第184話 ノルン様? 隣にいるよ。寝かせてくれないから困るよ
水の国でゆっくりと過ごした翌日の日曜日は家のことやお返しの発送なんかがあったため、異世界には行かずに過ごした。
そして、辺りが暗くなる夜の8時くらいに浅井の山にある倉庫に飛び、車に乗り込む。
「ファイアードラゴンがおった岩山の麓からのスタートでええか?」
後部座席のサクヤ様が確認してくる。
なお、やっぱりタマヒメ様はいない。
「そうですね。地図を見る限り、そこからずっと西に行けば国境です」
定期便が通っているという情報からも道はちゃんとしているだろう。
「よし、では、飛ぶぞ」
サクヤ様がそう言うと、視界が変わった。
暗いのでよくわからないが、バックミラーに灯りが見えており、後ろに王都があることがわかる。
「えーっと……」
ライトを点けると、前方に道が見えた。
「この道をまっすぐですね」
地図を見ている助手席のジュリアさんが教えてくれる。
「じゃあ、行くねー」
アクセルを踏み、車を発進させると、時速50キロ程度まで出して進んでいく。
「土の国の巫女様ってどんな方でしょうね」
運転していると、ジュリアさんがふとつぶやいた。
「あー、そうだね。確かサラさんの3つ上って言ってたね」
サラさんは22歳だから25歳ということになる。
「サラさんより年上なら落ち着いた人かもしれませんね」
まあ……
「ディーネさんもサラさんの1つ上だけどね」
「うーん、あの方は何とも……というか、私と同い年ですね」
ジュリアさんも23歳だからそうなるね。
まあ、人は年齢ではないだろう。
俺だって自分が落ち着いているとは思わないし、むしろ、子供っぽいと思っている。
多分、サラさんの方が精神年齢は上だ。
「年齢なんて気にするな。我もタマちゃんもノルンも数えられないくらいの歳じゃぞ」
あなた方は神様でしょ。
「ウチの先祖とかどうでした?」
「ウチの一族は昔から大人しい者が多い。逆に浅井は行動的じゃな。その差が現在の両家じゃ」
かたや政治家でかたやアパート暮らしだもんね。
でも、確かにウチに縁談を持ってくる辺りは行動力がある。
それにジュリアさんも大人しい人間ではあるが、結構、積極的というか好奇心旺盛だ。
「神様とは逆なんだね」
「確かにそうですね」
タマヒメ様は家から出ないというか、行動しない。
サクヤ様は異世界に連れてきてくれたし、かなり動く神様だ。
「補うようになったのかもしれんな」
そうかもしれない。
俺達は話をしながら進んでいく。
今回はいつもよりも進まないといけないので途中でジュリアさんと運転を交代し、車を走らせた。
「そろそろ10時になるね」
「話をしながらだとあっという間ですね」
本当にね。
「このままのペースで進むと、木曜日くらいに国境かな? 仕事を休むか……」
国境を抜けるのは昼間じゃないといけない。
「お願いしてもいいですか? 私はちょっと有休が微妙になってきました」
1年目だし、少ないだろうからね。
でもまあ、有休が足りないって悩めるのは良い職場だと思う。
東京にいた頃は悲しい理由で有休を把握してなかったし。
「俺とサクヤ様で国境を越えておくよ」
「お願いします。じゃあ、今日はこの辺にしておきますか」
「そうだね。サクヤ様、帰りますよー。起きてくださーい」
「おー……わかったー」
後部座席で寝ていたサクヤ様を起こして転移を使ってもらい、家に帰る。
そして、順番に風呂に入り、就寝した。
翌日の月曜からは仕事をし、夜に移動するという日々となる。
仕事が終わった後に3時間も運転するのはちょっときついが、それでもジュリアさんと交代しながらだし、新しいところに行ける楽しみとワクワクがあったので頑張って進んでいった。
そして、月曜、火曜と終わり、水曜の夜も進んでいくと、前方にわずかな灯りが見えてくる。
「国境かな?」
「そんな気がしますね。どうしましょう? この辺で止めておきますか?」
「そうだねー……また謎の光源体も嫌だし、あとは歩くよ」
トラブルはごめんだ。
「わかりました」
ジュリアさんが車を止めたので地図を見る。
「予定通りに来てるか……明日の昼に国境を抜けて、明日明後日の夜に頑張れば土曜にはダルト王国に行けるね」
「では、土曜に列車ですか?」
「多分ね。ちょっと列車のダイヤがわからないし、駅で確認かな?」
夜しか移動できないなら往復を考えると、ダイヤも限られているだろう。
もちろん、そもそも空いているかどうかもある。
「それもそうですね。観光がてら確認しましょう」
それがいいな。
「よしよし、順調そうじゃの。では、帰るか」
サクヤ様の転移で倉庫に戻り、車を置く。
さらに転移して家に戻ると、ノルン様がゲームをしており、タマヒメ様がサクヤ様の布団で寝転びながらそれを見ていた。
「ただいま戻りました」
「おかえり。今日はちょっと早かったわね」
時刻は10時前だ。
「国境に着いたんですよ。明日の昼に歩いて抜けます」
「良かったわねー」
タマヒメ様がうんうんと頷く。
「ええ。あ、ジュリアさん、先にお風呂に入りなよ。俺は明日休みだし、ゆっくり入って」
「ありがとうございます。では、先に入りますね」
ジュリアさんが風呂場に向かった。
「タマヒメ様も明日、一緒に行きませんか?」
せっかくなのでタマヒメ様を誘う。
「そうねー……暇だし、どうせここでノルンのゲームを眺めているだけだから行こうかしら?」
「そうしましょう。ちなみに、ゲームはされないんですか? それ2人用ですよね?」
ノルン様はハマったのかずっと同じ戦争系のゲームをしている。
「タマちゃんはわざとかっていうくらいに的確に地雷を踏むのでクビです」
ノルン様が振り向いた。
どうやらタマヒメ様は追放されたようだ。
「やり方がわかんないのよ」
「では、対戦形式のゲームにしましょう」
「あれはもっとわからない。気が付いたらあんたに殺されてるだけじゃん」
タマ虐はやめて。
「やれやれ……ハルトさんもやってみますか? 楽しいですよ?」
自分よりゲームに慣れてない人としかやらないと評判のノルン様が珍しく、誘ってきた。
「えーっと、じゃあ……」
その後、ノルン様と対戦形式のゲームをやった。
ノルン様はスナイパーを好むようで普通に走っていると、本当に気が付いたら死んでしまう。
そんな中、コソコソしながらスナイパーのるんを見つけ出し、撃った。
「やりますね……」
あれ? お美しいノルン様から冷たいオーラが……
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