第046話 あとはプロポーズボタンでクリアじゃろ
ジュリアさんの運転で車を走らせ、30分くらい経つと、辺りは田園風景が変わっていった。
そして、前方には山が見えており、車はそこに向かっている。
「あの山ですね」
やっぱりあれか。
「言わんでいいことを言ってやろうか?」
後部座席にいるサクヤ様がひょこっと顔を出した。
「言わんでいいなら言わんでいいですよ」
「つまらんのー……空気が読めんのー……」
「気になるので教えてください」
空気が読めるジュリアさんが苦笑いを浮かべながら答える。
「あの山周辺は昔の古戦場じゃな」
「本当に言わなくていいですね」
こら!
これからそこに行くんだぞ。
「あー、なんかそんなことを聞いたことがありますね。この辺の人はその事もあって、あの山に近づかないらしいです。落ち武者の霊が出るとか……」
出るんだー……
「ジュリアさんは怖くないの?」
「まあ……一応、魔法使いですし」
そうなんだけどさ。
「俺、そういうのダメ。お化け屋敷もホラーも見れない」
「そうです?」
「うん」
無理無理。
「カップルの定番じゃろうに……ジュリアが抱きついてくれるかもしれんぞ?」
「俺が抱きつきますね。もしくは、サクヤ様を抱っこして、盾にします」
神様シールド。
悪いものを防げそう。
「情けないのう……まあ、今は昼間じゃし、夜に取りに行くとしてもすぐに異世界に行けばいいじゃろ」
当然、夜なんだよなー……
火の国に移動するのも……おばけが出やすいのも……
「オフロード車、買おうかな……」
情けないことをつぶやいていると、車が山の中に入った。
周りは木しか見えないし、ちょっと薄暗い。
とはいえ、道はちゃんと舗装してあるので問題なく進んでいく。
「おばけはともかく、熊とか出そうだね」
「どうでしょう? 熊はどこにでもいますからね。熊は見たことないですけど、猪と鹿は見ましたよ」
猪を狩ったって言ってたな。
「熊なんか相手にならんじゃろ。おぬしはドラゴンスレイヤーぞ?」
「そういやそうでしたね」
「ハルトさん、かっこいいです」
ジュリアさんに言われるとすごく嬉しいよ。
そのまま山道を進んでいると、すぐに広場に出た。
そして、そこには車庫があり、ジュリアさんがその前に車を止める。
「到着です。車は車庫の中ですね」
ジュリアさんが車から降りたので俺達も降りる。
そして、ジュリアさんが車庫のシャッターを開けると、軽自動車のオフロード車が置いてあった。
「確かにこれなら多少荒れてても進めそうだね」
「ええ。ちょっと待ってくださいねー……」
ジュリアさんは車に乗り込むと、エンジンを点ける。
「どう?」
「大丈夫です。動きますし、ガソリンも満タンです」
おー! それは良かった!
「じゃあ、行けそうだね」
「はい。今夜から行きます?」
明日も休みだし、今日のうちに進めた方が良いかもな。
「そうだね。あの、あれだったら鍵を貸してくれたらこっちで進んでおくよ?」
「いえ、一緒に行きましょうよ。道中も旅ですし、そういうのも楽しいじゃないですか」
「そっか。じゃあ、一緒に行こう。ジュリアさんも家のこととか色々あると思うし、行ける時に連絡してよ。サクヤ様に迎えに行ってもらうから」
女性の方が時間がかかるものだし、合わせるべきだ。
俺は夕食後ならいつでも行けるもん。
「はい。では、戻りましょうか」
俺達は車に戻り、山を下りた。
家近くに戻った頃には夕方になっていったので3人でファミレスに行き、ちょっと早めの夕食を食べる。
そして、ジュリアさんに送ってもらい、家に戻った時にはノルン様はおられなかったが、テーブルに紙が置いてあった。
「何ですかね?」
「お助けアイテムじゃろ」
そうだろうなーっと思って、紙を見てみると、火の国の地図だった。
さすがはノルえもん。
「火の国はそこまで大きくないですね」
世界地図と見比べる。
「そのようじゃの。それに王都? いや、聖都らしいが、そこ以外は小さな村がある程度のようじゃ」
町ではなく、村ということはそういうことだろう。
「聖都に行けばいいんですかね?」
聖都は山脈にあるみたいだ。
「それで良いと思うぞ。他に見どころはなさそうじゃ」
火の国は聖都だけでいいか。
俺とサクヤ様はその後、テレビを見ながら夜になるのを待つ。
「ふわーあ……眠いのう……」
サクヤ様が9時前の天気予報を見ながらあくびをした。
「もう眠いんですか?」
見た目少女のサクヤ様もさすがにこんなに早くは寝ない。
だいたいタイミングが一緒だから11時から1時の間だ。
「まあの」
「あのー、お疲れでしたらお風呂に入って、寝てもいいですよ? ジュリアさんに連絡して、今日は中止にします」
さすがに優先すべきはサクヤ様だ。
「後部座席で寝るから大丈夫じゃ。ジュリアと行くんじゃろ? どっちかが運転し、どっちかが地図を見れば良かろう」
「帰ってからちゃんとお風呂に入ってくださいね」
「わかっておるわ。明日は休みじゃし、ゆっくり寝られるから問題ない」
それ、俺やジュリアさんのセリフ。
「毎日、休みじゃないですか……平日とか暇じゃないんです?」
「そもそも神は暇なものじゃし、問題ない。まあ、最近はノルンのゲームを眺めておるかの」
やっぱり俺が仕事とかで家を出ている時にゲームしてるんだな。
「サクヤ様はやらないんです?」
「やらんの。我は見る方が好きなのじゃ」
だから女児アニメとかが好きなのかな?
異世界でも転移以外は基本的に何もしないし。
「俺とジュリアさんが異世界ゲームをしているのを眺める感じです?」
「まあ、そんなところかの。コマンドも少ないし、つまらん恋愛アドベンチャーゲームじゃ」
RPGだよ。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!