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第147話 証人


 俺達は火の国でまったりと過ごし、一泊すると、健診があるため、午前中には家に戻る。

 なお、やっぱりノルン様がおり、ゲームをしていた。


「じゃあ、俺達は健診に行ってきますので」

「わかった」

「ジュリア、パソコンを借りるわよ」


 タマヒメ様はアニメを見るらしい。


「ええ、どうぞ」


 俺達はそのまま家を出ると、共に組合に向かい、車を駐車場に置く。

 そして、ビルに入ると、2階に上がり、山中さんがいる受付に向かった。


「どうもー」

「こんにちは」

「あら、ハルト君とジュリアちゃん。今日も一緒なのね。相変わらず、仲が良くて私も嬉しいわ」


 山中さんは上機嫌だ。

 多分、旦那さんと仲直りし、良い感じなんだろう。


「あのー、山中さん、ちょっといいですか?」

「んー? なーに?」


 ジュリアさんと顔を見合わせると、ジュリアさんが頷いた。


「あのですね、俺達、結婚することにしました」

「あらー、おめでとー! なんとなく、そうじゃないかと思ってたわー」


 まあ、この前、1階の喫茶店で浅井さんと話をしていた時に上から3人で覗いていたしな。


「色々と気にかけていただいたり、仲介に入っていただき、ありがとうございました」

「全然よ。いやー、めでたいわね。あ、村田君と秋山さんを呼ぶわ」


 山中さんがそう言って、内線をかける。

 すると、すぐにエレベーターから秋山さんが降りてきて、階段から村田さんが現れた。

 村田さんはまだ階段で頑張っているらしい。


「こんにちは」

「結婚するんだって?」

「やっぱりこの間の当主会合はそういう話だったんだ」


 食い付きがすごいな……


「ええ。ジュリアさんから色よい返事をもらえましたので浅井さんに縁談を受ける旨を伝えたんです」

「へー……何にせよ、おめでとう」

「おめでとう。私達もあなた達が上手くいって嬉しいわ」


 喜んでもらえるとありがたい。


「それでちょっと御二人にお願いがあるんですけど、いいですか?」

「ん?」

「何?」


 2人が同時に首を傾げた。


「婚姻届の証人になってもらえませんかね?」

「何それ?」

「証人なんているの?」


 知らんのかい……


「えーっと、ここに2人程の証明がいるんですよ」


 婚姻届を取り出し、2人に見せる。


「へー……結婚を意識したことがなかったから知らなかった」

「私もね。というか、私達でいいの?」


 普通は誰に頼むんだろうか?

 恩師? 上司?


「ええ、昔からお世話になっていますし、お願いしたいです」

「相談にも乗ってくれましたし、お願いします」


 俺とジュリアさんがお願いすると、2人が顔を見合わせる。


「まあ、いいけど」

「仲介したのはウチだしね。いわば仲人」


 仲人ではないかなー……


「2人共、こういうのは喜んで受けるものよ。別に何かをするわけでもないし、責任を負うものでもない。本当に書類上のことだけだから」


 山中さんが苦笑いを浮かべた。


「いや、断るつもりはないよ」

「そうそう。ちなみに、山中さんは誰に頼んだわけ?」


 あ、俺も気になる。


「親。別に誰でもいいからね」


 親でもいいのか……

 俺はおらんけど。


「へー……あ、ちょっと待って。印鑑を取ってくるよ」

「あ、私もだわ」


 2人はエレベーターに乗り込み、上に戻っていった。


「山中さん、すみません。山中さんに頼みたかったんですけど……」


 ジュリアさんが謝罪する。


「いいの、いいの。わかってるから」


 山中さんが笑顔で手を振った。

 そのまま待っていると、2人が戻ってきて、署名と印鑑を押してくれる。


「こんなものでいいかしら?」


 最後に署名した秋山さんが婚姻届を渡してきた。


「これで大丈夫だよね?」

「ええ。あと役所に提出するだけです。それで岩見樹莉愛です」


 ジュリアさんが自分の名前のところを指差す。


「ふふっ……そうだね」


 多分、子供も似たような感じになる。

 何しろ、ノルンソードと名付けた御方が名付け親になってくれるから。


「あー、盛り上がっているところ悪いけど、健診にしようか」

「そうね。上に行きましょう」

「「あ、はい」」


 俺達はエレベーターに乗り込み、それぞれ4階と5階に上がる。

 そして、4階で降りた俺と村田さんはいつもの診察室に入り、健診を始めた。


「いやー、めでたいね」

「ありがとうございます」

「こう言ったらなんだけど、山中さんが結婚した時よりも嬉しいよ」


 そういうことは言わない方が良いと思うな。

 まあ、同い年で昔から仲良しさんだから思うところはあるんだろうけど。

 いや、もしかしたら山中さんのことが好きだったのかもしれない。


「ねえねえ、何か変なことを考えてない?」

「いえいえ。祝ってもらって嬉しいですよ」

「そうかな……まあいいや。この前の浅井さんとの話はそれ?」


 見てたもんな。

 帰りも見上げたら普通に3人で見てたし。

 

「そうですね。大事なことですからちゃんと会って話をしたんです」

「ちょっと心配してたよ。全然、和やかそうじゃなかったし」


 それはまあねー。


「向こうも思うところがあるんでしょ。俺は岩見ですから。それにこちらも譲れないところは譲れませんからああいう空気にもなります」

「まだそういうしこりはあるわけね」


 向こうは上の世代が残っているからな。


「これからはなくなると思いますよ」

「君達の子供世代はそうだろうね」


 もう岩見の悪口も浅井の悪口も言えなくなる。

 だって、俺達の子供はそのどっちでもあるのだから。


「まあ、まだ子供はいませんが……」


 今後、その辺のことも考えないといけない。

 とはいえ、ウチは楽な方だ。

 俺は一人っ子だし、ジュリアさんも末っ子で子供の面倒を見たことはないが、ウチには1000年以上も子供の面倒を見てきたサクヤ様がいるし。

 多分、タマヒメ様も見てくださるだろう。


「それはおいおいでしょ。いつ結婚するの?」

「来月末辺りですね。その辺りで新居に引っ越します。もう部屋も決めました」

「早いねー。君、本当に決めるまでは時間がかかるけど、決めたら早いね」


 お見合いで半年間もぐだったからね……


「いいじゃないですか、それは……あ、それとちょっと相談があるんですけど、いいですか?」

「ん? 何?」

「新婚旅行で東京に行きたいんですよ」

「え? 東京? もっとないの? 沖縄とか北海道とかさ。昔だったら箱根だけど」


 普通は国内だったらその辺りだろうな。


「ジュリアさんが行きたがってるんですよ。ほら、あの子はここ生まれ、ここ育ちで一度も都会の方に行ったことがないですから」

「あー、まあねー……それで東京ねー。そういう理由だったら許可は下りると思うよ」


 さすがに新婚旅行なら許可が出る。

 これが海外なら多分、無理だけど。


「じゃあ、お願いします」

「いいよ。日程とかが決まったら教えて。こっちで申請しておくから」

「ありがとうございます」

「じゃあ、腕を出してねー」


 注射か……

 俺、人生でどれだけ血を抜かれているんだろうか?


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

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娘の名前絶対に「岩見のるん」とかになるぞコレ・・・
覗いてたのは神様達ではなかったか ツンデレ猫を捨てるなんてとんでもない!
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