第044話 情報収集
昼食の蕎麦を食べ終えると、家に戻り、着替える。
そして、サクヤ様がジュリアさんを迎えにいき、フロック王国の王都に転移した。
「まずは魔法ギルドじゃったな?」
「ええ。行きましょう」
俺達はいつものように賑やかな通りを歩いて、魔法ギルドに向かう。
魔法ギルドに着き、中に入ると、以前来た時と変わらず、そこまでの人はいなかったが、全員が一斉に俺達を見てきた。
ちょっとビクッとしたものの、チェスターさんが見えたので受付に向かう。
「やあ、ドラゴンスレイヤー様じゃないか!」
そういうことか……
「もしかして、みんな知ってます?」
「冒険者ギルドもだけど、ギルドはこういう情報が回るのは早いよ。それでなんでドラゴンなんかを倒したの?」
名が上がるってこういうことか。
「カーティスさんにワイバーンを見に行こうぜって誘われたんですよ」
「あー、なんかワイバーンの目撃情報があるって聞いたかも。ドラゴンだったの?」
「ええ。ファイアードラゴンでしたね。幼体らしいですけど」
「なるほどねー。小さい幼体のファイアードラゴンとワイバーンは似てるし、素人さんはわからないと思うよ。魔力を感じられれば明らかなんだけどね」
素人ですみません……
わかんないです。
「あれでドラゴンスレイヤーでいいんですかね? 幼体ですよ?」
「ドラゴンはドラゴンだよ。僕も見たかったなー。ワイバーンでも怖いからカーティスさんに誘われても行かないけどね」
「チェスターさんも魔法使いでしょ?」
「君らみたいな戦うタイプじゃないよ。こうやってギルド職員として生計を立てながら趣味の研究さ。そういう人は多いよ」
まあ、俺も会社員として生計を立てながら趣味の異世界だわ。
「俺も旅行ですね。火の国に行こうと思っているんですよ」
「そういや、旅の人だったね。もう出るの?」
「ええ。ここを拠点にしているので、ちょこちょこ戻ってはきます」
これを言っておかないと目撃情報があった時におかしくなる。
「ふーん……せっかくドラゴンスレイヤーで人気者になれそうなのにね。お姉さんがいる飲み屋に行ったらモテモテだよ?」
「既婚者に何を言っているんですか……」
しかも、後ろにいるじゃん。
「君は真面目だねー。お金も稼げそうだし、じゃんじゃん増やせばいいじゃないか」
あ、ハーレム推奨の世界だった。
「俺はジュリアさんだけでいいんですよ」
「まあ、そういう人もいるね。奥さん、美人だし、大事にしなよ」
この人、何人いるんだろう?
「それでですね、ちょっと火の国について聞きたいなーと思っているんですよ」
「火の国ねー……魔法ギルドはあるよ。もちろん、冒険者ギルドもある。でも、行ったことないからあまり知らないんだよねー」
ありゃ?
「行かないんです? 観光地なんでしょ」
「辛い料理が好きじゃないんだ。そこに行くなら水の国に行く」
「そうですか……」
「まあ、そこまで調べなくても良いんじゃない? 観光地って治安も良いし、ガイドブックとかも置いてあると思うよ」
その辺はあっちの世界と変わらないか。
「ハルト、地図とかもノルンにもらえば良くないか?」
あー、頼めばくれるか。
漫画やライトノベルがなくなるけど、たいした出費じゃない。
「それもそうですね。チェスターさん、ありがとうございました。そういうわけでちょっと観光がてら火の国に行ってきます」
「いってらっしゃい。お土産はいらないからね」
俺達はギルドをあとにすると、カーティスさんの研究室に向かう。
「次はカーティスか?」
歩いていると、サクヤ様が聞いてくる。
「ええ。一応、話を聞いておきます」
「まあ、詳しそうだったしの」
元外交官さんだからなー。
「それと本を返さないといけないんですよ」
ドラゴンステーキ事件ですっかり忘れていたが、借りていた本を返すために訪ねたんだった。
「なるほどのう……」
俺達はそのまま話をしながら歩いていき、カーティスさんの研究室にやってきた。
「こんにちはー」
声をかけながらノックをする。
『おー、勝手に入ってくれー』
カーティスさんの声が聞こえてきたので扉を開け、中に入った。
「どうもー」
「よく来てくれたな。昨日はありがとう、妻も子供も感謝しておったぞ」
ドラゴン肉ね。
「いえいえ。あ、昨日、返しそびれた本を返しておきますね」
「ありがとうございました」
俺とジュリアさんは手分けして、借りていた本を本棚に戻していく。
「うむ。まあ、好きに読んでくれ。火の国に行くんだったか?」
「ええ。ちょっと聞きたいんですけど、なんか変なルールとかあります?」
「別になかったと思うな……ああ、注意するべきところは専用の薬を買って飲むことだな」
ん?
「未知なる病原菌でもあるんです?」
確かノルン様がワクチンを打ってくれてるはず。
「何だそれ? よくわからんが、火の国って、山脈の上に町があるんだよ。そのせいで頭が痛くなったり、吐き気を催したりするらしい」
あ、高山病だ。
「そんなに高いんです?」
「場所によってはな。とはいえ、現地では専門の薬を売っているし、医者もいる」
ふむふむ。
「わかりました。他にあります?」
「他か……山だから場所によっては危ないところもあるくらいか? まあ、現地に看板があるし、バカなことをしなければ問題ないと思うぞ」
なるほど。
まあ、こんなところかな?
「わかりました。ありがとうございます」
「まあ、温泉もあるし、食べ物も辛いものが好きな者にとっては良いところだ思うぞ。ところで、馬車で行くのかね? もし、暇になりそうだったらまた本を持っていってもいいぞ」
馬車では行かないが……
「いいんです? 返すのが遅くなっちゃうかもしれませんけど」
「火の国の観光が終わったら帰ってくるんだろ?」
それどころかちょくちょく飲食店に出没すると思う。
「ええ。その後に水の国に行きますので帰ってきます」
「じゃあ、その時でもいい」
「ありがとうございます。ジュリアさんも喜ぶと思います」
「ええ。カーティスさんの研究はとても興味ありますし、すごく勉強になります」
ホント、ホント。
「奥さんが魔法使いだと良いな。ウチは全然、興味ないし、何なら苦言ばっかりだ」
カーティスさんの奥さんは普通の人なのか。
「趣味が合ったんですよ」
「それは良いことだ。まあ、好きなだけ持っていくといい」
カーティスさんにそう言われたのでジュリアさんと共に本棚を眺めながら数冊の本を借りることにする。
そして、カーティスさんの家をあとにすると、一度、家に帰ることにした。
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