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第168話 売却へ


 翌日の金曜日。

 眠いなーと思いながら会社に行き、仕事をこなしていく。

 職場に半分くらいの人しかいなかったし、なんなら上司もいなかった。

 そのため、ちょっと気楽な気持ちで仕事をしていった。


 そして翌日の土曜日。

 朝早くに起き、準備をすると、サクヤ様にマージェリーさんの部屋に送ってもらったのだが、サクヤ様はそのまま帰っていく。

 今日はよくわからないが、3人で神様会なるものをするらしいので俺とジュリアさんだけだ。


「ハルトさん、また置き手紙が置いてありますよ」


 ジュリアさんが言うようにこの前と同じようにテーブルの上に紙が置いてあった。


「マージェリーさんかな?」

「だと思います」


 テーブルの方に行き、紙を手に取ると、ジュリアさんと見てみる。


【シーサーペントの魔石のことで話がしたい。いつ来るか知らんが、多分、どっかにいるのでその辺の兵士に言って、呼んでくれ マージェリー】


「この前と一緒だね」

「というか、使いまわしてますね」


 そう思う。


「じゃあ、行こうか」

「ええ。この前と一緒ですね」


 一緒……


 俺達は脳裏にこの前の光景が浮かびながらも部屋を出て、車に乗り込む。

 そして、4層と3層の検問所に向かった。


「あれ? マージェリーさんだ」


 門の辺りで兵士に指示するマージェリーさんの姿が見える。


「ホントですね。仕事中みたいです」

「良かったー」

「いつもの(?)マージェリーさんですね」


 ジュリアさんが首を傾げながらも頷いた。


「止めるよ」


 近くに車を止め、ジュリアさんと一緒に降りる。

 すると、マージェリーさんも気付いたようで俺達を見ると、こちらにやってきた。


「ちょうどいいところに来たな。先程、置き手紙を置いてきたところだ」


 どうやらあの手紙は今朝置いたものだったようだ。

 本当にタイミングが良い。


「それを見て、マージェリーさんを探していたんです。それで魔石のこととは?」

「売却先が決まったのだ」


 おー!


「それは良かったです。どちら様です?」

「前に言っていたように議員の1人だ。維持派の有力議員であるエイブラム殿だな」


 あれ?


「エイブラム?」

「館長さんですかね?」


 ジュリアさんと顔を見合わす。


「そうだ。図書館の館長だな」


 マージェーリーさんが頷いた。


「へー……議員さんだったんですね」

「ああ。図書館の館長が先だな。館長を長年勤めているんだが、数年前に立候補したんだよ。知名度もあるし、魔法使いがよく利用する図書館の館長だから支持も厚い。一発で当選されたよ」


 あー……館長自ら受付に立っている理由がそれかも……


「維持派というのは?」

「前に話しただろ。あの魔法使い優遇をどうにかしろってやつだ」


 あー、あの魔法使いの優劣で物事が決まることについて激論してるってやつか。


「維持ってことは館長さんの考えは今のままってことですね」

「そうなる。まあ、差別の象徴とも言える図書館の館長だからな」


 差別の象徴って……


「そんなにですか? 優しそうな人でしたよ?」

「それは貴殿らが優れた魔法使いだからだ。あの人は人を見て、本の貸し出しを渋るぞ」


 あー、それはわかる気がする。

 めっちゃ忠告してきたし。


「実際、魔法使いの優劣が本の返却率とリンクしているんじゃないです?」

「多分、そうだろうな」


 そこはちゃんと返せって思うわ。


「しかし、そんな人が魔石なんか買ってどうするんですかね?」


 ジュリアさんが首を傾げる。


「研究だろ。議員で館長だが、名誉教授でもある」


 肩書きが多いな。


「へー……相当なお偉いさんなんですね」

「この国で知らない者はいないんじゃないかってくらいに有名だな」


 すげー有名。

 そりゃ一発で当選するわ。


「いくらぐらいですかね?」

「条件付きだが、金貨1300枚と言っている」


 ん?


「条件とは?」


 面倒なのは嫌だぞ。

 ジュリアさんと一緒に住みだす来週末までにはお金が欲しいんだから。


「たいしたことではない。魔石を入手した経緯を詳しく聞きたいらしい。シーサーペントは伝説だからな」

「説明してないんです?」


 マージェリーさんはカーティスさんから聞いているはずだ。


「言わない方が良いと判断した。ただ、本物のシーサーペントの魔石だと私の叔父と水の国の巫女様が証明しているとしか言っていない」


 言わないことで購買意欲を上げたわけだ。


「素直に話していいもんですかね?」

「向こうはそれを望んでいる。話を聞いたからやっぱりやめたは私が許さんから安心しろ。詐欺罪でとっ捕まえて、財産を没収してでも払ってやるぞ」


 さすが大佐。


「わかりました。話をするくらいならいいですよ。たいした話ではないですし」

「うむ。まあ、向こうも立場ある人だから問題ないだろう。もちろん、私も同席してやろう」

「ありがとうございます。心強いです」

「だろう? 私は頼りになると評判なんだ」


 うんうん。

 この人は本当にできる人でかっこいいな……仕事中は。


「そう思います」

「憧れます」


 こう言っとけばいいだろうと思った。

 そして、ジュリアさんと心が1つになった気がする。


「うむ。して、いつがいい? 向こうはどうせ図書館にいるだろうし、貴殿らの都合でいいぞ」

「マージェリーさんは?」

「何度でも言ってやろう。暇だ」


 そうでしたね。


「じゃあ、今から行ってみましょうか。ダメならダメで後日にします」

「うむ。では、行ってみよう」


 俺達は車に乗り込むと、図書館に向かった。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

私が連載している別作品である『左遷錬金術師の辺境暮らし』のコミカライズが連載開始となりました。

ぜひとも読んでいただければと思います(↓にリンク)


本作共々、よろしくお願いします!

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逆にそんな人がよく今まで立候補してなかったなと
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