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第066話 顔が赤いのはお酒のせい


 別荘に戻ると、ジュリアさんに先に風呂に入ってもらう。

 そして、ジュリアさんが風呂から上がったので俺も続いて入ることにした。


「あー……」


 やはり外気と温泉の温もりが心地良い。


「暗いなー……」


 すでに8時近くになっており、灯りはついているものの、辺りは真っ暗だ。

 ふと、その暗闇に向かって、手を掲げた。


「ファイヤー」


 手から火の玉が出て、暗闇を進んでいく。

 一瞬だけ明るくなったが、すぐに火の玉は闇に飲まれるように消えた。


「魔法も普通に使えるんだよなー」


 すごい世界だ。


 俺はその後も何度か火魔法を使うと、満足し、風呂から上がる。

 そして、階段を上がり、ジュリアさんが座っているソファーに腰かけた。


「魔法を使ってました?」


 隣にいるジュリアさんが笑いながら聞いてくる。


「うん。わかったの?」

「下から魔力を感じましたし、窓から光が見えてましたよ」


 そっか。

 ジュリアさんは魔力探知に長けているし、わかるわな。


「ちょっと魔法が使えるのが嬉しくてね」

「わかります。だから明後日のサラさんの話も楽しみですが、明日のお仕事も楽しみです」


 ホントにね。


「頑張ろう。そして、楽しもっか」

「はい」

「お酒、飲む?」

「どれがいいですかね?」


 俺達はソファーの後ろに置いてあるクーラーボックスを覗く。


「サクヤ様のハイボール以外はアルコール度数が低いものだし、好きなやつでいいよ」

「じゃあ、この桃のやつにします」

「じゃあ、俺はぶどうのやつにする」


 俺達はそれぞれほろっと酔える缶酎ハイを取ると、プルタブを開ける。


「かんぱーい」

「かんぱーい」


 缶を合わせると、一口飲む。

 うん、ぶどうだ。


「どう?」

「美味しいですね。というか、桃のジュースです」


 酎ハイはね。


「ビールは苦いし、ハイボールなんかも癖があると思うよ。その点、酎ハイはほぼジュースだから飲みやすいと思う」

「そうですね。なんかいくらでも飲める気がします」


 俺もそう思う。


「それが危ないからね」

「はい」


 俺達はその後も話をしながら飲んでいくが、早々に1缶目を空けたのでクーラーボックスを覗く。


「あれ?」

「どうしました?」

「いや……なんか減ってる」


 そう答えると、ジュリアさんもクーラーボックスを覗いた。


「ホントですね。サクヤ様も飲んでいるんじゃないですか?」

「そうかも……」


 他にいないしね。


「まあいっか」


 今度はレモンの酎ハイを取ると、ジュリアさんもはちみつレモンの酎ハイを取った。


「かんぱーい」

「かんぱーい」


 俺達はまたもや乾杯をし、お酒を飲む。


「顔が赤くなるわけでもないし、弱いわけではなさそうだね」

「そうかもしれませんね。でも、ぽかぽかしますし、なんだか良い気分になってきました」


 ジュリアさんはほろ酔いなのだろうが、いつも以上にニコニコ笑っているし、ぽわぽわ度が上がっている。

 うん、可愛い。


「このくらいのペースで飲むと良いよ。そういえば、今日、タマヒメ様に会ったよ」

「タマヒメ様にですか? あの方はあまり外には出ないんですが……」


 そんな感じはした。


「出先の帰りに外食したんだけど、そこで会った」

「へー……何か話をしたんですか?」


 気になるのかな?


「特には……実はノルン様と一緒にいたんだよ」

「ノルン様? あー、じゃあ、異世界のことも知ってますね」

「そう言ってたね。でも、ノータッチっぽい。ウチと浅井の関係があっても俺達の結婚も反対はしないようだし」

「タマヒメ様はウチの一族に干渉してこないんですよ。そういうのをやめたらしいです」


 タマヒメ様にはタマヒメ様の考えがあるんだろうな。


「タマヒメ様ってどういう人?」

「優しい方ですね。一族を見守ってくださりますし、子供の頃は遊んでくださいました」


 それはウチのサクヤ様もそう。

 まあ、今もだけど。


「良い神様だね」

「ええ……でも、実は今回の縁談では父とちょっと揉めてました。やはり岩見に思うところがあるんだと思います」


 いや、それは……


「今回の縁談はさ、浅井さん……キヨシさんから申し込んできたんだよ」

「はい。父からと聞いています。揉めていたのはその時ですね。最終的には干渉したくないので好きにしろってことになったようですけど」


 タマヒメ様の気持ちがわかる。


「サクヤ様に聞いたんだけどさ、一族が消滅もしくは、魔法使いがいなくなれば一族に根付いている神様は消滅するんだってさ」

「消滅……タマヒメ様やサクヤヒメ様が消えるってことですか?」


 消える、ね……


「ここははっきり言うね。死ぬってことだと思う」

「そうですか……」

「ウチは俺しかいないから俺が子を残さなければサクヤ様が消滅する。浅井は外部の血を入れすぎて、魔法使いの血が薄くなっているからタマヒメ様が危ない。今回の縁談にはそういう裏があるみたいだね」


 じゃなきゃ、あの浅井がウチに縁談なんて申し込んでこない。

 ましてや、本家のジュリアさんを嫁には出さない。


「父はタマヒメ様の消滅を避けたかったんでしょうね」

「サクヤ様はそう言ってたね」

「お爺ちゃん達が反対しなかった理由がわかりました」


 岩見のことが嫌いであろう祖父母世代も反対しなかったのはタマヒメ様が大事だからか。


「タマヒメ様は愛されてるね」

「もちろんです。でも、そういうことだったんですね。全然知りませんでした」

「それは俺もそう。実はこの前聞いたばかり」


 ちょっとびっくりした。


「タマヒメ様もですが、サクヤ様も消滅させたくはありませんね」

「そうだね」

「頑張りましょう、って言うべきなんですかね?」


 何を?


「いや、普通で良いんじゃないかな? 今まで通りだよ」

「そうですね。それで良いですもんね」


 そう、それで良い。

 サクヤ様やタマヒメ様のために何かをする必要はない。

 ただ、このまま進んでいけば良いのだから。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
サクヤ様もタマちゃんも自分の存在の継続の為に作れ!ってガツガツこないのがほんと見守ってくれてるって感じですね。
この2人の場合、「頑張りましょう」はそのまま「地に満ちよ」ですよねぇ…w
さっさと子供をもうけて不慮の事故回避して! 小吉先生の出番待ってますよ!!
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