第165話 着いてからのお楽しみ
俺達はトロッコに乗り、繫華街に戻ってきた。
そして、別荘に帰ると、転移を使い、水の国の別荘に飛ぶ。
すると、漫画を読んでいるタマヒメ様と横になっているディーネさんの姿が見えた。
先週見た光景とまったく同じである。
「あ、おかえりー」
「ご苦労さん……って、サラじゃん」
ディーネさんは眠そうな目をしているし、微妙に髪が跳ねているし、寝てたんだと思う。
「おはようございます。ディーネさんは相変わらずですね」
「タマヒメ様の接待をしていたんだよ」
どこが?
「何でもいいわよ。それよりも狩りはどうだったの?」
タマヒメ様が聞いてくる。
「ええ、狩れましたよ。ちゃんとワイバーンバーベキューができます」
「おー、それは良かったわね!」
「やったぜ」
喜んでもらえて何より。
「そういうわけで夕方からバーベキューです。それまでどうします?」
「あ、サラ、神殿にでも行くか?」
「いいですか?」
「せっかくだし、見ていけよ。私が乗ったリヴァイアサンを見せてやる」
大事なのは私が乗ったの部分ね。
「じゃあ、行ってきます」
「よし。そういうわけで私達は町を回っているから」
せっかく来たわけだし、それが良いだろうな。
「わかりました。適当な時にでも来てください」
「あいよー」
ディーネさんは頷くと、サラさんと共に別荘を出ていった。
「我はちょっと寝る」
サクヤ様はそう言うと、さっきディーネさんが横になっていたソファーで同じように横になる。
「ハルトさん、ちょっと海を歩きませんか?」
ジュリアさんが誘ってきた。
「そうしよっか」
俺達はいつぞやのように海岸線を歩いていき、海を見ていく。
その後も町中を巡り、お店を見ていったりした。
午後からは別荘に戻って魔導帝国の図書館で借りた本を読んでいく。
そして、夕方になり、ジュリアさんとタマヒメ様が準備を始めたのでサクヤ様と共に火の国の別荘へ飛び、冒険者ギルドに向かった。
「どうもー」
他にお客さんもいなかったので挨拶をしながら受付に向かう。
「あ、ハルトさん。ご用意できてますよー」
シンディーさんがいつもの笑顔でカウンターに魔石と小袋、そして、何かの葉っぱに包まれた肉を置いた。
「ありがとうございます」
「えーっと、まずですけどー、こちらが魔石になりまーす。パパのところじゃなくてこちらで売ることをお勧めしますねー」
「なんでです?」
「現在は特別な依頼もないですし、料金が同じだからでーす。昼ご飯を一緒に食べたパパからの情報なので間違いないでーす」
となると、手間が省けるってことか。
「じゃあ、売却で」
「かしこまりましたー」
シンディーさんが魔石を回収し、代わりにもう1つの小袋を置く。
「いくらです?」
「魔石は金貨20枚になりまーす」
シンディーさんはそう言って小袋の中から金貨を取り出し、5枚ずつに並べてわかりやすくしてくれる。
「確かに」
頷くと、シンディーさんが金貨を小袋に戻し、もう1つの小袋を手に取る。
「次は素材の売却ですねー。当然ですが、こちらの一番美味しい部位をお返しするのでその分は差し引かれまーす。とはいえ、かなりのサイズでしたので金貨50枚になりますー」
シンディーさんは小袋からすべての金貨を取り出すと、まず5枚重ねを2つ並べ、重ねた。
そして、作った10枚重ねと同じ高さの金貨を5列作って並べる。
これで金貨50枚をちゃんと数えられたし、非常にわかりやすいのだが、あまりにも手つきが流暢なため、手品みたいだなって思ってしまった。
「ありがとうございます」
「はーい。それとこちらがお肉ですー。どれくらい必要なのかを聞いていなかったのでちょっと多めにしました」
「ええ。それで大丈夫です」
多分、5から10キロくらいはあると思う。
まあ、今回のバーベキューはサラさんとディーネさんも参加するから人数も多いし、焼いた肉はノルン様にも送る。
それに残っても冷凍すればいいだろう。
「ではではー、お受け取りくださーい。本日はご利用ありがとうございましたー」
俺達はお金と肉を受け取ると、ギルドを出る。
「プロじゃろ?」
「まあ……」
「我はあやつを誤解しておった。男に媚びる嫌な女かと思っていたが、したたかな計算女だったわけだ」
うーん、どっちが嫌な女だろうか?
まあ、利用客としては愛想が良い方が良いから別にいいんだけど。
「とにかく、帰りましょう。食べ放題ですよ」
「そうじゃの。飲み放題じゃ」
俺達は別荘に戻ると、転移でジュリアさんの家に飛び、他の野菜なんかを用意しているジュリアさんに受け取ったワイバーンの肉を渡す。
「おー! 大きいですね!」
ジュリアさんは満面の笑みで肉を受け取った。
「ねー。美味しい部位らしいよ」
「すごいです! じゃあ、適当な大きさに切っていきますね」
「お願い。俺はテラスで準備しているから」
「わかりました。あと30分ぐらいですので」
現在の時刻は5時半だからちょうどいいな。
「了解。サクヤ様、お願いします」
「んー」
俺達は別荘に飛び、バーベキューの準備をしていく。
すると、サラさんとディーネさんがやってきた。
「おっ! 準備しているな!」
「暑さも和らいできましたし、海の風が気持ちよくて良いですね」
2人が席につく。
「そうですよね。今、ジュリアさんが用意してますんでちょっと待ってくださいね」
「はいよー」
「ありがとうございます」
ディーネさんは足を組み、ちょっとヤンキーっぽい。
一方でサラさんはジュリアさんにも似たおしとやかな感じで座っている。
本当に対称的な2人だと思う。
はたして、土の巫女様と風の巫女様はどういう人なんだろうか?
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