表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/185

第022話 めおとけん


 ルイナの町にやってきた俺達は楽しそうなジュリアさんを先頭に町を回っていった。

 時には一緒に写真を撮ったりと完全な観光気分で隅々まで見ていく。

 そして、一通り町を見た後、ちょっと早いが、前にも来た可愛いウェイトレスがいる定食屋にやってきた。


「いらっしゃいませー。あちらの席にどうぞー」


 俺達はウェイトレスに勧められたテーブルにつく。

 俺とサクヤ様は並んで座り、対面にジュリアさんが座る形だ。


「ジュリアさん、ボアのバター焼き定食でいい?」

「はい、食べてみたいです」


 ジュリアさんが頷いたのでウェイトレスを呼び、ボアのバター焼き定食を3つ頼んだ。


「この町はどうだった?」


 ウェイトレスが厨房に行ったのでジュリアさんに聞いてみる。


「どこに行っても見たことがない風景ですごかったです!」


 ジュリアさんは本当に楽しそうだ。


「そうだね。俺も最初に来た時は感動したよ」

「はい。連れてきてもらい、ありがとうございます」

「午後からは王都を回ろうか。それと冒険者ギルドね」

「はい!」


 俺達がその後も町の感想を話しながら待っていると、ボアのバター焼き定食がやってきた。


「お肉ですかね?」

「うん。美味しいよ。食べてごらん」

「では……いただきます」


 ジュリアさんが丁寧に手を合わせると、ボアのバター焼きを食べだす。


「どう?」

「おー……すごく濃厚で美味しいです!」


 ジュリアさんは満面の笑みだ。


「だよねー」


 俺とサクヤ様も食べだす。

 以前も食べたが、やはり美味しいし、手が止まらない。


「相変わらず、すごいっすね」

「うむ。美味いのう……」


 俺達は黙々と食べていき、あっという間に平らげてしまった。


「これは何と言うか、癖になりそうな味ですね」

「だね。もちろん、日本の料理も美味しいんだけど、こっちはこっちですごい。最近、夜とかはこっちで食べることの方が多いよ」

「気持ちはすごくわかりますね」


 ジュリアさんがうんうんと頷く。


「サクヤ様、昼食も済みましたし、王都に行きます?」

「いや、一回戻ろう。やはりジュリアの格好が目立つ」


 確かに町を回っていた時に目立っていたな。

 俺の時と同じようにすれ違う人が皆、ジュリアさんを見ていた。

 美人だからっていうこともあるだろうが、女性も見ていた。


「ジュリアさん、どういう格好がいいとかある?」

「うーん、ハルトさんはこっち世界で魔物を倒したりして、お金を稼いでいるんですよね?」

「そうだね。食費や旅費みたいなもん」


 今はまだそこまでお金がかかっていないが、高い料理があるかもしれないし、何かでお金を使うこともあるだろう。


「だったら動きやすい格好がいいですかね? お手伝いしたいです」

「お手伝い?」

「はい。私は魔法使いとして、ハルトさんの足元にも及ばないですが、それでもお役には立てると思います」


 いや、多分、君の方が強いと思う。

 そう感じてしまうほどに剣の振りがすごかった。


「どうします? 嫁入り前のお嬢様ですよ?」


 サクヤ様に確認する。


「嫁に入るのはおぬしのところじゃろ。浅井の家の子なら問題あるまい。それに最悪は我の転移がある」


 それもそうか。


「じゃあ、そういう感じでノルン様に頼めませんかね?」

「わかった。では、一回家に戻るとしよう。どうせゲームしとるじゃろ」


 そうかも……


 俺達は店を出ると、もはやワープポイントとなっている建物と建物の間に行き、転移する。

 すると、やっぱりノルン様がテーブルに肘をつきながらゲームをしていた。


「ノルン様、ノルン様、ちょっと頼みたいことがあるんですけど……」


 靴を脱ぎ、部屋に上がると、ノルン様に声をかける。


「そこです」


 ノルン様はテレビから視線を切らずに布団の方を指差す。

 そこには白っぽい服が畳まれて置いてあった。


「ありがとうございます。ジュリアさん、服をもらったよ」

「え? はい……あの、どちら様でしょうか?」


 そういや初めてだわ。


「こちらはノルン様。異世界の神様」

「っ! し、失礼致しました! 浅井家が長女、ジュリアでございます!」


 ジュリアさんが何度目になるかわからない土下座を決める。

 すると、ずっとテレビ画面を見ていたノルン様が振り向いた。


「サクヤさん、この国の人って宗教への意識が低いんじゃなかったでしたっけ?」

「こやつらは神の子じゃ。神が身近にいるがゆえにこれじゃな」

「あなたの子はそうでもないようですけど……」

「こやつはこういう子じゃ」


 どういう子?

 ちゃんと敬ってますけど?


「ふーん……ジュリアと言いましたか? 顔を上げなさい。そういうのは不要です。そもそも世界も違えば信仰するものも違うのですから。あとゲームの邪魔をしないように」


 多分、ゲームが9割だな。

 この人、ゲームをしている時は集中してて、すごい不愛想だし。


「か、かしこまりました」


 ジュリアさんはまたもや深々と頭を下げる。


「ジュリアさん、ここではあれだから脱衣所の方で着替えてきなよ」

「は、はい」


 ジュリアさんは服を手に取り、脱衣所の方に向かった。


「ノルン様、もうクリアできません?」


 レベルが80超えているんだけど……

 めっちゃメタル狩りしてる……


「レベルを99にしてから魔王を一方的に倒します」


 うーん、私怨かな?

 魔王がいるのかは知らないけど。


「他にもゲームはあるんで好きにやって良いですよ」

「あなたは良い子ですね。臆さないし、優秀な人間のようです。女性関係以外は……」


 え? なんで知ってんの?


「ノルン様、ジュリアさんの剣をくれません? あの人、すごいんですよ」

「その前に確認ですが、あの娘と一緒になるんですか?」


 えーっと……


「多分? すみません、ようやく進み始めた感じです。見合いですし、結婚前提なのは確かですからそういう方向に進もうと思っているんですが……」


 こればっかりは相手があることだから何とも。


「じゃあ、一緒になりますね。ならこれでいいでしょう」


 ノルン様がそう言うと、テーブルの上に剣が現れた。

 俺がもらったやつとまったく同じ剣だ。


「羽のように軽いノルン様ソードです?」


 あと折れない。


「そうです。それは対になっている剣ですね」

「へー……ありがとうございます」


 双剣だったのかな?


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

【次にくるライトノベル大賞2025 エントリー】
https://x.gd/OSPb9
― 新着の感想 ―
マジで双方外堀を埋められているw 特にジュリアちゃんは異世界の街で買い物していて「奥さん」呼びされたら・・・きっと意識が芽生えるんだろうなw週末妻にならない事を切に祈る、そして・・・終末妻にならない様…
順調に外堀が埋まってゆく
ひらがななのには意味があったりして
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