第059話 お泊まり
今後の話をした後も本を読んでいったが、時刻が11時を回ったところで就寝することにした。
「サクヤ様、本当にそこで寝るんです?」
サクヤ様はソファーの足元に布団を敷いている。
「よい」
サクヤ様が頷き、横になったのでジュリアさんと顔を見合わせた。
「気が引けるけど、本人がこう言っているから……」
「そうですね……」
やっぱり微妙な気持ちになるな。
神様だし、見た目少女なんだもん。
「気なんか引かんでよいわ。そもそもおぬしらと神では考え方も違うわい」
「ですか……では、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「うむ。おぬしらもゆっくり休め。せっかくの休みじゃぞ」
明後日から仕事かー……
俺とジュリアさんは寝室の方に行き、それぞれベッドに入った。
「ジュリアさん、さっきのサクヤ様の話をどう思った?」
「こっちで稼げっていう話ですよね?」
「うん」
それ。
「私は良いなって思いました。日本での私達の稼ぎはまさしくその通りだと思います。もっとシビアなことを言えば子供ができたらまた状況が変わります」
「そうだね」
「それでも生きてはいけますし、楽しくて幸せな家庭を築きたいと思っています」
「うん、頑張る」
お互いに答えは出していないが、多分、ジュリアさんと一緒になる。
というか、完全にその流れになっている。
「それはそれとして、こっちの世界は楽しいです。料理も美味しいですし、今日、ざらっとこの町を見て回りましたが、見たこともないものばかりでした」
「本当にね。すごかった」
「はい。この世界にはこういうのがたくさんあるんでしょう。そういうのを見たいと思います。それにしょうもない穴掘り魔法が役に立った時、ものすごく嬉しかったです」
しょうもなくはないかな。
カーティスさんも魔石に込めるように頼んでたし。
「魔法が使えるのは良いよね」
「はい。だから稼ぐというのは賛成です。いっぱい稼いでいっぱい贅沢をしましょう」
「そうしよっか。じゃあ、まずはギルドだね」
「はい。頑張りましょう」
ジュリアさんが両拳を握った。
可愛い。
「うん。じゃあ、明日ね。おやすみ」
「おやすみなさい」
俺達は休むことにし、就寝した。
◆◇◆
「――ハルトさん、ハルトさん」
名前を呼ばれ、身体を揺すられる感覚で目が覚める。
寝返りを打つと、ちょっと髪が跳ねたジュリアさんが覗き込んでいた。
「おはよー」
「おはようございます。朝ですよ」
「何時ー?」
「8時ですね。私は朝風呂に行きますけど、ハルトさんはどうされます?」
あ、入りたい。
「俺も入るわ。先に入っていいよ」
「ありがとうございます」
ベッドから出て、ジュリアさんと共に寝室を出る。
そして、ソファーの方に向かうと、サクヤ様が掛け布団を蹴飛ばして寝ていた。
「サクヤ様ー、朝ですよー」
サクヤ様の肩を叩く。
「お、おう……もう朝か……涼しくて良いのう」
「よく眠れたのなら良かったです」
俺もよく眠れた。
ウチのせんべい布団とは大違いだったわ。
「サクヤヒメ様、お風呂に行きますけど、どうでしょうか?」
ジュリアさんが誘う。
「おー……そうじゃの。頭を洗っておくれ」
「はい。参りましょう」
ジュリアさんはサクヤ様を連れて、階段を降りていった。
そのままぼけーっと待っていると、30分後くらいにサクヤ様とジュリアさんが戻ってくる。
「ハルト、朝風呂もすごいぞ。入ってこい」
「へー……」
気になる。
「ハルトさん、私はサクヤヒメ様の髪を乾かしたら朝食を作ってきますのでゆっくりと入ってください」
「おー、ありがとー」
良い子だわー。
俺は階段を降り、脱衣所で服を脱ぐと、風呂場に行き、湯船に浸かる。
すると、朝の程よい冷たい風と温泉の温かい湯が絶妙にマッチし、一気に目が覚めた。
「あー……良いな」
すごい良い。
そして、異世界を楽しむための一つのコツがわかった。
明日のことを考えてはいけないということだ。
「よし、考えない!」
そのまま頭を空っぽにしてお風呂と朝の景色を楽しみながらたっぷりと満喫した。
そして、風呂場を出て、服を着ると、2階に上がり、2人の帰りを待つ。
「――お待たせしました」
ジュリアさんとサクヤ様は料理が載ったお盆を持って、転移してきた。
「見ろ、ハルト。目玉焼き一つでもこんなに違うぞ」
ジュリアさんとサクヤ様がテーブルに朝食を並べていく。
メニューはパンとサラダと目玉焼きというシンプルな洋食だったが、目玉焼きがすごく綺麗だ。
綺麗な丸だし、黄身が黄色い。
「確かに違いますね……」
俺が作る目玉焼きは歪だし、黄身の部分は白い。
「ハルトさんの目玉焼きも美味しかったですよ」
まあ、味はそこまで変わらないと思うが……
「食べようぞ。風呂に入ったら腹減ったわい」
「そうですね」
俺達はジュリアさんが作ってくれた朝食を食べる。
普通の朝食なのだが、何故か自分が作ったやつよりも美味しく感じた。
やはり見た目なのだろうか?
「あ、美味しかった」
「うむ」
「お粗末様でした」
全然、粗末じゃない。
まあ、そういう意味じゃないのはわかっている。
「ジュリアさん、洗い物はしておくから準備してよ。俺はすぐだから」
「そうですか? では、お願いします」
「サクヤ様、お願いします」
「うむ」
サクヤ様の転移を使って、ジュリアさんの部屋に飛ぶと、洗い物をする。
そして、洗い物を終えたので別荘に戻り、着替え始めた。
最後に剣を腰に装着させると、寝室から異世界の服に着替え終えたジュリアさんが出てくる。
「お待たせしました」
「ううん。では、サクヤ様、まずは王都にお願いします」
「よし、行くぞ」
俺達は準備を終えたので転移でちょっと懐かしい王都に飛んだ。
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