第054話 すげー
トロッコに戻り、今度は降りていくと、先程スルーした駅に到着した。
「ここが繁華街になります。では、降りましょう」
俺達はトロッコから降りると、先程と同じように階段を昇って、外に出る。
すると、多くの建物が並んでおり、さらには人がかなり多い。
まだ昼すぎだというのにフロック王国の王都の繁華街くらい賑わっていた。
「すごい人ですね」
「ここは観光客が集まるところですから。飲食店や温泉施設も多いですし、宿泊施設も充実しています。あと…………ま、まあ、そんなところですね」
巫女さんが頬を染めながら言い淀んだのでなんとなく伝わった。
温泉地だもんね。
「辛いものが名物なんですよね?」
「そうですね。火山が近いのでそういうイメージになりました。でも、普通のご飯もありますし、美味しいです」
食事に関してはものすごく期待できる。
「堪能させていただきます」
「ぜひ。では、こちらに」
サラさんが歩いていったのでついていく。
露天商も多く、たくさんの人がいるのだが、誰もサラさんを見ない。
「あのー、今さらですが、サラさんは一人で外に出てもいいんですか?」
護衛とかは?
「まったく問題ありませんよ。そもそもほとんどの人が私が巫女であることを知りません。普通にその辺の飲食店や温泉施設に出没します。もし、見かけたら声でもかけてください」
そうなんだ……
俺達はその後もサラさんについていくが、結構、階段が多く、段々になっているような街並みだ。
そして、そのままついていったのだが、徐々に人が減ってきていた。
「この辺りは?」
「宿泊施設が多い場所ですね。割かし静かなところです」
温泉旅館かな?
「本当に観光客が多いんですね」
「まだ少ない方ですよ。繁盛期は夏と冬です。夏は避暑地として人気ですし、冬は何と言っても温泉ですね。雪が積もった山々を見て、温泉に入るのも良いものですよ」
「なるほど。それは良いですね」
「ええ。さて、最後に案内するのはここです」
サラさんはそう言って、とある建物前で立ち止まった。
建物は平屋のようでそこまで大きな施設には見えない。
「何ですか?」
「こちらは教会で所有している宿泊施設の一つです。ハルト様御一行にお貸ししますのでご利用ください」
え? マジ?
「良いんですか?」
「客人用の施設です。ノルン様が招き、わざわざ異世界から来られたのですから当然です。まあ、入ってください」
サラさんがそう言って扉を開けたので中に入る。
玄関で靴を脱ぎ、備え付けてあったスリッパに履き替えると、奥に向かった。
「おー、すげー」
「広いのう」
「眺めもすごいです」
奥はリビングになっており、俺の部屋よりも広い。
テーブルが置いてあり、そこには花が添えられている。
さらに左の方には団らんのためのソファーがローテーブルを囲むように置かれている。
そして、奥一面は窓になっており、平野が一望できた。
「ここが一番眺めが良い地区になります。夕方は特に綺麗ですね」
だから宿泊施設が多いのか。
「すごいですね」
「お客様を招くところですので。ここがリビングになります。そして、こちらが寝室です」
サラさんが右の方にある扉を開ける。
すると、部屋の中はベッドが2つ置いてあり、さらにはリビング同様に窓から眺めが一望できた。
「おー……」
「次にですが、こちらへどうぞ」
サラさんがリビングに戻ると、右の方に歩いていく。
すると、そこには下に降りる階段があった。
「階段?」
「はい。下がお風呂になっております。どうぞ、ついてきてください」
サラさんがそう答えて階段を降りていったので俺達も続く。
すると、階段を降りた先は脱衣所になっており、洗面台もあった。
そして、サラさんが奥にある扉を開けると、3、4メートル四方の石材でできた温泉があった。
だが、それ以上にすごいのは横には壁があるが、ここが外であることだ。
天井があるので露天と言っていっていいのかはわからないが、上のリビングと同様に眺めが一望できる温泉だった。
「すごいのう……」
「完全に高級宿ですね……」
「一泊いくらするんでしょう?」
さあ?
「もちろん、料金はいりませんし、いつまでも使って結構です。ハルト様達は旅をし、各地を巡っていると聞きました。ぜひ、この聖都に来た際はここを拠点としてご活用くださいませ。管理は教会の者が行いますし、掃除も不要です」
すげー……
至れり尽くせりとはまさにこのこと。
「我らはいつここに来るのかはわからんぞ?」
「もちろんです。ご自由にお使いください。他の者が使うことは今後ありませんので」
くれるってことかな?
「えっと、そこまでされると恐縮なんですが……」
「とんでもございません。ノルン様のお客様に失礼はできません。ましてや、イワミノサクヤヒメ様は異世界出身とはいえ、神様です。神様に不敬などありえません」
「そ、そうですか……」
神様は神様なんだけど、小さい家の神様なんだよな……
「ええ。案内は以上になります。もし、何かございましたら教会までお越しください」
「ど、どうも……」
「では、私はこれで失礼します。ごゆるりとお過ごし、この地で楽しんで頂ければと思います」
サラさんはそう言って、深々と頭を下げると、階段を昇っていった。
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