第160話 夏はまだまだ終わらない
そのままソファーで待っていると、3人が下の風呂場から上がってきた。
ただ、サクヤ様とタマヒメ様が浴衣なのはいつものことだが、ジュリアさんも浴衣だった。
もちろん、3人共、さっきまで着ていたやつではなく、旅館とかである寝巻用だ。
「あ、ハルト」
「帰ったのか。悪いのう」
「お疲れ様です。大丈夫でした?」
3人が髪の毛をタオルで拭きながらソファーに座った。
「大丈夫。思ったより早く帰れたよ。ジュリアさんはそれ、どうしたの?」
浴衣を見ながら聞く。
「ええ。今日は花火だったので雰囲気的にこれがいいかなと……実家にいた時はたまにこういうのも着てたんですよ」
さすがは和風の家の子だ。
「似合ってるよ。ジュリアさんはやっぱりそういうのが似合うね」
「ありがとうございます。あ、お風呂どうぞ。上がったら一緒に飲みましょうよ」
「そうだね。入ってくるよ」
そう言って下に降りると、風呂に入る。
今日1日の疲れもあってかかなり気持ちよく、ゆっくりと楽しむことができた。
そして、風呂から上がると、3人でお酒を飲む。
「あー、美味しいねー」
「ですね。ふふっ、やっぱりレモンです」
「まあねー」
好きなんだなー。
「今年の夏は楽しめたわー。去年は暑かったから倉庫の涼しいところで寝てただけだもん」
うーん、中々に怖い発言だ。
でも、神様だしな。
「まだ夏は終わっとらんがな」
「まあね。学生さん的には夏休みが始まったばかりよ」
宿題なんかまったく考えない時期だな。
「あ、そうでした。ハルトさん、来週はお盆ですよね? お休みはどうなってます?」
ジュリアさんが聞いてくる。
「会社的には暦通りだね。有休を使えって風潮だし、13日、14日くらいに使って5連休くらいかなー?」
月曜に申請する予定。
「私は15日にも休みますね」
「じゃあ、俺も休もうかなー」
「そうしましょうよ。10日の土曜は集まりがあるんで実家に帰らないといけないんです」
そういや、前にそういうことを言ってたな。
「なるほどねー。ジュリアさん、悪いけど、その時にでも浅井さんとお母さんに次の週の土日のどちらかを空けてくれるように言ってくれない? 挨拶に行きたい」
さすがに盆は避けたいし、とはいえ、もう結婚まで日にちがない。
ギリギリだが、別に許可を得に行くわけでもなく、本当に挨拶だから問題ないだろう。
「あ、それがありましたね。わかりました。父と母に伝えておきます」
「お願い」
ぱぱっと挨拶して、ぱぱっと帰ろう。
「それで盆はどうします?」
「そうだねー……また海で遊ぼうか」
「良いと思います。覚えた氷魔法を使いたいです」
もう覚えたんだ……
「あとは……あ、そうだ。ワイバーンを狩って、皆でバーベキューしようか。サラさんとディーネさんを呼んでさ」
2人には火の国の別荘に泊まってもらおう。
「おー! 良いですね! 御二人も喜ぶと思います!」
ねー。
「サクヤ様、タマヒメ様、いいですかね?」
「おー、誘え、誘え」
「私はそのワイバーン狩りとやらには参加しないけどね」
まあ、そうだろうね。
さすがにここは遠慮してないことはわかる。
「となると、御二人に声をかけるか」
「明日にします?」
それがいいか……
いきなり当日に誘うのは良くないし。
「あー、我らが誘っておこう」
「まあ、そうね。それくらいやりましょう」
サクヤ様とタマヒメ様が誘ってくれるらしい。
「いいんですか?」
「どっちにも行ったことがあるし、転移ですぐじゃ」
それもそうだな。
「私は火の国とやらはあのマグマの店しか知らないけどね」
「じゃあ、我がそっちに行くからおぬしはディーネを誘え。どうせ昼間は資料室で勉強じゃろ」
「勉強(笑)。まあ、明日、行ってみるわ」
俺も勉強はしてないと思うな。
「ジュリアさん、明日はどうする?」
「本を借りたいですし、図書館に行きたいですね」
「それもそうだね。サクヤ様、明日の朝、魔導帝国に送ってくれませんか? マージェリーさんから連絡があるかもしれませんし、行ってみます」
魔石のことがある。
もう売れたとは思わないけど、進捗を知りたい。
「了解。いつ頃戻るんじゃ?」
「日曜ですし、昼には帰ります。それに午後から家具屋に行くんで」
ジュリアさんと約束している。
「あー、あれか……わかった。じゃあ、昼になったらマージェリーの部屋に戻ってこい」
「ええ。それでお願いします」
俺達は予定を決め、お酒を飲んでいく。
そして、いい時間となったので就寝した。
翌日は早めに起き、朝風呂を堪能すると、朝食を食べ、準備をする。
「では、サクヤ様、タマヒメ様、お願いします」
「任せておけ」
「来週の日曜ね。じゃあ、私は先に行ってるわ」
タマヒメ様が転移を使い、シュンッと消えた。
「では、我らも行くぞー」
「お願いします」
俺達も転移し、魔導帝国にあるマージェリーさんの部屋まで飛ぶ。
「じゃあ、我もサラの方を誘ってくる。昼にな」
「ええ。サラさんによろしくとお伝えください」
「わかった。ではの」
サクヤ様が転移を使い、火の国に戻っていった。
「ハルトさん、テーブルの上に紙が置いてありますよ」
ジュリアさんに言われてテーブルを見ると確かに1枚の紙が置いてあった。
「なんだろう?」
テーブルの方に行き、ジュリアさんと紙を見てみる。
【シーサーペントの魔石のことで話がしたい。いつ来るか知らんが、多分、どっかにいるのでその辺の兵士に言って、呼んでくれ マージェリー】
「マージェリーさんからか」
「魔石のことみたいですね」
「じゃあ、ちょっと探してみようか」
「はい」
俺達は借りていた本を持って、部屋を出ると、車に乗り込み、兵士が確実にいるであろう3層と4層間の検問所に向かった。
書籍を購入してくださった方、ありがとうございます。
まだの方は是非ともご購入頂けると幸いです。
よろしくお願いいたします!