。


「どっちに行くんじゃ?」


 サクヤ様が聞いてくる。


「ジュリアさん、どっちがいい?」

「うーん……せーので指差しましょうか。せーの」


 ジュリアさんがそう言うと、全員が一斉に繁華街への道ではなく、まっすぐを指差した。


「山登りはちょっとね」

「ちょっと危ないですしね」

「疲れるしな」


 うんうん。

 だって、住居区から繁華街ってかなりの高低差があったもん。

 嫌。

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