第210話 すごーい!
ノーラさんがひたすら運転していくと、前方にオアシスが見えてきた。
「蜃気楼かな?」
「あれが蜃気楼ですか」
初めて見た。
「いや、本当のオアシスだから。あの辺に豪族の家があったんじゃないかって前に部族の方に聞いたことがあるのよ」
蜃気楼じゃなかったか。
しかし、目印がない砂漠でよくここまで来れるな……
2時間くらいは運転してたぞ。
「これまでに調査は?」
「してないから完全に手付かずね。理由は遠いから」
そうか……
俺達は車で来たからこんなに早く着いたが、本来はもっとかかるんだ。
水や食料のこともあるし、探検家や冒険者はここまで来られないんだな。
「期待できそうですね」
「ええ。ただ、帰りのことを考えると、1時間もここにいられないわよ?」
帰りも同じ時間だけかかるもんな。
「安心せい。我はもう砂漠のドライブは飽きた。帰りは一瞬じゃ」
あ、転移か。
「転移がありましたね……それはありがたいです。では、着いたらまずはご飯にしましょう。皆さんは先に食べてください。私は遺跡の目星を付けますので」
「ノーラさんは食べないんですか?」
「後でいただくわ。目星を付けたら逆に私のやることはないのよ。デスクワーカーなんで」
まあ、確かにノーラさんがスコップを持っている姿は想像できんな。
サラさんやディーネさんもだけど、腕も足も細いし。
「わかりました。そうしましょう」
ノーラさんが頷いてちょっとすると、オアシスに到着した。
オアシスは2、30メートルくらいの円形の泉があり、その周りは木や草なんかの緑で覆われていた。
ノーラさんが木陰まで進み、車を止める。
「じゃあ、ご飯を食べてて。私はちょっと見てみるから」
「暑さに気を付けてくださいね」
「わかってるわよ」
ノーラさんが頷いて車を降り、泉の周りの地面を見ながら何かを探し始めたので俺達は昼食の弁当を食べる。
「大変じゃの」
「遺跡は砂の中なんでしょうね」
「砂漠ですし、2000年も前だから地形も変わっているんでしょう」
俺達は何かをしているノーラさんを眺めながら昼食を食べていき、車内でゆっくりと過ごした。
すると、ノーラさんが戻ってくる。
「暑いわ……」
ノーラさんは運転席に乗り込むと、手で扇ぐ。
「砂漠ですもんね。地面を見てましたけど、何を探していていたんですか?」
「遺跡を探してた。魔力感知ね。お宝の中には魔力を帯びたものもあるからそういうのを探しているのよ。空振りだけど」
俺がまったくわからないやつだな。
「なさそうなんですか?」
「もうちょっと調べてみるけど、そういうことの方が多いのよ。確かに部族の方にこの辺にあるオアシスの近くとは聞いたけど、2000年も前のことだしね。地形も変わっているし、言い伝え自体も微妙なことが多いの」
さすがに昔すぎるのか。
「大変なんですね」
「だからこそ、見つけた時の感動はすごいけどね。私は一生をかけて、そういった歴史を探すのよ」
この人、すごいなー。
その後、ノーラさんが昼食タイムに入ったので代わりに俺とジュリアさんが泉周辺を探っていく。
まあ、俺はそういう探知ができないのでジュリアさんが主に探っていったのだが、特に魔力を感じるといったことはないようだ。
そして、昼食を終えたノーラさんも合流し、2人が捜索していった。
「うーん、魔力は感じませんね」
「やっぱり? ハズレかなー?」
ジュリアさんとノーラさんが微妙な表情を浮かべている。
「魚はいませんね」
「泉は地下水じゃろうからな。魚はおらんのじゃろ。しかし、澄んだ水じゃの」
戦力にならない俺とサクヤ様は泉を覗き込んでいた。
「飲めるんですかね?」
「飲めるは飲めるじゃろ。ノルンワクチンがあるし」
腹を壊すことはないか。
まあ、冷蔵庫にあるお茶を飲めばいいから別にいいけど。
「暑いですねー」
「泉に飛び込みたくなるのう……」
海で泳いだ時が懐かしく思える。
あれは楽しかったなー。
3人もはしゃいでいたし。
「遺跡って逆にここに沈んでないですかね?」
「泉にか?」
「2000年前でしょ? しかも、氾濫が起きたのならあり得るでしょ」
「確かにのう……めっちゃ見てるぞ」
サクヤ様に言われて振り向くと、ノーラさんがガン見していた。
「な、何ですか?」
ちょっと怖いぞ。
「泉の底……」
ノーラさんとジュリアさんがこちらにやってくると、泉を覗く。
「綺麗だよね」
「ですね。斧を投げたらノルン様が出てきそうです」
「きっとゲームを投げないと出てこないよ」
ゲームの神様だからそんなことをしたら怒られるかもしれないけど。
「うーん……何か感じるような……感じないような……ジュリアさんはどう?」
ノーラさんが泉を覗き込みながらジュリアさんに聞く。
「私も微妙です。でも、何かはありそうですね」
俺はさっきからずっと見ているけどわかんない。
「そっか……しかし、確認が難しそうね。私、潜水なんかできないし」
できても調査は無理でしょ。
「ハルト、どうにかできんか?」
サクヤ様が聞いてくる。
「水を浮かせればいいんでしょ? できますよ。でも、頑張って1時間程度ですね」
「え? 何言ってんの?」
ノーラさんがぽかんとした表情になった。
「やれ」
「はい」
頷くと、泉に向かって手を掲げる。
すると、泉が盛り上がり始めた。
「おー……」
「え? 何?」
泉はどんどんと盛り上がると、宙に浮き、上空にゆらゆらと揺れる大きな玉となった。
太陽が反射する水の塊はどこか美しい。
「ハルトさん、すごいです!」
ジュリアさんが拍手してくれ、サクヤ様は誇らしげな顔をしている。
「あなた、とんでもない魔法使いなのね……さすがは神の眷属の当主様ね」
「いえいえ、そんなことないですよ……」
魔力がぐんぐん減っているー!
見栄張って1時間とか言うんじゃなかったー!
でも、もう引き下がれない!
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
本日より新作を投稿しております。(↓にリンク)
ぜひともそちらの方も読んで頂けると幸いです。
よろしくお願いします!




