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第006話 人生の目的


 俺達はその後も森の中を探索していったが、ゴブリンしか出ず、なんか飽きてきた。

 それはサクヤ様も同じようで俺がゴブリンから魔石を採取している中、あやとりをして遊んでいる。


「帰ります? 腹減ってきましたよ」


 時刻は11時を過ぎたところである。


「そうじゃの。魔石を売って、昼食にしようぞ。魔石は何個だ?」

「50個ちょいですかね?」


 サクヤ様にもらったビニール袋の中を見ながら答える。


「狩ったのう……」


 ゴブリンを倒したことよりもそれだけの数の腹を掻っ捌いたことを褒めてほしい。


「頑張りました」

「偉いのう。ほれ」


 サクヤ様がウェットティッシュを渡してくれる。


「どうでもいいですけど、どこに入れてるんです?」


 さっきから水をくれたりするが、サクヤ様はカバンを持っていない。


「転移が使えるのじゃぞ。家から取ってくればいいだけじゃ」


 なるほど……


「それ、地味に便利ですね。荷物を持っていかないでいいわけですし」

「そうじゃの」


 ………………。


「あの、一気に町に帰れたりします?」

「できるぞ」


 さすがは神様……


「毎朝、会社まで送ってくださいよー」


 そうしたらもう少し寝れる。


「あっちの世界では魔法が使えんじゃろ。バレたらシャレにならんぞ」


 それもそうか……

 監視カメラとかに映ったらマズい。


「あっちは車で頑張ります。すみませんが、町まで送ってもらえます?」

「任せるがよい」


 サクヤ様がそう言うと、一瞬で視界が変わり、今朝と同じ建物と建物の間の小道に飛んできた。


「ここなんですね……」

「人がおらんところを選んでおる。いくら魔法が普通の世界でも転移はないからな」


 なるほどね。


「ありがとうございます。では、魔法ギルドに行きましょう」

「うむ。ちょっと楽しみじゃの」

「ですね」


 安いかもしれないが、この世界で初めて稼いだお金になるのだ。


「昼はボアのバター焼きでもいいです?」

「うむ。美味かったしのう」


 俺達は昼食の予定を決めると、小道を出て、魔法ギルドに向かう。

 そして、魔法ギルドにやってきたのだが、今朝と同じく、受付にいるホリーさん以外は誰もいなかった。


「こんにちはー」


 挨拶をしながらホリーさんに近づく。


「おや? もう帰ってきたのかい? 夕方かと思ったよ」

「無理しないようにしているんですよ。まだギルドカードはできてなかったりします?」

「いや、できてるよ。ほら」


 ホリーさんがカウンターにカードを置く。

 だが、真っ赤なカードで何も書いていない。

 退場って意味かな?


「これで身分が証明できるんですか?」

「特殊な魔法がかかっているんだよ。ちなみにだけど、冒険者ギルドのカードは青で商人ギルドは緑だよ」


 へー……


「身分証明を求められたらこれを提出すればいいんです?」

「そうだね。失くすんじゃないよ」


 財布に入れとくか。


「わかりました。あ、魔石を買い取ってくれません?」

「いいよ。出しな」


 カウンターの上でビニール袋を逆さにし、魔石を出す。


「多いねー……」

「全部、ゴブリンです。ゴブリンしか出ませんでしたよ」


 ゴブリンの森と名付けよう。


「あそこの森はゴブリンの巣だからね。それにしても半日でこれはすごいよ。あんた、相当な魔法使いだね」

「当たり前じゃ」


 サクヤ様がふふんとドヤ顔になった。

 可愛い。

 これが我が岩見家が誇る守護神だ。


「ふーん……そうなると、こんなところにいるより別のところで稼いだ方が良いと思うよ。ゴブリンの魔石は1個で銅貨5枚になる。それが52個だから金貨2枚と銀貨6枚だね。これでも十分な稼ぎなんだけど、この短時間でこれだけのゴブリンを相手にできるなら他の町の方が稼げるよ」


 やっぱりここって初心者用の町なんだな。

 ノルン様がそうしてくれたんだろう。


「どこに行けばいいんですかね?」

「そりゃここから北にある王都さ」


 王都か……


「どれくらいかかります?」

「徒歩で10日、馬車で5日だね。明日には定期便の馬車が出るよ」


 遠っ!


