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第151話 魔導帝国


 門をくぐり、町の中に入ると、確かにこれまで見てきた町並みとは大きく違っていた。

 舗装は均一された石材で舗装されているし、建物も木材ではなく、コンクリートみたいにしっかりとした素材で建てられている。

 中には3階や5階建ての建物もあり、かなり近代に近い町並みだ。


「ここが5層になる」


 ん?


「層?」

「この町は円形なんだが、1から5層まで町が区切られているのだ。真ん中にある議会なんかがある政治の中枢が1層でそれを取り囲むように2層、3層と続いている。そして、全員がどこにでも行けるわけではない」


 あー……さっき言っていた移動が面倒というのはそういうことか。


「2層、3層は優れた魔法使いしか入れないってことですか?」

「そういうことだ。この5層は誰でも入れる。4層は魔法使いなら優劣なく入れる。3層は優れた魔法使いのみ入れる。2層はさらにその上だな」


 わかりやすく中央に行けば行くほど優秀な魔法使いしか入れないんだ。


「検問でもあるんですか?」

「あるな。それと上に列車が走っているだろ?」


 確かにモノレールみたいなものが走っている。


「火の国で乗りましたよ」

「あの国に提供しているな。まあ、同じものだ。あの列車で各層に行けるんだが、ギルドカードの提示が必要になり、いちいち審査だ。な? 面倒だろ?」


 確かに面倒だ。


「ちょっと嫌ですね」

「この町はあらゆるところでそういう審査がある」

「宿屋もですっけ?」


 ジェーンさんが友達と仲違いをした話の例に出てきた。


「そうだ。それで料金が決まる。国からそういう補助が出ているんだよ」

「他の店もです?」

「そうだな。飲食店なんかもそうだ。ただ、魔道具は違うぞ? あれは輸出品だからそういう補助はない」


 魔道具は安く買えないわけだ。


「なるほど……」

「そういうわけでこの軍の車で来たわけだ。これはそんなの関係ないからな。検問をしているのも軍だし、スルーだ」


 この車に乗っていればそういう煩わしいことはないんだ。


「楽でいいですね」

「だな。では、進みながら町の説明をしよう。まずここは5層。さっきも言ったが誰でも入れる。そのため、輸出品である魔道具の店が多い。他所から来る客の大半がここに集まるから住居は少ないが、その分、飲食店や宿屋も多い」

「魔道具って普通に買えるんですか?」

「買えるぞ。ちょっと割高だがな」


 火の国のハワードさんが金貨300枚で魔法のカバンを買ったって言ってたしな。


「あとで見に行こっか」


 後部座席のジュリアさんに声をかける。


「そうですね。気になります」


 ジュリアさんが笑顔で頷いた。


「次にだが、4層に入るぞ」


 マージェリーさんは中央に向けて、まっすぐ走っているようなのですぐに4層みたいだ。


「あれが検問です?」


 4層にも外壁があり、門がある。

 そこには数人の兵士が見える。


「ああ。このように層ごとに壁で覆われているから門をくぐらないと中には入れない。そして、当然のように検問の兵士がいるわけだ。まあ、スルーだな」


 マージェリーさんはスピードを落とさずに門を抜けた。

 兵士も特に止める素振りはなかった。


「あっさりですね」

「私は大佐だからな。大佐の車は止めないだろう」


 上官の車は止めれないわな。


「それもそうですね。ここが4層ですか……」


 町並み自体は5層と変わらない。

 ただ、歩いている人が減っている。


「ここがこの国の住民が一番多い層だな。そのこともあって日用品なんかを売っている店が多い。もちろん、飲食店や宿もある。あと魔法ギルドがある」


 住宅街だな。


「魔法ギルドがいっぱいあるって聞きましたけど?」

「あるな。普通は1つの町に1つだろう? この町は軽く10を超えている」


 そんなに必要になるくらい仕事も多いわけだ。


「まあ、魔法使いの町ですもんね」

「そういうことだな。観光や勉強に来た外の魔法使いが拠点にするのがこの層だ。さて、次は3層になる」


 またもや門を抜けたのだが、当然、兵士達はスルーだ。


「3層も町並み自体は一緒ですね」

「議会がある1層以外はどこも一緒だぞ。悪いが、この町に観光名所なんてほとんどない。魔法を学ぶところなんだ」


 学園都市かな?


「住みやすそうではありますけどね」

「魔法技術が発展しているからな。あの鬱陶しい審査さえなければとても住みやすい。まあ、それはいい。さっき観光名所がほとんどないと言ったが、唯一の観光名所がこの3層にある図書館だ。世界中の魔法の本を集めた世界最大の図書館だな」


 この層にあるのか。


「行ってみたいですね」

「魔法使いなら一度は行くべきだ。それと図書館が観光名所と言っている時点で察してくれ」


 もうわかっている。

 この町は魔法使いのための町で学問や技術の町なんだ。

 観光地じゃない。


「十分ですよ。魔法は好きですから」

「それはいいことだ。さて、ちょっと止まるぞ」


 マージェリーさんはそう言って、停車させた。


「どうしました?」

「この先は2層になる。優れた魔法使い達が住んでおり、学校や実験施設なんかがある。そして、1層は政治の場だな。要はこの先は見ても面白くない……というか、どんなに優れた魔法使いでもほとんど見ることができない」


 おおっぴらにするものじゃないしな。

 ましてや、余所者の観光客ならなおさらだ。


「となると、5層から3層までってことですね?」

「そうなる。この車を使っていいから好きに楽しんでくれ」


 え?


「いいんですか?」

「ああ。車の運転の仕方を教えよう」

「ありがとうございます」


 俺とマージェリーさんは車から降りると、位置を入れ替える。

 そして、運転の仕方を教えてもらったのだが、普通に免許を持っている俺からしたらそこまで難しくなかったのですぐに覚えることができた。


お読み頂き、ありがとうございます。

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