第154話 買い物
「他にもあります?」
「この時期ですと、やはり冷却石ですね。そちらをお買い求めになるお客さんが多いです」
冷却石?
「どういうものですか?」
「現在、当店でも使用しておりますが、部屋が涼しくなる特殊な加工をした魔石になります」
店主はそう言うと、カウンターに置いてあるちょっと青っぽい水晶を持ってきてくれた。
「これですか?」
そういえば、あのマージェリーさんも部屋の棚にも置いてあった気がする。
「ええ。こちらは魔力を込めることで最大24時間まで使用できます。魔力が尽きてもまた魔力を込めることで永久的にご使用できる商品になります。お客様は魔法使いのようにお見受けしますし、関係ないかもしれませんが、魔法使いでない場合はお知り合いの魔法使いに頼んでください。また、当店でも有料にはなりますが、魔力を込めることも可能です」
ウチは問題ないな。
俺もジュリアさんもできるし、神様方も問題ない。
「これっていくらですか?」
「どの部屋でご使用になるかによります。部屋の広さも関係してきますし、こちらを買われるお客様の中には鍛冶屋などの暑いところでご使用されるお客様もいらっしゃいます。その際はオプションとして冷却能力を強化いたします」
「普通の部屋ですね。広さは……ここよりもちょっと狭いくらいです」
「そうしますと、特にオプションは必要ないでしょうし、金貨30枚になります」
おー、それなら今でも買える。
「ちょっと待ってくださいね……ジュリアさん、エアコンだよ。電気代がかからない」
またもやジュリアさんと内緒話をする。
「……良いと思います。特にウチは電気代が高くなりますから」
ノルン様がね……
いやまあ、サクヤ様もいるから基本的にはずっと冷房がついているんだけど。
「……今持っているお金で買えるけど、お試しで買ってもいいかな?」
「……はい。それで良ければもう1つ買いましょう」
新居はリビングと寝室があるので2つ必要なのだ。
「あのー、手持ちがあるんでとりあえず、1つ欲しいんですけど、在庫はあります?」
相談が終わったので店主に聞く。
「もちろんでございます。すぐに持ってきましょう」
「あ、それと確認なんですけど、冬用の暖房ってあるんです?」
「そういう魔道具もありますよ。ただ、シーズンではないので在庫の方がございません。申し訳ございませんが、また冬前にでもいらしてください」
まあ、夏に暖房は売ってないか。
売れないもん。
でも、良いことが聞けたわ。
冬前に買いに来れば暖房代も浮く。
「じゃあ、冷却石を1つください」
そう言って、金貨30枚を取り出し、店主に渡す。
「ありがとうございます。では、少々、お待ちください。奥から取ってきますので」
店主は深々と頭を下げ、奥の部屋に入っていった。
「魔道具ってすごいね」
「本当ですよね。良い買い物です、また冬前に来ましょう」
俺とジュリアさんが頷いていると、店主が透明な水晶を持って戻ってくる。
「お待たせしました。こちらが冷却石になります。こちらは魔力を込められていない状態ですのでこのような色ですが、魔力を込めれば青くなります。ですので、透明になったら魔力が切れ、冷房機能がなくなっているということです。その際は再度、魔力を込めてください」
「わかりました……見て、見て。綺麗じゃない?」
冷却石を受け取ると、ジュリアさんに見せる。
「本当ですね。インテリアとしても良いと思います」
ねー。
「他にも紹介いたしましょうか?」
店主さんが聞いてくる。
「お願いします」
「でしたら、こちらはどうでしょう? お客様方は大変仲の良いご夫婦だと思いますので……」
俺達がその後も店主から商品を聞いていった。
店を出た後も他の店に回って話を聞いたり、商品を見て回る。
魔道具というのは一言でくくられているが様々な用途があり、冷却石のような日常で使えるものから火が出る杖などの多くの商品があった。
中には怪しいものもあったが、どれも魅力的で目移りしてしまいそうになる。
そうやって店を巡っていると、夕方になったのでマージェリーさんの家に戻って車を置き、水の国の別荘に転移した。
そして、夕食を外食で済ませると、別荘でまったりと過ごす。
「涼しいねー」
「本当ですよね。これなら冷房はいらないと思います」
俺達は買った冷却石に魔力を込め、テーブルの上に置いたのだが、10秒もしないうちに辺りが涼しくなったのだ。
「風呂上がりにええの」
「良いものを買ったわねー」
サクヤ様もタマヒメ様も満足そうに涼んでいる。
「外に持ち出すと組合が飛んできそうですけど、部屋の中で使う分には大丈夫でしょう。魔石が売れたお金でもう1つ買います」
「買え、買え」
「お金持ちねー」
こっちの世界だけね。
しかも、もらい物の魔石という……
「ハルトさん、明日は図書館に行ってみませんか?」
ジュリアさんが誘ってきた。
「いいね。ちょっと楽しみなんだよ」
「私もです」
ねー。
「真面目じゃの……」
「図書館の何が楽しいのかしら? 私は行かない。ハルトの家で電気代を下げる作業をしているわ」
訳:この冷却石を持って、ノルンとゲームしてる。
「サクヤ様はどうされます? 俺達は2人でも行きますけど」
「いや、転移のことがあるし、我も行こう。適当に本を読んでる」
訳:転移で漫画を持ってきて、そっちを読む。
「わかりました。じゃあ、お願いします」
「わかった」
「楽しみですねー」
ねー。
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