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第158話 屋台の魅力


 俺達は車に乗り、花火大会会場からちょっと離れた駐車場に車を止める。


「ここか?」


 後部座席のサクヤ様が聞いてくる。


「会場近くはまずとめられないんですよ。それに下手すると、帰りに渋滞に巻き込まれて動けなくなります」


 だから最初から遠すぎず近すぎないこの距離が最適解なのだ。


「まあ、皆がそこにとめようとするし、帰りは歩きの客だらけか」

「この前よりは全然近いし、歩きましょう」


 魔導帝国に行くのに2時間も歩いたもんね。


「それもそうじゃの。よし、行くか」


 俺達は車から降りると、会場に向かう。

 すると、徐々に老若男女問わず、多くの人で賑わい始めてきた。


「やっぱり人が多いね」

「そうですね。夏休みなこともあって、若者も多いです」


 高校生や中学生、中には小学生らしき子供達も楽しそうに会場に向かっている。


「いつの時代も変わらんのー。子供達は楽しそうじゃ」

「そうね。そして、いつの時代もあの子供達のわずかなお小遣いを搾取するくじがあるのよね」


 俺もゲーム機が欲しくてやったなー。

 絶対に当たらなかったけど。


「やります?」

「やんない。食べ物オンリー」


 まあねー。


 俺達はそのまま歩いていき、会場となる河川敷に到着した。

 まだ明るいし、花火が始まるまでは時間があるのだが、すでに多くの人がいたし、敷物を敷いて、場所取りをしていた。


「多いのう」

「早めに場所だけでも確保しましょうか」

「そうじゃの。神様シックスセンスによると、あそこが良いな」


 サクヤ様が空いているスペースを指差す。


「超常現象の塊のシックスセンスってすごそうですね」

「すごいんじゃ」


 俺達はサクヤ様が指示した空いているスペースに行くと、敷物を敷き、腰かけた。


「花火って何時から?」


 タマヒメ様が聞いてくる。


「8時からですね」

「まだ全然、時間があるわけね。漫画でも持ってくればよかった」

「トランプでもするか?」


 サクヤ様はトランプが好きなのだ。


「トランプねー……まあいいけど」

「やろう、やろう。あ、かき氷食いたいのう」

「あ、私も」


 暑いし、ちょうどいいかもな。


「買ってきますよ。何味が良いです?」

「いちご!」

「普通、メロンじゃろ」


 俺はレモンだと思う。


「じゃあ、買ってきますね」

「私も行きます」


 俺とジュリアさんは立ち上がると、屋台が並んでいるところに向かう。


「屋台もすごいねー」

「本当ですね。色々と食べてみたいです」

「皆、食だね」


 俺もだけど。


「まあ、この歳になってくじや金魚すくいはしませんよ」


 金魚をもらってもねー。

 大変だ。


「まあねー。あ、かき氷屋があった。ジュリアさんは何味にする?」


 かき氷屋を見つけたのでジュリアさんに聞く。

 まあ、見える範囲でもかき氷屋はかなりあるんだが……


「私はタマヒメ様と同じいちごですね。ハルトさんは?」

「俺、レモン」

「ハルトさん、レモンがお好きですね」

「そうかな?」


 意識したことがなかった。


「酎ハイもレモンを好んでいるじゃないですか」


 あー、確かに。


「言われてみるとそうかも……ジュリアさんは甘いのが好きだよね?」

「好きですね。飲みやすいですもん」


 俺達は話をしながらかき氷屋に行き、レモンとイチゴとメロンとブルーハワイのかき氷を注文した。

 そして、ジュリアさんと分担して持ち、河川敷に戻る。


「お待たせしました」


 2人にメロンといちごを渡した。


「悪いのう」

「ありがとー」


 2人は礼を言い、かき氷を食べだす。


「サクヤ様、ブルーハワイをノルン様に送ってください」

「はいよ」


 サクヤ様にブルーハワイを渡すと、すぐに消える。


「あー、キーンと来るわね……」


 かき氷をがっついて食べていたタマヒメ様が頭を抱えた。


「ゆっくり食べてくださいよ」

「久しぶりだったから油断したわー。でも、美味しいわ」


 そう言われたのでレモンのかき氷を食べてみると、懐かしい味がしたし、美味しかった。


「おー、レモンだ。子供の頃を思い出す」

「ホントですね」


 俺達はかき氷を食べながらサクヤ様の要望のトランプをした。

 いつもはサクヤ様と2人でしていたので微妙だったが、4人もいれば楽しいし、白熱する。

 まあ、白熱していたのは主にサクヤ様とタマヒメ様だけど。


「そろそろ暗くなってきたわねー」


 時刻はすでに7時だ。

 この時間になると人もずっと増えてきている。


「まだ1時間あるがのう。よし、食いものを調達してくる」

「私も行く! あんたらは待ってなさい!」


 タマヒメ様はあんなに人が多いところを嫌がってたのにノリノリだな。


「唐揚げをお願いします。それとノルン様のたこ焼きを忘れないでくださいね」

「はいよ。たこ焼きは2つ買う」

「ジュリアは何がいい?」


 タマヒメ様がジュリアさんに確認する。


「私はやきそばがいいです」

「おっけー。じゃあ、行ってくる」


 2人は仲良く屋台の方に向かった。


「微笑ましいね」

「そうですね。それにタマヒメ様が楽しそうで良かったです」

「ホントだよね。やっぱり来ないって決めつけずに誘うべきだよ」


 というか、遠慮がちだし、基本的に嫌がるけど、多少、強引にでも連れていった方が良い気がする。


「そうですね。そうしましょう」


 俺達がそのまま話をしながら待っていると、サクヤ様とタマヒメ様が戻ってきた。


「買いましたねー」


 かなり買っている。


「余ったらノルンに送ればええじゃろ」

「それもそうですね」


 ノルン様も1日中ゲームで疲れているだろうし、ジャンクフードもお好きだろう。


 俺達はたこ焼き、唐揚げ、やきそば、フライドポテトといった100パーセントジャンクフードを食べていく。


「やっぱりこういうのも美味しいよね」

「ええ。それに風情がありますよ。夏って感じです」


 ねー。

 正直、俺は酎ハイが飲みたいけど。


「たこ焼き、美味しいわ」

「うむ。ええの」

「ノルン様にも送ってくださいよー」


 このままだと2つ共、食べそうだ。


「な? こやつ、ノルンが好きじゃろ?」

「やっぱりああいう神様が良いのかしら?」


 ひどい誤解だ。


「コンプライアンスかかってこい教ですって。というか、感謝の意くらい示しますよ」


 異世界に行けるのはノルン様のご厚意なんだから。


「まあの。唐揚げも1つ送ってやるか」

「フライドポテトも添えてあげましょう」


 優しい神様達は屋台セットを作り、ノルン様に送った。

 そして、俺達も食べていくと、ノルン様の可愛らしい顔の絵が描かれた紙が現れる。


「えーっと、チョコバナナだそうです」


 いつぞやの居酒屋を思い出すな。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。


本日より、本作が発売となりました。

皆様の応援のおかげで書籍化でき、無事に販売日を迎えることができました。

webで読んだ方にも楽しんで頂けるように改稿を行いましたのでぜひとも書店に寄った際は手に取ってもらえると幸いです。


よろしくお願いします!

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神様同士の仲も良くてにっこりです。 みんなのことが大好きなハルトさんですね。
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