第138話 内見
アパートに到着すると、すぐに店員さんもやってくる。
「こちらの203号室になります。どうぞ」
俺達は店員さんに案内され、玄関の扉を開けた。
中に階段があるタイプなので靴を脱ぎ、階段を昇っていく。
そして、2階の部屋に入ると、2人で部屋の間取りを見ていく。
部屋はリビングに面した対面式キッチンがあり、さらにもう一部屋付いている。
広さもそこそこあり、少なくとも、現在の俺の部屋よりは広い。
「あそこにテレビを置けばここから見れるね」
俺達はキッチンからリビングを見る。
「そうですね。良いと思います」
「広さはどう?」
「冷蔵庫や棚、炊飯器に電子レンジ……その辺りも十分に置けますし」
確かに結構広い。
俺達はリビングを見て、トイレやお風呂なんかを見ていく。
そして、最後にもう1つの部屋を見る。
「8畳くらいかな?」
「そうですね。それくらいだと思います」
やっぱり俺の部屋より広い。
それにウォーキングクローゼットもある。
「寝室かな?」
「ですね。一通り見て回りましたけど、どうです?」
「悪くないと思う。というか、これで5万2千円は良いね」
「私もそう思います。ちなみに、敷金は2ヶ月分で礼金はなしです」
そんなもんか。
「次の部屋を見て、微妙だったらここで決めても良いと思う」
「そうですね」
やっぱりジュリアさんはここを気に入っているっぽいな。
「いかがでしょうか?」
店員さんが聞いてくる。
「良いと思います」
「ええ。ただもう一件も見たいです」
「それがよろしいかと思います。では、参りましょう」
俺達は部屋を出ると、駐車場まで乗り込み、次の部屋に向かう。
「どうでした?」
助手席に座っているジュリアさんが改めて聞いてきた。
「俺達を含め、サクヤ様、タマヒメ様、ノルン様の5人がいても十分なくらいな広さはあったね」
こういうことは店員さんの前では話せない。
「でしたね。キッチンだけでなく、リビングも広かったです」
「次の部屋次第だけど、正直、9割くらいはさっきの部屋に傾いているかなー。なんとなく、生活を想像してみると、良かった」
仕事から帰った時や休日の生活だ。
あそこにジュリアさんや神様たちがいても十分余裕がある。
「わかります。楽しそうですし、落ち着いた生活が送れそうです」
「ねー。まあ、次も見てみよう」
「はい」
そのまま車を走らせていくと、次のアパートに向かった。
次のアパートも先程と同様にジュリアさんと見ていく。
そこまで古いわけでもないし、内装は十分に綺麗だったので悪くはなかった。
これで4万4千円なら相当安いし、こちらも落ち着いた生活を送れるだろう。
「どう?」
ジュリアさんに聞いてみる。
「悪くないと思います。立地も日当たりも良いですし、部屋も住みやすいですね」
最初の悪くないで答えは出てるな。
「だね」
本当に悪くないんだ。
ここでも十分に楽しくて落ち着いた生活はできる。
「いかがでしょう? 他の物件も見てみますか?」
店員さんが聞いてくる。
「いえ、十分です」
「わかりました。では、戻りましょう」
俺達はアパートを出ると、車に乗り込み、店に戻ることにした。
「正直、どう? 俺は8千円の差以上のものを最初の部屋に感じたけど」
「私もです。ネットで見た時から良いなと思ってましたが、実際に見ても良いなと思いました」
俺もそう。
「あそこに決める?」
「良いと思います」
じゃあ、決めてしまうか。
「となると、いつから住むかだね……」
「タマヒメ様とサクヤヒメ様が引越しを手伝ってくれるっておっしゃっていますし、時間はかかりませんよね?」
普通は棚にしても中身を取り出して梱包したりしないといけない。
でも、転移があるからそのまま送ればいい。
「お互いの家のものを取捨選択し、新しく買うものを買うくらいかな? もちろん、退去のための掃除とかもあるけど、そこまで時間はかからないと思う」
俺が東京からこっちに戻って来た時は大変だったし、金もかかったが、今回はそこまでだろう。
「引っ越し期間を考えて、契約を8月からにしますか?」
今は7月の中旬だし、そんなものかな?
9月までは時間もかからないだろうし。
「だね。実際に住むのは8月の後半って感じかな」
「タイミング的にも良いですね。婚姻届を出すのも8月の26日ですし」
確かにね。
「じゃあ、そんな感じでいこうか」
「はい」
俺達は不動産屋に戻ると、1LDKの部屋に決めた旨を伝え、契約を進めていった。
そして、8月から入居できるようになったので午後からは家具屋や電気屋を回り、新居のことを話し合っていく。
「基本的にはお互いの家にあるものを引き続き使う感じでいいね? 被るものは処分って感じで」
もっともほとんどジュリアさんの家あるものを使う感じだ。
まあ、一人暮らし歴が半年のジュリアさんの家にあるものの方が新しいから自然とそうなる。
「そうですね。ウチのテレビをリビングに置いて、ハルトさんの家のテレビが寝室ですね」
「うん。ノルン様の圧があったもんね……」
昨日、仕事が終わって家に帰ったらまだノルン様がゲームをしていた。
帰り際にテレビが2台になりますねーって言ってた。
ノルン様は俺達に気を遣って、俺達がいる時は基本的にゲームをせずにどこかに帰るのだ。
「良いと思いますよ。ゲーム機もソフトも増えましたね」
増えたねー。
「まあね。また一緒にやろうよ」
「はい」
俺達はその後も店を回ると、家に帰った。
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