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第132話 7月7日7時7分


 リヴァイアサンさんの背で優雅に進んでいると、別荘が肉眼でもはっきり見えてきた。


「あ、サクヤヒメ様です……あれ? タマヒメ様は?」


 うーん……


「顔だけ出してるね」

「あ、ホントですね。砂遊びでしたか」


 楽しんでるなー。


 俺達がどんどんと近づいていくと、サクヤ様がこちらに気付き、ガン見してきた。

 そして、首を傾げる。


「困惑しておられる……」

「まあ、仕方がないと思います……」


 リヴァイアサンさんはそのまま泳いでいき、砂浜に到着した。

 俺達が背から砂浜に降りると、リヴァイアサンさんが顔を起こし、魔石を砂浜に吐き出す。


「え? 湖におった竜か? なんでおるんじゃ?」


 サクヤ様がリヴァイアサンさんを見上げながら首を傾げた。


「ちょっ!? 私、逃げられないじゃん! 動けないぃー!」


 砂浜に埋まっているタマヒメ様が必死に首を動かしている。


「転移を使えば良くないか?」


 俺もそう思う。


「あ、そうだ!」


 タマヒメ様がパッと消える。

 またしても大事な自分の子であるジュリアさんを置いて逃げてしまった。


「騒がしい神々だな……では、俺は狩りに戻る。じゃあな」


 リヴァイアサンさんはそう言って海に帰っていくと、すぐに見えなくなった。


「え? 帰った? 一体何があったんじゃ?」


 サクヤ様が聞いてくる。


「色々と省きますが、リヴァイアサンが間違えて船に魔法を使ったんですよ。それで船が使えなくなったので送ってもらったんです。それは詫びだそうです」


 魔石を指差す。


「ほーん……何じゃ、この石?」

「シーサーペントの魔石らしいです。めっちゃ高そうです」

「それはすごいのう!」


 いくらぐらいになるんだろ?


「ハルトさん、私は船を回収しないといけないから教会に帰る。それとそいつはそっちでもらってくれていいから」


 ディーネさんが魔石を指差す。


「え? でも、これって船の弁償でしょ?」

「大丈夫。元々、寄贈された船だし、あれくらいなら修理して使う。持て余すし、魔石はそっちで使ってくれ」


 太っ腹だなー。


「ありがとうございます」

「ん。じゃあなー」


 ディーネさんはそう言って、帰っていった。


「サクヤ様、この魔石を1階の寝室にでも置いてくれません?」

「わかった。よーわからんが、おぬしらは休め。あと、別荘に隠れているタマちゃんを呼んできてくれ」

「わかりました」


 俺達は別荘に戻ると、タマヒメ様に声をかけ、休むことにした。

 そして、そのまま別荘でゆっくりと過ごすと、夕方には皆で夕食を食べ、夜にはお酒を飲みながらソファーでまったりと過ごしていく。


「海は楽しかったです?」


 サクヤ様に聞いてみる。


「そうじゃの。夏は海じゃ」

「そうねー。でも、迷惑な竜だったわ。ちょっとビビったじゃないの」


 ちょっと?


「ちょっとか? 派手に騒いで泣いておったような……」

「失礼な。私を誰と心得る? アサイノタマヒメ様よ?」


 逃げたくせに……


「はいはい。おぬしらはどうじゃった? 色々あったみたいじゃが……」


 今度はサクヤ様が聞いてくる。


「楽しかったですよ」

「クルージングは最高でした」


 ねー。


「なら良かったの。リヴァイアサンの背に乗るのも貴重な体験じゃ」

「一生ないでしょうね」

「そんなに頻繁にあっても困りますけどね」


 確かに。


「ドラゴンスレイヤーになり、ワイバーンスレイヤーになり、今度はドラゴンライダーじゃの」


 すげー肩書だ。


「ディーネさんはそれで売っていくらしいですよ」

「ちゃっかりしておるのー」

「そういう人ですから」

「まあの。あの魔石はどうする?」


 それなー。


「なんか魔石の大きさから考えてもヤバそうなんでカーティスさんに相談しようと思います」


 騒ぎになりそう。

 ドラゴンスレイヤーの比じゃないかも。


「それがええかもな。じゃあ、一度戻るか?」

「そうしようと思います」


 まあ、戻るっていうのはギルド的に拠点を変えるっていう意味で俺達は普通にここや火の国の聖都も行く。


「わかった。さて、今日はそろそろ寝るかの」

「そうですね。俺達も寝ます」

「んー」


 俺とジュリアさんは騒ぎながら布団を敷いているサクヤ様とタマヒメ様を尻目に2階に上がると、寝室に入る。

 そして、すぐにはベッドに入らず、窓際の椅子に腰かけた。


「今日はびっくりなことが多かったね」

「ですね。でも、やっぱり楽しかったです。正直、ボス戦かと思いましたけど」

「俺も思った。でも、本当に温厚な竜だったね」


 普通に謝ってたし、詫びまでくれるとは……


「守護神認定もわかりますね」

「だね。ジュリアさんさ、明日の朝、ちょっと早起きして海の朝日を見に行かない?」


 ディーネさんが勧めていたスポットの1つだ。


「良いですねー。行きましょう」

「じゃあ、寝ようか」

「はい。えーっと、6時くらいですかね?」

「準備があるから30分前かな?」


 それくらいでいいだろう。


「じゃあ、目覚ましをセットしておきます」

「ありがとー」

「いえ、じゃあ、明日。おやすみなさい」

「うん、おやすみー」


 俺達はそれぞれのベッドに入り、就寝した。


 翌朝、ジュリアさんのスマホの目覚ましが鳴ったので起きると、準備をし、2人を起こさないようにそーっと別荘を出る。

 そして、2人で手を繋ぎながら海岸沿いを歩いていった。


「キラキラしてるねー」


 海が朝日で光っている。

 何度見ても綺麗だ。


「ええ。それに朝日が気持ちいいです」


 別荘を出る時は眠かったが、もう目も覚めたし、風も太陽の光も気持ちいい。


 俺達はそのまま歩いていき、忙しなく働いている港の商人や漁師の邪魔にならないように通り抜け、さらに海岸沿いを歩いていく。

 そして、立ち止まると、水平線が広がっている海を見る。


「この国は良いよね」

「はい。すごく好きです。もちろん、火の国も良いですけど、すごく夏を感じますし、楽しいです」


 季節的にも水の国は今なんだよな。


「だね。まだ7月になったばかりだし、これからも夏を楽しもうよ」

「そうですね。でも、次は魔導帝国ですか?」

「そこも目指す感じだね。やりたいことがいっぱいあるよ」

「はい。最近は毎日が楽しいです」


 俺もそう。


「どれくらいの時間がかかるかわからないけど、いつかこの世界をすべて見て回りたいね」

「ええ。見て回りましょうよ」


 ジュリアさんが微笑んだ。


「そうしよっか。ジュリアさんさ、これからも一緒にいてくれる?」

「ご一緒したいと思います」

「これからも一緒に色んなところに行き、色んなことをしていきたいと思うんだ。そして、ずっと一緒に生きていきたいと思う」

「私もです」


 ジュリアさんが笑顔で頷く。


「結婚しようか」

「はい」


ここまでが第3章となります。

これまでのところで『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると今後の執筆の励みになります。


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詳しくは活動報告をご覧ください。


よろしくお願いいたします。

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