第136話 サクヤ・タマ「イチャつくなー……」
「ご家族は何て言ってた?」
「おめでとう、くらいですね。まあ、お見合いをしていることもお付き合いをしていることも知っていますしね。母に関しては事前に知っていたようです」
ゴルフから帰って、報告したのかな?
「俺も日曜に浅井さんに会って話をしたからね」
「はい。だから問題ありません。父もお前達の好きなようにしろって言ってました」
「俺も言われた。まあ、そうしよっか」
「はい。そうしましょう」
となると……
「えーっとね、これが婚姻届」
カバンから書類を取り出し、テーブルに置いた。
「あ、早いですね」
「朝、役所でこれをもらってから出社したんだよ」
すぐにもらえた。
「へー……」
ジュリアさんがまじまじと見る。
「これを書くんだけど、証人を村田さんと秋山さんにお願いしようかなって思ってるんだよ」
婚姻届には2人の証人の署名がいる。
「あー、良いですね。組合が間に入ってくれたわけですし、ぴったりです……あれ? 山中さんは?」
「それねー……最初に一番付き合いが長くて既婚者の山中さんに頼もうと思ったんだけど、そうすると、もう1人はどっちってなる」
3人ならぴったりなんだが。
「なりますね……」
なっちゃうんだなー。
「だから相談にも乗ってくれ、主治医みたいな2人に頼もうと思って」
「それが角が立たない気がしますね」
そう思った。
「そういうわけで来週くらいに健診でしょ? その時にでも頼もうよ」
「良いですね。じゃあ、書いてしまいます」
ジュリアさんがペンを取り出し、婚姻届に署名していく。
「それでさー、提出はどうする? 新居に引っ越してからでもいいし、せっかくだし、日にちを選ぶ?」
「日にちですか? 大安吉日?」
まあ、それもあるかもけどさ。
「いや、記念日だからさ。良い感じの日にちにするとか」
「じゃあ、来月の26日にします?」
「お見合いした日?」
「そうです」
よー覚えてんな。
俺も覚えてるけど。
何しろ、ジュリアさんは気温が35°を超えている日に暑そうな和服で来たから。
「じゃあ、そこで出そうか」
「はい。あ、書き終えましたよ」
ジュリアさんがそう言うので婚姻届けを見る。
「なんか良いね」
ただ、すげー【浅井樹莉愛】が目立つ。
これが【岩見樹莉愛】になるのか……いや、インパクト的にはたいして変わらんな。
「ハルトさんも書いてくださいよー」
「書く、書く」
俺も婚姻届に書き込んでいった。
「……ちなみに、小学校の時、習字でものすごい苦労しました」
「ふふっ……」
笑わせないで。
「やめて」
「気になっているみたいでしたので」
樹莉愛が目立つんだよ。
「カタカナで書けばいいのに」
「先生にそう言われましたね」
やっぱり……
いや、変な名前じゃないんだけどね。
「あ、それと今週、水の国のギルドに行って、配達の依頼を受けようよ」
「あー、そうですね。フロック王国の王都に行きますし、良いと思います。ジェーンさんが手紙を届けてほしいって言ってましたし」
チェスターさんの妹さんね。
確かに帰る時は寄ってと言われていた。
「そうそう。それで来週にフロック王国の王都かな」
健診の後にでも行けばいいや。
「そうしましょうか」
「あ、書けたよ」
婚姻届の自分の欄は書き終えた。
あとは証人を書くだけだ。
「見せてくださいよー」
ジュリアさんが楽しそうに婚姻届を取って、見始める。
「良いよね?」
「良いですね」
うんうん。
「あ、指輪はどうする?」
「うーん、もうありますからねー。しかも、とんでもなく御利益があるのが」
ジュリアさんは婚姻届を置くと、右手をテーブルに置いた。
ジュリアさんの綺麗な手の薬指には指輪がはめられている。
「ノルン様からもらったものだしね」
俺もテーブルに右手を置いた。
もちろん、俺の薬指にも指輪がはめられている。
「これをそのまま左手の薬指に着ければよくないですか?」
「それもそうだね」
どれだけ金を出そうと、ノルン様からもらった指輪の方がありがたいに決まっている。
「あまりお金をかけない方向が良いと思います。私は夢見る乙女ではないですし、楽しいことは他にいっぱいあります」
現在進行形で新婚旅行を楽しんでるしねー。
異世界だけど。
あ、でも、ジュリアさんは東京に行ってみたいって言ってたな。
その辺も村田さんに相談してみようかな。
「異世界で豪遊しようか。あっちではお金持ちだし、ノルン様のおかげで教会が接待してくれる」
すでに別荘を2つももらっている。
「はい。シーサーペントの魔石がありますしね」
それねー……
「俺、シーサーペントって調べたんだけど、でっかいウミヘビというか竜だよね?」
「そういうUMAですね。あっちの世界ではどうなのかはわかりませんが、ただの海の魔物ではないでしょう」
リヴァイアサンが自慢げにくれたからなー。
「陛下が買い取ってくれないかな?」
「カーティスさんに相談でしょうね……まあ、素直に話したら良いんじゃないでしょうか?」
「リヴァイアサンに侘びでもらったって?」
すごい話だぞ。
「シーサーペントハンターの称号より良いんじゃないです? ドラゴンライダーの方が良いじゃないですか」
まあねー。
「そうしよっか。お金が貯まったら魔法のカバンを買いたいね」
「そうですね。私達はサクヤ様やタマヒメ様の転移に頼りきりですもんね」
おかげでこの前のクルージングの時に何も持っていかなかった。
「魔導帝国で色々見ようか。新居で使えるかもよ?」
「それは良いですね」
俺達はその後も今後のことを話し合っていった。
こうやって将来のことを2人で話し合うのはとても楽しいことなんだなって思った。
ただ、一言も発せず、ひたすら気配を消していたウチと浅井の神様方が気になった……
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