第187話 兵士「……(よく歩いてこれたな)」
翌日、朝起きると、朝食を食べる。
「タマヒメ様も行かれますか?」
一緒に朝食を食べているタマヒメ様に聞く。
「どうしよっかな? あんたらも知らない町なのよね?」
「初めて行くところです。ただ王都なんで治安は良いと思いますよ。カーティスさんやギルドから治安が悪いとも聞いていませんし、平和なところだと思います」
というか、治安の悪いところに行ったことがない。
「うーん……じゃあ、行こうかな」
「そうしましょう」
俺達は朝食を食べ終えると、準備をし、異世界に飛んだ。
「あー、あそこか」
「やっぱり明るいと見えますね」
俺達の視線の先にはちょっと遠いが、壁が見えている。
王都を覆う外壁だろう。
「距離は5キロくらいか? まあ、歩けんことはないの」
「私、歩いてばっかりの気がするわ」
「そりゃおぬしが車移動についてこんからじゃろ。我らはやっと着いたかという満足感がある」
確かにちょっとあるね。
「夜とか怖いじゃないの。昔、そういう恐竜の映画を見たわ。夜に移動しているとティラノサウルスに食べられるの」
なんか見たことがあるような……ないような……
「ネガティブな神じゃな。ドラゴンスレイヤーとワイバーンを首ちょんぱする夫婦がおるから大丈夫じゃ」
そもそも転移で逃げてくれればいいんだけどね。
車の弁償が嫌だからそんな目に遭いたくないのは確かだけど。
「物騒な夫婦ねー」
「ホントにの」
あんたらの子ですけどね。
俺達は歩き出し、街道を進み始めた。
「この前よりは過ごしやすくなったわね」
タマヒメ様が言うようにまだ暑いは暑いが、風が気持ちいいし、ちょっと楽になっている。
「もう9月ですからね。日本は全然気温が落ちていませんが、こっちは緑が多いですし、風が当たって過ごしやすいんでしょう」
「良いわねー。本来の四季って感じ。まあ、これからクソ暑い砂漠に行くんだけどさ」
まあまあ。
「そういうのも良いじゃないですか。確かに暑いのは嫌ですけど、砂漠なんて行ったことないですし、気になりますよ。ねー?」
ジュリアさんに振る。
「はい。気になります」
ジュリアさんが笑顔で頷いた。
「あんたら、本当に波長というか、人間性が一緒ね」
「良いことじゃないですか」
ノルン様もそう言ってた。
「まあねー……」
俺達はその後も街道を歩いていく。
最初は気持ちいい風だし、良い感じだったが、さすがに5キロは遠かったので結構、きつくなってきた。
タマヒメ様なんか最初は饒舌だったのにもうしゃべってない。
そうやって1時間ちょっと歩くとようやく王都の門近くまでやってきた。
「ちょっと疲れたね」
「そうですね。でも、良い運動ですよ」
確かに。
俺達は門までやってくると、門番をしている兵士さんに近づく。
「こんにちはー」
「ん? ああ、こんにちは。どうかしたのか?」
兵士が挨拶を返してくるが、特に警戒している様子はない。
まあ、ぱっと見は女子供を連れた人畜無害パーティーだからだろう。
「フロック王国から来たんですけど、通っていいですか?」
「フロックからか。歩いてきたのか?」
いや、車。
「ええ。遠かったですよ」
「そりゃ大変だな。国境の検問を抜けてきたんだろ? じゃあ、問題ない」
緩々だな。
本当に平和なんだ。
「ありがとうございます。それで土の国に行きたいんですけど、駅ってどこです?」
「あー、そういうことか。駅は南にあるな。王都はわかりやすく中央に城があり、東西南北に大通りがある。大通りは門や駅に繋がっているからまずは中央の城に行くといい。ちなみに、ここは東門だ」
なるほど。
確かにわかりやすい。
「ありがとうございます」
礼を言うと、門をくぐり、王都の中に入る。
「栄えてるね」
王都は家々がひしめき合っているし、露天商も多い。
歩いている人も多く、かなり賑わっていた。
「王都ですもんね。フロック王国と比べるとお店が多い感じがします」
確かにそんな気がする。
俺達は大通りを歩きながら周囲を見渡していく。
「商業が発展している町なのかな?」
露天商だけでなく、お店っぽい建物も多いような気がする。
「そうかもしれませんね。南に土の国、東にフロック王国です。さらに北が風の国で西も国がありますよね」
「各地から集まっているかもね。見て回るのは時間がかかりそう」
「ですね。あ、あれがお城ですかね?」
前方に白くて大きな石造りの建物が見えている。
どう見てもお城だ。
俺達はお城を目指してまっすぐ進んでいき、その間も辺りを見ていく。
そして、しばらく歩いていると、 高い塀に囲まれたお城の前までやってきた。
お城の周りは広場になっており、多くの人がお城を眺めたりしている。
「大きいですね」
ジュリアさんが城を眺めながらつぶやく。
「ホントだね。異世界って感じがするけど、さすがに中には入れそうにないね」
門があるが、当然、閉じられているし、剣や槍を持った兵士が守っている。
「ちょっと気になりますが、さすがにリスキーです」
「だねー。とりあえず、駅に行こうか」
「そうですね。南ってことはあっちですね」
ジュリアさんが斜め左に見えている通りを指差す。
「じゃあ、行ってみようか」
「ええ」
俺達は一旦、この場を離れ、南の大通りに向かう。
そして、同じように歩いていくと、前方に木製の建物が見えてきた。
さらにはその建物の横には黒い列車がある。
「あれかな?」
「そうですね。どう見ても列車です」
「SLみたいね」
「なんで黒いんじゃろ? 熱がうんぬんかんぬんって言ってたけど、黒いからじゃないか?」
うーん、何とも言えんな。
「とにかく、駅員さんに話を聞いてみましょう」
俺達は建物に近づき、中に入った。
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