第196話 もちろん理解している
俺達は窓からの眺めを見ながらゆっくりと過ごしていく。
「これからどうします?」
ジュリアさんが聞いてくる。
「夕方に魔法ギルドに行って配達依頼を終えようかなと思っている。その後に冒険者ギルドでアドバイスをもらおうかなーっと」
「わかりました。それで仕事はどうしますか?」
仕事かー……
「一応、聞いてみるけど、砂漠っていうのがちょっと気になる。大丈夫かな? サソリとかいそうじゃない?」
「確かにカーティスさんが毒の魔物が多いとは言ってましたが……デスワームを求めていたのにそこが気になります?」
それはそれ。
これはこれ。
「俺、サソリが苦手なんだよね」
「苦手と思うほど、身近な生物じゃないですけどね。じゃあ、話を聞いてみて、安全そうか確認してみましょうか。どちらにせよ、あまり離れない方が良いと思いますけど」
盗賊だらけらしいしね。
「では、夕方にギルドへ行くということで良いな? 行く時に起こせ」
サクヤ様がコロンと横になった。
「私も探検してこよーっと」
タマヒメ様が立ち上がり、寝室の方に行く。
「本でも読もうかな」
「そうしましょうか」
俺達は人生の勝者気分(?)を味わいながら読書をしていく。
昼になると、家で料理を作り、こちらで砂漠を眺めながら食べた。
そして、午後からもゆっくりと過ごしていくと、日が沈みだす。
「そろそろ出てみようか」
「そうですね。暗くなる前に行ってみましょう」
「うむ、行くかの」
「いってらっしゃーい」
タマヒメ様は行かないらしい。
まあ、いつものことか。
魔法ギルドはともかく、冒険者ギルドが怖いんだろう。
「では、お留守番を頼みますね」
「任せておいて」
タマヒメ様は頷くと、漫画を読みだした。
「よし、面倒じゃし、下まで転移で降りよう」
「お願いします」
俺達はサクヤ様の転移で下のエントランスまで降りる。
受付には午前中に見た女性が座っているが、特に反応はしない。
俺はちょっと気になることがあったので受付の方に向かった。
「あのー、出かけるんですけど、ここの戸締りってどうなっているんですかね?」
座っている受付の女性に聞く。
「ここは夜であろうと誰かしらがここに座っていますので大丈夫ですよ。私はもうすぐで上がりですが、引き続き、教会の者が夜勤です」
大変だな。
「では、夜に出かけても大丈夫なんですか?」
「もちろんです。むしろ、この町は眠らない町という異名があるくらいに夜がメインの町ですから」
へー……
「わかりました。では、お願いします」
「はい。また、何かあれば対応いたしますのでお気軽にお声がけください」
コンシェルジュ付きか。
本当に上級だな。
「ありがとうございます。では、ちょっと出てきます」
「いってらっしゃいませ」
にっこりと微笑んだ受付の女性に見送られ、ビルを出ると、北にあるギルドに向かう。
「確かに気温や日の強さが落ちておるの」
サクヤ様が言うように暑さが和らいでいる気がする。
とはいえ、まだ暑いが……
「人も増えてますね」
「本当じゃの」
午前中に見て回った時より多くの人が歩いているし、なんか活気が出てきている気がする。
「今からが本番なんですかね?」
ジュリアさんが聞いてくる。
「多分ね。眠らない町ってすごくない?」
「夜のお店が朝方までやってることですかね?」
夜のお店……この子、わかっているのかな?
いや、ジュリアさんも大人か。
とはいえ、今言っているのは飲食店だろう。
「そうかもね。今日の晩はそっちで食べてみよっか」
「良いと思います」
「ええの。ノーラが言っておった肉料理を食べてみたい」
そういう健全な店をギルドで聞くか……
俺達は歩いて町の北の方にやってくると、駅に到着した。
「えーっと、ギルドは逆の方向って言ってたよね?」
俺達は馬車で右に行ったから左かな?
「そうですね。あっちだと思います。こころなしか冒険者らしき人が多い気がします」
ジュリアさんが指差した左の方には強そうな冒険者らしき人が歩いている。
「じゃあ、あっちか」
俺達が左の方に歩いていくと、魔法ギルドと冒険者ギルドを発見した。
「あった、あった。先に魔法ギルドの方に行くね」
「はい」
俺達は手前にある魔法ギルドに入る。
ギルドの中はそこそこ広く、受付に3人の職員がおり、数人のお客さんがベンチに腰かけて何かを話していた。
俺達は手前の受付にいる高齢に見える女性のもとに行く。
「こんにちはー」
「こんにちは。おや? 見かけない子達だね?」
お婆さんが首を傾げた。
「今日、ここに着いたばかりなんですよ。フロック王国から来ました」
「フロック王国……あー、あんた、ハルトかい?」
俺を知っているらしい。
「ええ。荷物をお持ちしました。チェスターさんから連絡が来てますかね?」
「ああ、来てるよ。本当に早いんだね。ギルドカードを見せておくれ」
「どうぞ」
ギルドカードをカウンターに置くと、お婆さんがじーっと見始める。
「ふむふむ……確かに。私はドリスだ」
「どうも。知ってると思いますが、私はハルトでこちらが妻のジュリア、それとサクヤ様になります。もう一人タマヒメ様という方がおられるのですが、宿で休憩中です」
本当はビビって来ないだけ。
「4人ね。遠いのにわざわざ書類を運んでもらって悪いね」
「いえいえ、前から土の国は気になっていましたし、ついでですよ」
そう言うと、サクヤ様がカバンをカウンターに置く。
「観光地だし、楽しみな。ちょっと待ってね。中身を確認してくるから」
ドリスさんはそう言って、カバンを持って奥に引っ込んでいった。
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