第190話 やっぱり空気を読む神様
ジュリアさんと窓の外を眺めていると、徐々に暗くなり始める。
すると、サクヤ様とタマヒメ様が戻ってきた。
「待たせたの」
「食べましょー」
サクヤ様とタマヒメ様が皿に乗ったボアのバター焼きサンドをテーブルに置く。
「ウチの皿ですね」
「テイクアウトじゃし、返すのも面倒だからこれに乗せてくれって頼んだんじゃ」
「私のアイディアね」
へー……
「ノルン様にも渡しました?」
「おぬしがそう言うと思ったから渡した。どうもって言っておったぞ」
それは良かった。
俺達はソファーに腰かけるとボアのバター焼きサンドを食べ始める。
なお、神様方はお酒を飲んている。
「やっぱり美味しいですね。それに場所を変えると美味しく感じます」
ジュリアさんは笑顔だ。
「そうだね。なんでだろう? 雰囲気かな?」
「かもしれませんね」
旅行は楽しいなー。
「車窓はどうじゃった?」
サクヤ様が聞いてくる。
「良かったですよ。もう砂漠に入ってます」
窓の外はもう暗くなっているので見えないけど。
「ほー。それはええの。また寝る時にでも灯りを消して、見るといい」
明るいと反射して見えないが、暗くすれば夜の砂漠が見えるかもしれないな。
「そうします。サクヤ様とタマヒメ様はどこで寝ます? ベッドがお嫌いでしたよね?」
理由はいまいちわからないけど。
「寝る時は帰る」
「私も」
そうなのか……
「良いんですか?」
「さすがにここの床では寝られん」
「振動がウザそうだもんね」
そこまで揺れは感じないが、確かに床だと結構感じるかもしれないな。
「そうですか。わかりました」
「朝には戻ってくる」
「ちゃんと起きてくださいよ」
サクヤ様って結構寝るからな。
「わかっておるわい。どうせ徹夜で起きておる奴がおるからそいつに起こしてくれるように頼む」
ノルン様ね。
ホント、いつ寝ているんだろう?
引っ越してからは特にそう思う。
「では、お願いします。あ、それと俺も酎ハイをもらえません? なんか飲みたくなってきました」
「あ、私も……」
「ほいほい」
サクヤ様がお酒を出してくれたのでジュリアさんと乾杯し、ボアのバター焼きサンドを食べながら飲み始めた。
その後、食事を終えるとトランプなんかのカードゲームをしたり、本を読んだりして過ごしていき、9時を過ぎた辺りで順番に風呂に入る。
そして、寝巻に着替えた俺達はお酒をちょびちょびと飲みながら再び、トランプを始めた。
「明日はいよいよ土の国か……まずはどうする?」
サクヤ様が聞いてくる。
「火の国と水の国ではサラさんとディーネさんが出迎えてくれましたよね? そういうことがなければ、まずは一通りを見たいと思っています」
なんか巫女様が出迎えてきそうな気がするけど。
「出迎えてくると思うな」
「絶対に出迎えてくるでしょ。ノルンがガイドを指示してるでしょうし」
まあね……
そんな含みを持たせてたし。
「ちょっと気が引けますが、知らない土地だからありがたいことではあるんですよね」
「向こうが勝手にやってることだから気にするな。おぬしだってノルンを接待しておるじゃろ」
俺も異世界の神を接待しているし、立場的には巫女様と一緒か。
ノルン様は勝手にゲームしてるだけだから接待と言うのかは微妙だけど。
「うーん、まあ、巫女様が出てくるなら案内してもらいますよ」
「それがええの。別荘をもらおうぞ」
「いいわね、それ」
図々しくないかねー?
まあ、神様だし、そんなものかもしれない。
「要求はしないでくださいね」
「そんなことせんわい」
「私達はそういうことしないの。もらえるものはもらうけど要求はしない。それが品位ある神ってものよ」
うんうんと頷いているタマヒメ様……あなた、魔導帝国の国境でお茶を要求してませんでした?
「品位ある神よ、すまんが、あがりじゃ。これを引け」
ジュリアさんからカードを引いたサクヤ様が揃えたのでペアをテーブルに置き、残り1枚をタマヒメ様に差し出す。
「もうあがったの? 早いわ、ねー……」
カードを引いたタマヒメ様が眉をひそめた。
どう見てもババを引いたとわかる。
実は普段から結構、ババ抜きをするのだが、ダントツで弱いのがタマヒメ様だ。
理由は簡単でこんな感じですぐに表情に出してしまうから。
逆にその子であるジュリアさんは激つよ。
タマヒメ様と逆でずっとニコニコぽわぽわしてるからまったくわからないのだ。
「まあ、頑張ってくれ」
「ふ、ふーん、ハルト、引きなさい」
正面にいるタマヒメ様がカードを差し出してきた。
「はい」
タマヒメ様から1枚引くと、ババではないうえに揃ったのでペアをテーブルに置く。
その後も続けていったのだが、やっぱりタマヒメ様が負けた。
「おかしいわねー。順番を変えたのに」
ジュリアさんが強すぎるということで俺とジュリアさんの位置を変えたのだ。
でも、原因はジュリアさんではなく、自分のノットポーカーフェイスだから位置を変えるのはあまり意味がない。
「ノルンと練習でもせい」
「嫌。あいつ、絶対にズルするもん。平気で覗き見しそう」
しそう……
ノルン様って見た目も心も美しい素敵な神様だけど、超が付くほどの負けず嫌いだもん。
「まあの……さて、良い時間じゃし、そろそろ寝るか。帰るぞ、タマちゃん」
もう11時は過ぎている。
「そうね……じゃあ、いつ着くかわかんないから6時くらいには戻ってくる。あんたらも夜更かしはしないで寝なさいね」
俺達が夜更かしする時はゲームしてる時かアニメを見ている時だ。
でも、ここではそのどっちもできないから寝ると思う。
「わかりました」
「そうします」
ジュリアさんと共に頷く。
「ではの。おやすみ」
「おやすみー」
サクヤ様とタマヒメ様は転移を使って家に帰った。
「寝る前にちょっと夜の砂漠を見ようよ」
「そうしましょう」
俺達は灯りを消すと、それぞれのベッドに腰かけ、窓の外を見ていく。
最初はあまり見えなかったが、徐々に目が暗闇に慣れてくると、月明りにわずかに照らされた砂漠が見えた。
「夜もすごいね」
「ええ。見てるだけで静寂を感じられます。それに星空も綺麗です」
満天の星空に大きな月。
それに砂以外何もない地上のコンストラクトは1枚の絵のようだ。
「いつまでも見ていられそう……ジュリアさん、こっちにおいで。一緒に見ようよ」
「はい」
俺達は一緒に夜の砂漠を堪能してから就寝した。
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