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第042話 岩見と浅井


 食事を終えると、お暇することにし、屋敷を出る。

 時刻は7時を回っており、辺りはすでに真っ暗になっていた。


「今日はありがとうございました」


 外まで見送りに来てくれたカーティスさんに礼を言う。


「いやいや。ドラゴンという貴重なものを見れたし、ご馳走になった。礼を言うのはこちらだな。もう旅立つのか?」

「近いうちですね。あ、でも、その前に火の国の話を聞きたいです」

「そうかね。まあ、いつでも訪ねてくれたまえ」

「ありがとうございます。それでは」


 俺達はカーティスさんに別れを告げると、この場から離れ、裏道に入った。

 そして、サクヤ様の転移で家に戻る。


「いやー、美味しかった」

「すごかったですね」

「ハルト、今後もドラゴンを見つけたら積極的に狩れ」


 そんなに頻繁に見つかるのかねー?


「わかりました」


 俺達は家でまったりと過ごしていき、9時を過ぎたあたりでジュリアさんが帰っていった。

 その後、サクヤ様、俺の順番で風呂に入ると、布団に寝っ転がりながらジュリアさんに借りた漫画を読んでいく。


「次は火の国かのう……どんなものを食べられるやら……」


 隣の布団で横になって肘をついたサクヤ様がつぶやいた。


「辛い料理って言ってましたね。好きなんで楽しみです」

「まあの…………ハルト、浅井との話は?」


 サクヤ様が起き上がる。


「ジュリアさんのことです。前向きに進めていきますと答えました」

「そうか」

「確認ですが、本当によろしいのですか? 浅井さんに聞きましたけど、5年前にも打診があったらしいですね?」


 当時の俺は東京にいたから知らないが、断ったことはサクヤ様の意思もありそうだ。


「5年前のう……さすがに17、8の娘とおぬしの結婚はな……それにおぬしを東京から呼び戻すのはどうかと思ったのじゃ。もちろん、相手が浅井というのもある」

「でも、今回は反対しませんでしたね?」

「そりゃの。もう我が家はおぬししかおらんし、そのおぬしが女とまったく縁がないからじゃ」


 ですよねー。


「まあ、ジュリアさんで良かったですよ」

「そうじゃの。良い家庭を築いてくれ」


 そうしたいもんだ。


「サクヤ様、浅井の意志は何でしょう?」

「浅井は政治家になったことで魔法使いじゃない者の血を入れすぎたのじゃ。今はそうでもないが、昔は政略結婚なんて当たり前じゃったからの。そして、魔法使いとして、もはや見る影もない」


 あんなに大きい家なのにか……


「そうなんです?」

「はっきり言うが、ジュリアは魔法使いとしては並よりちょっと上程度じゃ。しかし、あれがかつての名門である浅井が出せる精一杯じゃろう」

「すごく良い子ですけど……」

「人間として……女としてはな。じゃが、岩見の当主であり、最高の才能を持つおぬしとは釣り合わん。ジュリアがおぬしに対して、一歩引いていたのはそれじゃ」


 俺はそっちじゃなくて、家柄なんかを気にしていた。


「俺は気にしませんけどね」

「我らはもう魔法使いに執着しておらんからな。我は岩見の家さえ……おぬしやその子供達が幸せに生きてくれればそれでいい」


 もうそれでいいだろ。

 魔法なんて使えない時代なんだから。


「浅井はそう考えなかったんです?」

「そうじゃ。浅井は魔法使いを閉ざすわけにはいかないと考えたんじゃろう」


 なんでそう思うんだろう?

 ものすごく成功している家なのに。


「このままではそう遠くない未来に浅井も岩見も滅びるって言ってましたよ」

「浅井は魔法使いとしての力を失う。岩見はまあ……おぬし一人じゃしの」


 しかも、独身安月給安アパート暮らし。


「ジュリアさんと結婚して、子供ができたら変わるんですかね? 子供はあげませんよ?」


 俺の子だ。


「親戚になることが大事なんじゃ。それにおぬしの子はジュリアの子じゃ。浅井は滅びん」

「どういうことです?」

「当主に就いて2年になるし、そろそろ教えてやろう。我も浅井家のタマちゃんもおぬしらが神の力……すなわち、魔法を失った時点で消滅する」


 はい?


「え? サクヤ様が消滅するんですか?」

「そうじゃ。ウチはおぬしという最高の魔法使いがおるから血統的には問題ない。まあ、それ以前の問題でおぬしが死んだ時点で我も消滅じゃがな」


 ダメじゃん。


「絶対に子孫を残さないといけないじゃないですか」


 早く言ってよ。


「それはそれで仕方がないことじゃ。時代がそういう方向に傾いておる。それとは別に結婚せいと思っておったがな」

「するつもりです……あー、それで浅井さんは……」


 そういうことか。


「そうじゃ。いくら浅井家が存続しようと、神の力を失えば奴らの神であるタマちゃんことアサイノタマヒメが消滅するんじゃ。しかし、タマちゃんの眷属であるジュリアがおぬしの子を生めばタマちゃんの眷属は生き続ける」


 浅井さんはタマヒメ様が滅ぶのを防ごうとしているわけだ。

 知らなかったが、あそこの家もそこまで来ているのか……


「なるほど……俺とジュリアさんの見合いってかなり大事だったんですね」

「そうじゃ。そして、それを知らんのはおぬしらだけじゃ」

「言ってくださいよ」


 そうしたらもっと積極的になった。


「言ってどうする? おぬし、我のためにジュリアと結婚する気か? 逆もしかりじゃ。今の時代、そんな夫婦は上手くいくわけがないし、仮面夫婦の完成じゃ。我はそれを望まん。我はおぬしらが幸せになってほしいのじゃ」


 そうか……それこそ政略結婚だ。


「サクヤ様、ありがとうございます」

「んー? 何が?」

「いつも俺のことを気にしてくださいます。それに異世界のことです。あれから明らかに俺の人生は変わりました」


 ジュリアさんとここまで関係性を進められたのは趣味が合ったこともあるが、異世界に行けたからだ。

 そういう意味ではノルン様にも感謝だ。


「そうかい。なら良かったわ。人生を楽しんでくれ。おぬしらの寿命は短いし、楽しまなければ損じゃぞ」


 その通りだ。


「火山が見たいです」

「見れるもんか?」

「さあ?」


 暑そう。


「その辺も探って、出発するかの」

「ええ。もう寝ましょうか。明日も昼からですが、ジュリアさんが来ます」

「そうじゃの」


 電気を消すと、明日からの異世界旅やこれからのことを考え、良い気分になりながら目を閉じた。


 明日も明後日も楽しもう。

 明明後日の火曜は…………うん。

 ジュリアさん、10連休明けで大丈夫かな?


ここまでが第1章となります。


これまでのところで『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると今後の執筆の励みになります。


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