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第064話 アサイノタマヒメ


「あのー、ノルン様?」

「ここにいるのは偶然です。昼食でも食べながら話でもしようと思っていたら特徴的な魔力を持つ者が現れたので尾行したわけです」


 び、尾行?

 こっちは車ですけど?

 この人、免許持ってんの?


「そうですか……なんでタマヒメ様と?」

「この地域を練り歩いていますからね。挨拶は大事です。ほら、以前に他の神と会うと言ったでしょう? この地域の神はサクヤかタマちゃんです」


 以前、昼食を誘った時に知り合いの神に会うとおっしゃっていた。

 タマヒメ様だったか。


「色々と交流があるんですね」

「まあ、縄張りに入っているようなものですからね。その辺は大切にしないといけません」


 ノルン様はできた神様だなー。

 さすがは一神教の世界の唯一神だ。


「神様もそういうのがあるんですね。あ、ここは出しますよ」

「あなたはとても良い子ですね。ね? そう思いますよね?」


 ノルン様がタマヒメ様に振る。


「え? う、うん。そうね……」


 タマヒメ様は先程からこちらをチラチラと見ているのだが、まったく目が合わない。

 俺がタマヒメ様の方を見ると、ふいっと目を逸らすのだ。


「感じが悪いですよ? 奢ってくれるって言ってるのに」

「そ、そうね……あ、ありがとう」


 タマヒメ様は礼を言うが、それでもまったく目を合わせない。


「どうしたんです?」

「まあ、あなたの家と微妙な関係だからでしょ」


 まあ……

 でも、ジュリアさんのことがあるしなー……


「あ、あのー……」

「ご、ごめんね。岩見の人間と話をするのって何百年振りだから……」


 それほどまでに交流がなく、争っていたのが岩見と浅井だ。


「あー、無理にしゃべらなくていいですよ。さっさと食べて、会社に戻りますんで」


 昼休みだからジュリアさんとメールすると思うけど。


「岩見の子に気を遣われてますよ?」

「みたいね……えーっと、ジュリアと見合いをしたのよね?」

「そうですね」

「そう……」


 えーっと……


「反対です?」

「あ、いや、そういうことじゃないわよ。私はあんたのところほど自分の子に干渉しないし、好きにやればいいと思う。ただ、ちょっとびっくりしただけ。まさかウチの子が岩見に嫁ぐ日が来るなんて思ってもみなかったから」


 そっちから打診してきたんだけどなー……


「昔のことは知らないですけど、そんなに仲が悪かったんですか? ウチの爺ちゃん達はそっちのことをボロクソに言ってましたけど」

「そうね……そのぐらいの世代はそんなものかも。戦前はもっとひどかったけど、戦後くらいから争いはなくなった感じかな? それでもずっと仲が悪かったけど、ここ10年、20年は話題にも出なくなった」


 ウチもほとんど出なかったなー。

 浅井さんがニュースに出てきたら暗黙の了解でチャンネルを変えるくらいだ。


「タマヒメ様はどう思っているんですか?」

「うーん、微妙? 私は浅井の神だから浅井の敵は私の敵なわけ。それはサクヤもでしょう。でも、なんかお互いにそういう敵対心が自然消滅してそうじゃない?」


 恋愛みたいだが、まあ、わかる。


「時代じゃないんですかねー……少なくとも、ウチはリアルに消滅しそうですもん」

「あー、あんた1人か……なんであんたの親とかその上は子供をいっぱい作らなかったのかしら?」


 経済的な理由もあっただろうが、ウチはもう魔法使いにも岩見の家にも執着していないのだ。

 まあ、サクヤ様に消えてもらっては困るから考えをちょっと改めたけど。


「どうですかね? 俺も一人っ子ですし、父親もそうです」

「そう……」


 タマヒメ様はそうつぶやいて俯いた。

 すると、店員さんが料理を持ってきてくれたので食べだす。


「ノルン様は色々食べているみたいですけど、タマヒメ様も食べるんです?」

「甘いものを食べに行くくらいかしら? そもそも神は何も食べなくてもいいからね。昔は食べるものが少なかったし、子供達に譲るわよ……ハァ、良い時代になったものだわ。もう餓える人も進んで山に行く人もいないから」


 重い……

 でも、昔はそうだったんだよな……


「良い時代になったのなら良かったではありませんか。それに争いがなくなるのも良いことです」


 いやー、ノルン様は本当に素晴らしい神様だなー。


「そうね……ジュリアと結婚するの?」


 頷いたタマヒメ様が聞いてくる。


「ジュリアさんがどう思っているかはわかりませんが、俺はそのつもりでいます」

「ジュリアもそのつもりでしょうね。なんか異世界に行ってるのよね?」


 ノルン様と一緒にいるということは知ってるわな。


「そうですね。こちらのノルン様に招いていただきましたので」

「楽しい?」

「ええ。楽しいです。ジュリアさんもそう言っていますし、実際、楽しそうです。俺達は国外はもちろんですが、県外にすら移動を制限されています。そんな中、テレビでも見たことがないような世界を見られるのは非常に楽しいです」


 週末が待ち遠しいくらいに。


「そう……私はあなた達の結婚に反対しないし、むしろ、祝福もする。岩見なんかどうでもいいけど、私の子であるジュリアが幸せならそれでいいから」


 スタンス的にはサクヤ様とそう変わらないように感じる。

 ただ、能動的なサクヤ様とは違い、タマヒメ様はあまりそうではないように見える。


「タマヒメ様も異世界に行ってみます?」

「嫌。怖いもん」


 ほらね。


「そうですか。あ、ごま団子食べてくださいよ。好きでしょ」

「そうね……お礼に唐揚げをあげるわ。多い……」


 でしょうね。


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― 新着の感想 ―
浅井の人はバリバリ政界に打って出て陽キャっぽいのにタマちゃんは若干陰キャっぽい…
遂に浅井家の御祭神と岩見の当主が顔合わせかぁ〜・・・ お互いの考えが聞けて良かったのかな? 近い将来、ハルトとジュリアの子を笑顔で見つめる、サクヤ様とタマヒメ様の絵が見えてしまう。 うん、きっと良い家…
僕の胡麻団子をお食べー
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