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第052話 眺め


「まずはこちらをどうぞ」


 巫女さんが1枚の紙を渡してくる。

 受け取って見てみると、聖都の地図というか、案内図だった。


「これは?」

「ざっとしたものですが、聖都の地図になります。まあ、パンフレットですね」


 さすがは観光地。


「えーっと、山を登るんですか?」


 地図を見ているが、本当に山の中に町があるようだ。


「その辺りについては移動しながら説明致しましょう。まずはこちらにどうぞ」


 サラさんがそう言って、洞窟の中に入っていったので俺達も続く。

 洞窟は高さも幅も十分にあり、トンネルくらいはあった。

 そして、数十メートル先には明かりが見えており、そこまで深いわけではなさそうだ。


 そのまま進み、洞窟を抜けると、『あれ?』っという光景だった。


「えーっと……」

「駅ですかね?」

「駅じゃのう……」


 いくつもの線路が山を登るように張り巡らされており、軽く10を超える列車みたいなものもある。

 また、洞窟に入る前とは打って変わって人も多いうえに露天商もおり、賑わっていた。


「ここが聖都の玄関でございます。聖都はいくつもの区に分かれており、それぞれトロッコ列車で繋がっております。一応、歩いても行けますが、おすすめはしません。疲れるのはもちろんですが、足を踏み外したら落ちる可能性もありますので」


 へ、へー……なんか思ってたのと違うな……

 まあ、良いんだけど。


「賑わってますね」

「ええ。観光地ですので。では、まずはトロッコに乗りましょう。そこで説明致します」


 サラさんはそう言って、一番右奥の列車に向かう。

 ただ、そこには誰も並んでいないし、いるのは警備員だけだった。

 サラさんはまったく気にせずに歩いていき、警備員をスルーして列車に乗り込む。

 警備員も軽く頭を下げるだけで特に止めもしない。


「特別車両ですかね?」

「巫女じゃからな。偉いんじゃろ」

「聖都と呼ばれるくらいですからトップなのでは?」


 そんな人にガイドをさせているんだな……


 俺達はサラさんに続き、列車に乗り込む。

 列車内には俺達しか乗っておらず、すぐに扉が閉まった。


「まずはこのトロッコの説明を致します。このトロッコは先程も説明しましたが、各地に行け、料金が銅貨1枚かかります。ただ、こちらのフリーパスカードをお渡しておきます」


 サラさんが1枚のカードを渡してくる。


「これがあればお金がかからないんです?」

「ええ。この町に住んでいる者は大抵が持ってますね」


 要は定期だな。


「ありがとうございます」

「いえいえ。次にですが、この町は大きく分けて3つの区に分かれております。住民が住んでいる住居区、観光客が泊まる宿泊施設や飲食店が並ぶ繁華街、それに我ら教会関係者がいる教区です。別にどこにも行っても大丈夫ですし、各区にも見どころがありますのでご自由にご覧ください」


 地図を見ると、山の低いところに住居区があり、中腹に繁華街がある。

 そして、山頂付近に神殿があるっぽいし、この辺りが教区だろう。


「教区も行っていいんですか?」

「もちろんです。そこがメインの観光スポットですね。景色も良いですし、火山も見れます」


 そうだ、火山が見たかったんだ。


「火山が見たいです」

「今日は天気が良いですし、見れると思いますよ。では、まずは各区を一通り回り、説明させていただきます」


 サラさんがそう言うと、トロッコが動き出したので席につく。

 俺とジュリアさんが並ぶように座り、正面にはサクヤ様とサラさんだ。

 なお、窓際はジュリアさんに譲ったのでサクヤ様と共に窓から外を眺めている。


「あまりスピードは出さないんですね」


 かなりゆっくり進んでいる。


「表向きの理由としてはトロッコからの眺めも良いのでそちらを楽しんで頂きたいからですね。本当はトロッコの性能です。山を登っていますから必然的にそれだけの力が必要になるのです」


 まあ、よく考えたらスピードが出すぎても怖いな。


「動力は魔法ですか?」

「はい。そして、燃料は魔石です」


 石炭代わりに魔石かな?

 こういうところで使われているんだな。


「他のトロッコは人が多いんですか?」

「ええ。住民、観光客などが使います。多い時間帯は朝、昼、夕方ですね。あ、夜の10時から朝の5時までは使えなくなりますので注意してください」


 ほぼ電車だな。

 まあ、サクヤ様の転移があるし、終電とかは考えなくてもいい。


「わかりました」


 俺達はゆっくりと進んでいくトロッコから外を眺める。

 眺めが良いとは聞いているが、まだ何も見えない。


「すみません。正面の山を抜けないと何も見えませんね。少々、お待ちください」


 確かに正面にある俺達が抜けてきたあの洞窟があった山のせいで何も見えない。

 でも、下の方を見ると、先程までいた駅が見えており、すでに高いところまで来ていてちょっと興奮する。


「ジュリアさんは高いところ大丈夫?」

「はい。好きです。すでにこの高さで興奮しますね」

「うん。こういうのも初めてだし、興奮するよね」


 俺は地元以外の観光地にほとんど行ったことがない。

 ジュリアさんに至っては皆無だ。


「喜んでもらえたなら嬉しい限りです。もうすぐで正面の山を越えますよ」


 そう言われて窓の外を見ていると、トロッコが山を登っていき、正面の山を越える。

 すると、一面に広がる平野、遠くの森や山などが一望できた。


「おー、すごい!」

「見事じゃのう……」

「こういうのを初めて見ました……すごいです」


 これだけでも来て良かったと思える。


「ここはまだ麓付近です。あと少しで住居区に着きますが、一番眺めが良いのは中腹にある繁華街ですね。逆に教区は高すぎてあまり見えません」

「へー……眺めが一望できるおすすめの場所とかもあるんですか?」

「それは最後に案内しましょう。喜んでもらえると思います」


 おー、期待!


「ありがとうございます」

「いえ…………ちなみに確認なんですが、昨晩、かなり明るい光を放つ何かが確認されたのですが、ハルト様達でしょうか? ノルン様が多分、あの人達っておっしゃっていましたが……」


 あ……


「自分達です……」


 確かにこの眺めだったらかなり遠くでもわかるな。


「そ、そうですか。よくわかりませんが、そういうことなら問題ありません。異界の方々ですし、詮索する気もありませんので」


 すみません……


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
そうやってトロッコ列車で富士山よりも高い山に登るから高山病になる観光客が出るんやで?
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