第211話 お宝?
「下に何かあるのう」
サクヤ様が元泉の穴を覗きながらつぶやく。
元泉の底にはがれきが積まれているのだが、円柱の形をした石材もあるし、明らかに建物の基礎のような形をした石材もある。
そして何より、石作りの小さな建物が見えていた。
「基礎を見る限り、かなりの大きさの建物みたいね。豪族の家かしら?」
「っぽいのう……しかし、あの建物は何じゃ? 魔力を感じるぞ」
「確かに感じる……」
「何でしょうかね? 他の建物は崩れているのにあれだけ残っていることに関係しているんでしょうか?」
まーた俺だけ感じないよ。
「行ってみますか?」
ノーラさんに確認する。
「そうね……どうやって行こうかしら? ジャンプ? いや、足が折れそう」
元泉は深さが10メートルもないと思うが、それでも深い。
「この距離なら転移で飛べる。連れていってやろう」
サクヤ様がそう言うと一瞬で視界が変わり、目の前に建物があった。
「便利ですね……」
「すごかろう? しかし、扉があるな」
建物には扉のようなものがある。
何故、ようなものを付けたかというと、取っ手がないのだ。
「何でしょうかね?」
「ちょっと待ってね」
ノーラさんはそう言うと、扉の前まで行き、調べ始めた。
「お宝の可能性がありますね」
「この建物だけ生き残っているところをみると、封印か何かじゃろ。倉庫みたいなものじゃないか?」
何を封印し、何を倉庫に入れるか……お宝だ!
「聖杯かな?」
「クリスタルスカルですよ」
「おぬしらが何を見たかわかるな……」
今週はゲームもしていたが、サブスクで映画も見てた。
「うーん、かなり特殊な魔法ね……見たことがないわ」
ノーラさんが首を傾げる。
「他の遺跡にもないんですか?」
「ええ……多分、封印の魔法だと思う」
「開けられないんですか?」
「ちょっと時間がかかるかも……専門家の人を呼ばないといけないし……開けられる?」
どうだろ?
まあ、どちらにせよ……
「わかんないですけど、今は無理ですね。水を浮かべているだけでいっぱいいっぱいです」
「あ、それもそうね。ジュリアさんは?」
「扉を壊していいのなら斬るか、穴を空けられますけど……」
斬れるんだ……
「じゃあ、それで。どうせ壊さないといけないし、こればっかりは仕方がないわ」
「では」
ジュリアさんが前に出ると、ノーラさんが下がった。
そして、ジュリアさんがゆっくりと剣を抜くと、構える。
そこにいつもの優しいジュリアさんの姿はない。
「あなたの奥さん、急に雰囲気が変わったわね」
「強い人なんですよ」
「へー……夫婦喧嘩の際は気を付けなさいね」
いや、さすがに凶器は持ち出さないでしょ。
「大丈夫ですよ。ジュリアさん、いける?」
「ノルン様の剣があるので大丈夫だと思います……いきますっ!」
ジュリアさんは腰を落とすと、目にも止まらないスピードで剣を振る。
すると、扉にXの字のような線が入り、崩れ落ちた。
「え? 見えなかったけど?」
「俺も見えてないので大丈夫です」
「我も……」
相変わらず、すごいね。
何がすごいってXの字ってことは2回振ったってことだ。
ぜーんぜん、わかんない。
「あなた達、お気楽な観光旅行じゃなくて、冒険者として頑張れば大成するんじゃない?」
「元の世界で仕事がありますし、危ない仕事はやめてるんです。はっきり言えば遊びに来ているんです」
「なるほどねー……」
まあ、儲けようと思ったらサクヤ便で配達の仕事を受けていればいい。
「ノーラさん、入ってみますか?」
「ちょっと待って。罠とかもあるかもしれないから。ちょっと探ってみる」
再び、ノーラさんが前に出て、ジュリアさんが下がってくる。
「すごい振りだよね」
「そうですか? ハルトさんの方がすごいですよ」
ジュリアさんが上を見上げた。
当たり前だけど、上空にはまだ水の塊がある。
頑張っているのだ。
「ノーラー、どうじゃー?」
サクヤ様が扉の近くで中を覗いているノーラさんに聞く。
「………………」
ん?
どうした?
「ノーラ?」
「え? あ、はい、すみません、何でしょうか?」
ずーっと中を覗いていたノーラさんが慌てて振り向く。
「いや、罠とやらはどうじゃ?」
「そういったものはありませんね……ただ……」
ノーラさんが再び、中を見始めた。
どうしたんだろと思い、ノーラさんのそばに行き、中を覗く。
すると、中は薄暗かったものの、本棚があることがわかった。
「書庫?」
「そう見えますね」
「お宝じゃなかったのう……いや待て」
……ん? 本?
「あれ?」
「2000年前の本、ってことですか?」
「すごくないか?」
うん。
すごいと思う……
「すごいどころの話じゃないわ……石碑や遺跡に書かれた文字なんかは見つかっているけど、当時の本なんて一冊も出てきてない」
洪水が起きたうえに2000年も前だからな。
日本だったら文字があったのかも怪しいわ。
「保存状態はどうでしょう? 良さそうに見えますけど……」
「ちょ、ちょっと見てみる」
ノーラさんはそう言って中に入り、本棚から一冊の本を取り出して開く。
「どうですかー?」
「すごい……何が書いてあるかさっぱりだけど、保存状態が抜群に良いわ。その辺の古本屋にでも売ってそう……」
文字は読めないのか。
「封印とやらのおかげかの?」
「多分、そうだと思います。貴重な本がこんなに……」
ノーラさんが興奮した様子で一面にある本棚の本を眺めた。
「ノーラさん、全部回収してください。数十分後にまた泉の底に沈みます」
「あ、それもそうね……って、多いわ」
それもそうだな。
ノーラさんの持っているカバンも魔法のカバンだろうけど、容量的に難しいだろう。
「我が回収してやる。あとでおぬしの部屋に帰ったら出してやろう」
「あ、ありがとうございます」
ノーラさんが深々と頭を下げた。
「では、サクヤ様、お願いします」
「うむ。おぬしの自慢の魔力がぐんぐんと減っていっておるしの」
うん、早くしてー。
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