第146話 戦いを見たかったな
「シーサーペントの魔石らしいです……」
「これが……確かに大きさ、質からしてもとんでもない魔物の魔石だということはわかる。ドラゴンより上だ」
すごいんだ……
まあ、何もわからない俺でもこの大きさは普通じゃないって思う。
「私達ももらっただけなので真実はわかりません。ただ、相手が知性もあり、しゃべることもできる竜種のリヴァイアサンなので……」
「嘘とは思えんな。私もそう思う」
ぶっちゃけ、リヴァイアサンも伝説の化け物だし。
普通に湖にいるからその意識が薄いだけだ。
「相談とはこの魔石の扱いかね?」
「はい。どうしたものかと……持て余します。陛下が買い取ってくれませんかね?」
ドラゴンの魔石も買い取ってくれたし、これも買い取ってくれないかな?
「ふむ……私は貴族だし、陛下に顔が利く。だからそういう提案をすることはできるな」
カーティスさんってやっぱりお偉いさんだわ。
「でも?」
こういう言い方をするってことは否定だ。
「これを払えるだけの予算はないだろう」
王様だからって国の金を好きに使えるわけではないのか。
「あの……ざっとした見積もりでいいんですけど、いくらくらいします?」
「金貨1000枚……いや、もっとか?」
ひえー。
「そんなにします?」
「この大きさ、質からしても最低そのくらいだ。伝説のシーサーペントの魔石ということを考慮すればもっとかもしれん」
プレミアか……
「陛下は買い取れませんか?」
「出せて金貨100枚だろうな。それなら他所で売った方が良い。それこそ魔導帝国ならもっと高値で売れる」
そっちが良いのか。
「騒ぎになりません?」
「なるな。まずこれほどの魔石は過去に例がないくらいに珍しい。そして、伝説と呼ばれている海の悪魔シーサーペントの魔石なら魔導帝国で大ニュースに……あ、ということはシーサーペントはもういないのか……」
そうなりますね。
「リヴァイアサンが狩ったらしいので……」
多分、食べたのかな?
「うーむ、リヴァイアサンが水の国を守るために倒したか、別の理由か」
「多分、別の理由かと。北の海で狩ったって言ってましたので」
遠征したってことだ。
「なるほど……しかし、伝説もリヴァイアサンには勝てなかったわけか……恐ろしいな。これほどの魔石を持つ魔物を倒せるだけの力をあの竜は持っていることになる」
津波も防げますしね。
「ジュリアさん、どんな感じだった? 俺は敵意を感じなかったからよくわからなかったけど」
「私もです。それに間近でリヴァイアサンを見ましたけど、まったく魔力を感じませんでした」
そういえば、そう言ってたな。
「隠しているのだろう。私達も魔力を隠すことができる。それほどの力を持ち、知性もあるならそういうこともできよう」
そうなんだ……
「まあ、リヴァイアサンの強さはどうでもよい。あれは人に害意を向けるものではないからな」
サクヤ様の言う通りだ。
「それもそうですね。実際、俺達を運んでくれましたし、詫びで魔石までくれました。今の問題はその詫びの扱いです」
「そうだな……その辺も知り合いに先に話しておこう。となると、ある程度の地位を持った者か……」
まーたお偉いさんだ。
別にいいけど。
「お願いします。持て余しますし、譲る意思はあります」
高く買い取ってくれ。
「わかった。その辺も伝えておこう。出発はいつ頃にする?」
「今日にでも出発します。到着は来週ですね」
まあ、実際は今日の夜は火の国で泊まりだし、明日からかな?
「来週か……まあ、わかった。知っているかもしれんが、魔導帝国は領土が小さい。唯一の都市は国境のすぐそばだから国境で通行証とギルドカードを見せてくれればいい。そうしたら迎えが来るはずだ」
また出迎えか。
まあ、知らない国だし、ありがたいな。
「わかりました。では、早速、向かいます」
「気を付けてな」
「はい。色々とありがとうございました」
カーティスさんが倉庫から出て、研究室に帰っていったので見送った。
そして、倉庫に戻り、魔石を見る。
「やっぱり大事みたいだね」
「この大きさは仕方がないと思います」
だよねー。
「まあ、本当にもらっただけじゃし、ディーネの名前を出しつつ、運が良かったんだっていうことをアピールすれば問題なかろう」
「そうしますか……ジュリアさん、明日の夜から出発でもいい?」
「はい。一緒に行きましょう」
「これまでよりも遠いから一日にかける時間はちょっとだけ多くなるけど、大丈夫?」
なんならサクヤ様と俺でも行ける。
「大丈夫です。色々と話し合うことも多いですし、ちょうどいいじゃないですか」
確かにそれもそうか。
どうせ仕事が終わったら合流してどちらかの家で話し合いをしているか遊んでいるかで一緒にいることには変わりない。
「じゃあ、そうしよっか」
「はい。今日はこれからどうします?」
用事は済んだな……
「タマヒメ様と合流して、火の国に行こうか。それで温泉に入りながらゆっくりしよう」
「そうですね。明日は朝から健診ですし、あっちの別荘で過ごしましょうか」
「うん。サクヤ様、お願いします」
「はいよ」
俺達はサクヤ様の転移で水の国の別荘に飛び、タマヒメ様と合流する。
そして、そのまま火の国の別荘に飛ぶと、眺めや温泉を楽しんだりしながらゆっくりと過ごしていった。
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