「わかりました。考えてみます」

「そうしな。あんたはここにいていい魔法使いじゃないよ。ほら、料金だ」


 ホリーさんがカウンターに金貨2枚と銀貨6枚を置く。


「ありがとうございます」


 お金をポケットにしまうと、ギルドを出て、昨日の店に向かった。

 昨日とは違い、昼時なためか他のお客さんも結構いる。


「いらっしゃーい」


 昨日の可愛らしいウェイトレスが笑顔で対応してくれる。


「2人です」

「お好きな席にどうぞー」


 そう言われたので空いていた昨日と同じテーブルについた。


「何にしますー? お客さん、昨日も来たよね? 定食も食べたし、おすすめはボアサンド。ボアのバター焼きをパンで挟んだやつ。シンプルだけど美味しいよ?」


 絶対に美味いやつだ。


「我はそれでよい」

「じゃあ、それを2つ」

「はーい。ちょっと待ってねー」


 ウェイトレスが笑顔で頷き、厨房に向かった。


「どうじゃ? 笑顔が可愛らしいだろ」

「サクヤ様、周りを見てください。ライバルが多すぎて俺には無理です」


 客が男しかいない。


「そんなものは蹴散らせ」

「平和主義者なんで」

「そういうところが彼女ができない理由な気がするな」


 まあ……


「そんなことより、これからどうします? ゴブリンはもういいでしょ」

「ちょっと難易度が低すぎたかもな。あの婆さんも勧めておったし、別の町に行く方が良いと思う」


 ホリーさんね。

 やっぱり神様は一族以外に興味がないんだな。


「俺もそう思います。でも、遠すぎません? 俺、土日か平日の夜にしか来れませんよ?」

「それな。定期便の馬車を使うとしても2日で行方不明になるのは問題じゃろう」


 問題だし、そこからは歩きになってしまう。


「転移で飛べません?」

「行ったことがあるところしか無理じゃ」


 自由に飛べるわけではないのか。


「どうしましょう? 土日と平日の夜を歩くとしてもきついですよ」

「よし、車で行くか」

「車? いけます?」

「街道の舗装はしっかりしておっただろ? あれならおぬしの軽でも通れる。夜中にこっそり行けば車を転移してもバレんし、こっちの旅人や商人も寝ているから問題にはならんじゃろ」


 人間が歩くスピードは時速4キロくらいだ。

 それで10日かかるということは1日8時間歩いたとして、王都まで320キロといったところだろう。

 車なら時速40キロくらいは出せると思うから8時間で着く。

 毎日、夜中にこっそり行けば来週の土日までには着くかもしれない。


「いけそうですね」

「じゃろ? 歩きなど1時間もせずに飽きる。文明の利器で楽をするべきじゃ」


 バイクでもいいが、持ってないからな。


「わかりました。今夜から移動しましょう」

「うむ」


 俺達が今後の方針を決めると、さっきのウェイトレスがボアサンドを持ってきてくれたので食べだす。


「美味いっすねー……」


 ボアの肉汁とバターがパンにぴったりと合う。


「そうじゃの。これは濃厚なのに飽きないすごい食べ物じゃの」


 いやはやまったく。


「サクヤ様の転移は行ったことあるところには飛べるんでしたよね? つまりここのボアのバター焼きもいつでも食べられるようになったわけです」

「うむ。これは定期的に食べたいのう。よし、この世界のグルメを堪能するためにも世界中を回ろうぞ」

「そうしましょう」


 人間に大事なものは衣食住。

 人間の三大欲求は食欲、性欲、睡眠欲。

 このように食はとても大事だ。

 それが充実できるのはすごく良いと思う。

 それに加えて、未知なる土地の冒険ができ、さらには魔法が使い放題である。


 つまらない日常がとんでもなく輝きだしたな……

 素晴らしい誕プレだったと思う。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
魔法で飛ばない所が現代子らしい 生活用の魔法もないし
良い点 しゃいにんぐ
ボアサンド食べたい( ´~`)
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