第068話 アイス、美味しい……
俺とジュリアさんはお酒を飲むペースを落とし、本を読んでいた。
すると、目の前のソファーにサクヤ様が現れる。
「待たせたの」
「いえいえ。何か飲まれます?」
「ハイボールをくれ」
ジュリアさんが持ってきたラノベを置くと、ソファー後ろにあるクーラーボックスからハイボールを取る。
「どうぞ」
「すまんのう」
サクヤ様はハイボールを渡すと、プルタブを開け、一口飲んだ。
コンプライアンスに引っかかりそうな絵面だが、ウチはコンプライアンスかかってこい教なので問題ない。
「減ってましたけど、向こうでも飲んでたんですか?」
「ああ。なんかタマちゃんに絡まれてのう」
「タマヒメ様ですか?」
会う神様ってタマヒメ様のことだったのか。
「なんでまた?」
「あー……ようわからんな。多分、挨拶じゃないか?」
ジュリアさんと結婚するからかな?
「タマヒメ様は何か言っておられました?」
ジュリアさんがサクヤ様に聞く。
「うじうじ言っておったが、特にはないな。酒に誘われたから初めて奴と飲んだが、ガバガバと飲んで早々に潰れおった。何がしたかったんだか……」
「え? タマヒメ様がですか? すみません、介抱に行かないと……」
「あー、大丈夫じゃ。ノルンがおる」
ノルン様がいるなら大丈夫……大丈夫か?
あの人、多分ゲームしているんだろうけど、ゲームをしている時はテレビ画面から目を逸らさないぞ。
「大丈夫です?」
ちょっと心配。
「問題ない。そもそもあやつも神じゃ。あ、昼に奢ってくれてありがとうって言っておったぞ」
「それは別にいいですけど……浅井の神様が急に来て、びっくりしましたよ。しかも、キョドってましたし」
キョドってたけど、ごま団子はガン見していて可愛かった。
「ああいう奴なんじゃ、まあ、ほっとけばいいぞ」
ほっとくって……
ジュリアさんのところの神様なんですけど……
「まあ、敵意は感じませんでしたし、結婚に反対している様子でもなかったのでいいですけど」
「そうそう。それよりもジュリア、酒はどうじゃ?」
サクヤ様がお酒を飲んでいるジュリアさんに聞く。
「美味しいですし、気分がふわふわして心地良いですね」
「そうか、そうか。まったく飲めないわけじゃなさそうだし、節度を持って飲むといいぞ。ただし、会社の飲みとかは気を付けろ。飲めるとわかったらガンガン飲ませてくる奴もおるからの」
いるねー。
東京にいた時にそういう先輩がいた。
「大丈夫です。多分、会社では最初の1杯だけであとはウーロン茶を飲むと思いますので」
「うむ。それで良い。ハルト、明日は冒険者ギルドか?」
サクヤ様が今度は俺に聞いてくる。
「そうですね。荷物を届けて、仕事をしようかと思っています。あ、それと実は夕食時に偶然、サラさんに会ったのでご一緒したんですが、明後日、神殿に行くことになりました」
「うむ。どうせ荷物を届けに行かないといけないし、ちょうどいいと思うぞ」
「はい、そのつもりです」
「うんうん。では、明日明後日はそんな感じじゃな。まあ、ゆっくりせい。我は風呂に行ってくる」
サクヤ様はそう言って、着替えとハイボールを持って、階段を降りていった。
「入りながら飲むのか」
贅沢なことを……
「大丈夫ですかね?」
「大丈夫でしょ。ジュリアさんはまだ飲む?」
「いえ、今日はこれで終わりにします。明日はお仕事ですし、翌日にどれくらい残るかわかりませんから」
それもそうだな。
俺もこの辺でやめておこう。
「あ、お茶も買ってきてあるから飲んでね」
「はい。いただきます」
俺達はその後も穏やかな気持ちで本を読み続け、風呂から上がったサクヤ様の髪を乾かし、就寝した。
翌朝も朝から風呂に入ると、ジュリアさんが用意してくれた朝食を食べる。
「和食も良いね」
今日は白米と味噌汁と鮭の切り身だ。
「そうじゃの」
「ありがとうございます。ハルトさんの家に寄ったんですけど、タマヒメ様とノルン様が朝からゲームをしててびっくりしましたよ」
タマヒメ様がゲーム?
「ノルン様に付き合わされてるんだろうね。朝から大変だ」
「いや、あれはそういう感じではなかったな。夜からじゃろ」
タマヒメ様が復活してからずっと付き合わせてたのか。
ノルン様、ゲームをしていると人が変わるからな。
「楽しんで頂ければと思います」
「どっちがじゃ? おぬし、ノルン派じゃろ」
いや、サクヤ様派ですけど?
なんならサクヤ様派のリーダーです。
「どっちもですよ。さて、御馳走様でした。ジュリアさん、洗い物はしておくから準備してよ」
「はい。ありがとうございます」
ジュリアさんが礼を言い、寝室に向かったのでジュリアさんの部屋に転移をし、洗い物をする。
そして、洗い物を終えると、一度自宅に戻ったのだが、本当にタマヒメ様とノルン様がゲームをしていた。
「大丈夫です?」
「大丈夫……ただ、借金から抜け出せないだけ……」
タマヒメ社長は真っ赤だ。
というか、すでに30年目……
「が、頑張ってください。冷凍庫にアイスありますんで好きに食べてもらって良いですから」
「ありがと……あんたも気を付けなさいよ…………ノルン? そのカードで何をする気?」
可哀想に……
さすがは魔王をレベル99でフルボッコにするゲーマーだ。
「行くぞ、ハルト……」
「はい……」
俺達は転移をし、異世界の別荘に戻ると、準備をし、冒険者ギルドに向かった。
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