第051話 巫女
翌日、遅めに起きた俺は家のことを済ませると、サクヤ様と異世界の服に着替えた。
そして、ジュリアさんに行ってもいいかとメールを送ると、すぐに来てもいいという返事が来たので転移する。
すると、ジュリアさんはキッチンの方におり、料理を作っていた。
「すぐにできますので」
「ありがとー」
「ありがとー……なのじゃ」
俺達はテーブルの前に座る。
「いつも綺麗ですよね」
今週は移動するためにほぼ毎日来ているが、いつも整理整頓されているし、散らかっているのを見たことがない。
「おぬしの部屋と違ってな」
うん。
「まず万年床をやめるべきなんですかね?」
「我が使っておるからダメじゃ。ちゃんと天気のいい日に干しておるから問題ない」
この人、ほぼ布団の上にいるからな……
「うーん……」
「気にせんでいいじゃろ。どうせ近いうちに引っ越す」
あー……まあ、このままいけばそういうことになるのか?
「できましたよー」
ジュリアさんがチャーハンを持ってくる。
「ありがとー」
「美味そうじゃの」
「チャーハンは自信があるんですよ。パラパラ道を目指して5年です」
へー……
「どれどれ……美味っ!」
「見事にパラパラじゃのう……」
すごい!
「ありがとうございます。今日は聖都ですけど、町を巡る感じですかね?」
「だね。と言っても聖都がどんな感じかわからないから行ってみてから」
「楽しみですね」
ホント、ホント。
俺達はその後もチャーハンを食べていき、あっという間に平らげた。
「いやー、本当に美味しかったよ。店のチャーハンよりも美味しいんじゃない?」
「うむ。ジュリアは料理が上手じゃのう」
俺のチャーハンなんてべちゃべちゃだしね。
まあ、普通に食べられる美味さだけど。
「ありがとうございます。そう言ってもらえると作った甲斐がありました。片付けますのでちょっと待っててください」
「あ、やるよ。ジュリアさんは着替えてて」
ジュリアさんはまだ異世界の服に着替えておらず、私服だ。
「そうですか? では、お願いします」
ジュリアさんは異世界の服を持つと、脱衣所の方に行く。
「サクヤ様、食器を流しに持っていくので手伝ってください」
「任せい。得意じゃ」
食べ終えた食器をキッチンに持っていき、洗い物をする。
「この家、キッチンまで綺麗なんですね」
すごい整理整頓されている。
「良い嫁じゃの」
ホントにね。
今日から毎日、掃除しよ……
量も少ないのですぐに洗い物をし終えると、座って、ジュリアさんを待つ。
すると、異世界の服に着替えたジュリアさんが脱衣所から出てきた。
「洗い物、ありがとうございます」
「御馳走になったしね。準備は大丈夫?」
「ええ。行きましょう」
ジュリアさんが頷く。
「よし、では行くぞ」
サクヤ様がそう言った瞬間、視界が変わり、異世界に飛んできた。
俺達は街道の上に立っているのだが、前方には雲にも届きそうな山々が見えている。
特に奥の山はすごい。
「でかっ!」
「すごいですね……どれぐらいの高さがあるのでしょうか……」
「富士の山より高いかものう……」
そりゃすごい。
「行ってみようか。昨日は気付かなかったけど、建物が見える」
山の麓の方に建物が数軒見えている。
距離的には1キロもない。
「本当ですね。昨日の車のライトが見えてないと良いのですが……」
「じゃのう。まあ、最悪はしらばっくれようぞ」
「そうしましょう」
俺達は歩き出し、麓を目指す。
しばらく歩いていると、麓には大きな穴というか、洞窟が見えた。
さらに歩き、洞窟の近くまでやってくると、1人の女性がおり、こちらに向かって頭を下げる。
「ようこそいらっしゃいました」
え? 誰?
「サクヤ様の知り合いです?」
「いや」
サクヤ様が首を横に振ったので女性をよく見てみる。
女性は赤みがかかった長い髪をしており、白いドレスみたいな服とよく合っていた。
さらには可愛らしい顔立ちをしており、どこかで会ったことあるような気もする。
「……ハルトさん、ちょっとだけノルン様に似てませんか?」
ジュリアさんが耳打ちをしてきた。
「あー……あの、もしかして、巫女様ですか?」
そういえば、ノルン様が暇してる巫女さんに案内をさせる的なことを言っていた。
「はい。火の国で巫女を務めておりますサラと申します。異界の神であらせられるイワミノサクヤヒメ様とその眷属のハルト様、そして、時間の問題の奥様のジュリア様ですね。女神ノルン様から話を聞いております」
俺とサクヤ様はまだいい。
でも、時間の問題の奥様って何だ?
ノルン様、どういう説明をしたんだろ?
「まあ、大体合ってるね。ノルン様からどういう話を聞いたんです?」
「昨晩、夢の中でノルン様が語りかけてきました。旅をしている御三方が来るので案内してやれ、と……」
やっぱりか。
「それはありがとうございます。でも、よいのですか?」
本当に暇なの?
「もちろんです。ノルン様の頼みは断れませんし、何よりもここは聖地でもありますが、観光地でもあります。多くの観光客が来られますが、異界からわざわざ来られるのは初めてのことです。ぜひ、楽しんで頂ければと思います」
サラさんがニッコリと微笑む。
「ノルンの巫女は行儀がいいのう」
「ホントですね」
いい子だわ。
さすがはノルン様の巫女さん。
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