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第155話 図書館


 水の国の別荘でゆっくりと過ごした翌日。

 朝からマージェリーさんの部屋にやってきた俺達は下に降り、車に乗り込んで図書館に向かう。

 もちろん、タマヒメ様は俺の家に行った。


「図書館のう……もっと夏らしいことをしないのか?」


 後部座席のサクヤ様が愚痴ってきた。


「図書館も夏っぽくないですか?」

「そりゃ宿題や受験を控えた学生じゃろ」


 まあね。

 俺も子供の頃に勉強しに行った。


「懐かしいですね。受験勉強は大変でしたよ」


 ジュリアさんは大学に行っていたからな。

 大変だっただろう。


「夏っぽいイベントなら来週、花火大会がありますから行きましょうよ。前に言ってたでしょ」

「あー、言っておったのう。確かに夏らしいな」


 ド定番だ。


「今度の土曜日だし、ジュリアさんも行こうよ」

「良いですねー! タマヒメ様は……来るかな?」

「どうだろう?」


 来ないような……


「来るわけないじゃろ。あやつは人が多いところには出てこらん」


 多分、そんな気がする。


「ジュリアさん、誘ってみてよ」

「わかりました。帰ったら誘ってみます」


 来るかなー?

 タマヒメ様も好きそうなんだけど……


「ハルトー、我の浴衣はまだあったか?」

「いつも夜に着てるじゃないですか」


 サクヤ様はいつも浴衣で寝る。


「それじゃなくて、外に着ていくやつじゃ」

「ありますよ。押し入れに入ってます」

「じゃあ、それじゃの。りんご飴を食べよ」


 似合うなー。


 俺達が話をしていると、図書館に到着したので路駐する。


「いいんですかね?」

「いいんじゃない? 大佐の車だし」


 誰も取り締まらないし、盗らないだろう。

 そもそも他に車がないこともあって、駐車場自体がない。


「それもそうですね」


 俺達は車から降りると、図書館に向かう。


「大きいなー」

「すごいですよね」


 これだけ大きな建物っていうだけでもすごいのにこの中には世界中の魔法の本があるのがすごい。


「入ってみよう」

「はい」


 俺達は扉を開けて中に入る。

 すると、正面には受付があったのだが、白い髭を生やしたお爺ちゃんが座っていた。


「こんにちはー」

「はい、こんにちは」


 挨拶をすると、お爺ちゃんが立ち上がって挨拶を返す。


「ここって図書館ですよね?」

「そうなりますな。ここは初めてですか?」

「はい。昨日、この国に着いたんですよ」

「それはそれは……ようこそいらっしゃいました。私はここの館長を務めていますエイブラムです。以後お見知りおきを……」


 館長さんはニコニコと自己紹介をしてきた。


「よろしくお願いします。それでこの図書館で本を読みたいんですけど……」

「魔法ギルドのギルドカードはお持ちですかな?」

「ええ。持ってます」


 そう答えてギルドカードを取り出すと、ジュリアさんも取り出す。


「でしたら話は早いです。当館にある本は基本的に好きに読んでもらって構いません。ただし、すべての本にロックの魔法がかかっております」


 ロック?


「読めないってことです?」

「はい。本が開かないのです。ですが、魔法ギルドのギルドカードをかざして頂けると開くようになります。ただ、開かない本もあります」


 それが魔法使いの差か。

 優秀な魔法使いは読める本が多いってことだ。


「ウチは夫婦なんですけど、1つのギルドカードで構いませんか?」

「ああ……すでに色々と聞いているのですね。構いませんよ。ただ、旦那様も奥様も大変優れた魔法使いのようですし、どちらのカードを使っても大抵の本は読めると思います。それでも読めない本があるならば制限がかけられた本でしょう」


 あ、ジュリアさんも大丈夫なのか。


「制限とは?」

「本は当然、著者がおります。その著者がこういう魔法使いには読まれたくないと希望した場合は制限をかけております。例えばですが、魔法使いの中には回復魔法は魔法じゃないという考えの者もおり、自分の本には回復魔法の使い手には読ませないという制限をかけていたりします」


 あ、俺はその人の本は読めないんだ。


「回復魔法って魔法じゃないんです?」

「魔法ですよ。でも、ここにある本は世界中から集めています。そして、何百年前の本もあります。考え方は人それぞれですし、時代が変われば価値観も変わります。著者がすでに亡くなっているとはいえ、意思は尊重しているのです」


 なるほど。


「こちらのサクヤ様はギルドカードを持っていないんですけど、読めますか?」

「読まんぞ。我は漫画を読む」


 あ、やっぱり読まないんだ。


「ご家族なら好きにしてくださって結構ですよ。それにまあ、私ごときが判別することではありません。畏れ多い……」

「そうですか。じゃあ、好きに見て回っていいんですね?」

「ええ。どうぞ。ただ、当館は朝の8時から夕方の5時までと決まっておりますのでご注意ください」


 24時間営業じゃないわけね。


「わかりました。あ、それと貸出できる本もあるって聞いたんですけど……」

「ええ、あります。本に貸出可と書いてありますのでわかりやすいと思います。それをこの受付に持ってきてもらえばギルドカードで貸し出すこともできます。ただし、1人5冊までで期限はひと月です。それまでに読めなくてもちゃんと返却をお願いします。返却し、また借りるのは問題ありませんから。とにかく、期限を守ることが大事です。ヒューマンエラーというのは必ず起こるものですので期限を過ぎることもあるでしょう。ですが、当然、罰則がありますし、悪質と判断した場合は魔法ギルドや軍に通報しますので返却期限だけは守るようにしてください」


 まあ、当然といえば当然だな。

 でも、これだけ言うってことは守らない人もいるんだろうな。


「わかりました」

「ええ。では、良き学びを」


 館長さんがそう言って座ったので俺達は奥に入っていった。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

今週の金曜に発売する本作ですが、OXさんがイラストレーターを務めてくださいました。

すでに公開中のハルトとサクヤ様の他にもジュリア、ノルン様も登場致しますのでぜひとも手に取ってイラストの方も注目していただければと思います。


よろしくお願いします!

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〉それにまあ、私ごときが判別することではありません。畏れ多い…… わかる人がちゃんと見るとどういう存在かわかるんだな
館長が普段から受付業務するわけないしハルト達のためだけに座って待ってたんだろうな もしかしたらこの日一日貸し切りかな
他にやりようがないだろうと思うのは同意だけど、それでも一応施設の方に車を何処に置けばいいかは聞いたほうが間違いないんじゃないかな。
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