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第144話 良い人ばっかりだ


 魔法ギルドを出た俺達はカーティスさんの研究室に向かう。


「いるかなー?」

「どうでしょうね? いつもあそこにいる気がしますけど、忙しい方ではありそうですし」


 貴族のお偉いさんだもんねー。


「まあ、おらんかったら本邸の方に行けばいいじゃろ。城や仕事じゃなかったらどっちかにはおるじゃろ」

「それもそうですね」


 俺達はそのまま歩いていくと、カーティスさんの研究室に到着した。


「カーティスさーん、おられますー?」


 玄関の扉をドンドンと叩き、声をかける。

 すると、中からがさがさという音がした。


「いるみたい」

「ですね」


 待っていると、扉が開き、カーティスさんが顔を出す。


「おっ! 戻ってきたのか」

「ええ。水の国も良かったです」

「なら良かった。まあ、入ってくれ」


 俺達は研究室に入ると、テーブルにつく。

 カーティスさんもまた対面に座った。


「水の国はどうだった?」

「すごく良かったですね。海は綺麗でしたし、ご飯も美味しかったです。それに巫女様や教会にはとても良くしてもらいました」

「あそこは人気だし、サービスも良いからな。しかし、まだシーズンなのに帰るのが早いな。あとひと月は滞在するのかと思った」


 滞在してますね。

 なんなら昨日も泊まった。

 そして、今日は火の国の別荘に泊まる。


「魔導帝国の方に行ってみようかと思っているんですよ」

「魔導帝国か……確かに君達なら歓迎されるだろうな」


 ここは皆がそう言う。


「魔法使い第一主義なんですよね?」

「ああ、そういう国だ。前に私が外交官を務めていたと言っただろう? その一つの理由が私が魔法使いだったからだ。隣国であり、世界中に影響力を持つ魔導帝国のことを考えて、この国の外交官は魔法使いが務めることになっている」


 そこまで大事なんだな。


「正直なことを言いますと、あまり考え方が好きになれないんですよ」

「魔法使い至上主義だからな。昔は魔法使いが迫害されていた歴史もあるんだ」


 え?


「そうなんです?」

「詳しくは現地で聞くと良い。あの国の始まりはそういった魔法使いが集まってできたんだよ」


 へー……

 なんか歴史がありそうだな。


「行った方が良いと思います?」

「魔法使いなら行っても良いと思う。君達は道楽の旅だろう? じゃあ、行ってもいいんじゃないか? 嫌ならさっさと帰って別のところに行けば良かろう」


 まあ、そうなんだよね。


「じゃあ、ちょっと見てきます」

「うむ。ここからなら馬車で20日といったところだな」


 遠いな……とはいえ、俺達は南にあるルイナの町から行けるから馬車で15日だろう。

 それならちょっと1日で進む距離を伸ばせば1週間で行ける。


「わかりました。まあ、これまでのようにちょっと見て、帰ってくると思います。あのー、変なことを頼みますけど、推薦状みたいなものを書いてもらえませんか?」

「推薦状? なんでだ?」

「差別的っていうのがちょっと怖くて」


 これから結婚しようっていうのに亀裂は嫌だ。


「いや、通行証がそれだ。ウチの国がそちらの国に行っても問題ないと認めているものだからな」


 あ、そうなんだ。

 あの通行証ってすごいんだな。


「なるほど。じゃあ、あれを見せればいいんですね?」

「そういうことだな……まあ、不安ならこちらから知り合いに声でもかけておこう」


 カーティスさんがそう言って腕を組む。


「知り合いですか?」

「ああ。私もあそこに何度も行っているし、若い頃は魔法を学ぶために数年ほど滞在したこともあるから知り合いは少なからずいる」


 さすがはエリートだ。

 研究発表をしていたっていうのも伊達じゃないらしい。


「お願いします」

「連絡しておく。まあ、魔法を学ぶだけならあそこ以上のところはない。魔法使いなら拠点をあそこに移す者も多いぞ」

「いやー、さっきも言いましたけど、考え方がね……それに倉庫を……あ、そうだ。倉庫ってどうなってます?」


 大事なのはそれ。


「ああ、完成したぞ。これから見に行くか?」

「ええ。ぜひ。あ、その前に本をお返ししますね」

「そういえば、そうだったな」


 俺とジュリアさんは手分けして借りていた本を元の本棚に戻していく。


「図書館があるって聞きましたけど、すごいんですか?」

「世界中の魔法の本が集まっていると言われている。そこの本棚には私の写本も置いてあるぞ」


 すごいな、それ。


「好きに見れるんです?」

「それも魔法使いのランクによる。君なら最高ランクまで読めるだろうな」


 あー……なんか嫌だなー……

 夫婦である俺達は一組扱いらしいから関係ないんだろうけど、そこでジュリアさんは読めずに俺だけ読めるってことになるわけだ。

 そりゃヒビが入るわけだわ。


 俺達は本棚に本を戻し終えると、カーティスさんと共に研究室を出た。


「こっちだ。そんなに離れてはいない」


 そう言ってカーティスさんが歩いていったのでついていく。

 数分歩くと、同じ住宅街でカーティスさんが足を止めた。

 そこには新しめの建物があり、両隣は普通の民家だ。


「これですか?」

「ああ。要望通りの広さの倉庫だ。金額は言っていた通りで金貨で50枚だな」


 ほー……


「ありがとうございます」

「鍵は防犯を考えて特殊なものにした。ウチに余っていた魔導帝国から仕入れた魔法の鍵だな」


 出た、魔導帝国。

 本当にすごいんだな。


「えーっと、おいくらでしょうか?」

「金はいい。本当に余っていたやつで邪魔なだけだからちょうどいい」

「ありがとうございます」


 いやー、さすがカーティスさんだわ。

 良い人すぎて、俺の中のお貴族様のイメージがガラッと変わった。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

私が連載している別作品である『35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい』のコミカライズが連載開始となりました。

ぜひとも読んでいただければと思います(↓にリンク)


本作共々、よろしくお願いします!

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