第131話 戦闘はなし!
俺達は無人島を見て回ったのだが、本当にそんなに大きい島ではないようで1時間くらいで見終わってしまった。
当然、隠し財宝がありそうなところはない。
「のどかですね」
俺達は木陰で腰を下ろし、海を眺めているのだが、ジュリアさんがぽつりとつぶやく。
「そうだねー。あの鳥ってカモメじゃないんだよね?」
「異世界ですからね。この世界にもペンギンとかいるんですかね?」
「どうだろー? いても南極とかじゃない?」
北極にいるっけ?
クマはいるかもだけど。
「行けますかね?」
「わかんないけど、行ってみたいね」
寒さも魔法でどうにかできないもんだろうか?
「のどかな夫婦だな。老後のお爺ちゃんとお婆ちゃんみたい」
ディーネさんが呆れる。
「良いじゃないですか」
「こうやって海を見るだけでも楽しいですよ」
ねー。
「私はもっと動きたいな。泳ごうか……」
「水着ないでしょ」
「そうなんだよなー……ハァ……このまま助けが来なかったらどうする?」
暇だからもしもの話をしているんだろうか、話題のチョイスよ。
「3人で住みますか?」
「食うもんねーよ」
「魚がいるじゃないですか」
「魚は好きだけど、魚ばっかりはなー。米が欲しい」
まあ、栄養バランスは良くないな。
「じゃあ、現実に戻しますけど、助けが来なくてもイカダを作って、向こう岸まで行きますね。魔法で波も動かせますし、風魔法も使えますからどうとでもなります」
イカダの材料はそこら辺にあるし、加工も魔法があればできる。
面倒だからやらないけど。
「暇だ」
「勉強よりはいいでしょ?」
「まあなー。よし、寝よう。おやすみー」
ディーネさんはそう言って横になった。
「のどかだねー」
「ですねー」
俺とジュリアさんはただただ海を見続ける。
いつまでも見ていられそうだ。
「実際問題として、今日中に助けが来るかな?」
「来ないと思います。騒ぎになるのは夜でしょう。そうなると、捜索は朝からということになります。まあ、真っ先に探すのはここですから助けは午前中でしょうね」
俺もそう思う。
「となると、ここで一泊か」
「魔物や獣がいないのは助かりますね」
「だねー。キャンプとでも思おうか」
「良いと思います。野宿も冒険と言えば冒険です」
確かにね。
「問題はご飯だよね?」
「お腹が空きましたね」
もう昼を回っている。
「ご飯は?」
「ないですね。魚でも獲りましょうか」
魔法でどうにかできるかな?
「よし、やってみよう」
「ええ」
俺達は魚を獲るために立ち上がった。
すると、ディーネさんが起き上がる。
「どうしたー?」
「どう考えても助けは明日なので晩御飯の魚でも確保しようかと」
「あー、なるほど。やるか」
ディーネさんも立ち上がったので桟橋の方に歩いていく。
「んー?」
海の様子がおかしい。
「なんか黒くないです?」
「影かな?」
俺達は砂浜で足を止め、海を見る。
すると、どんどんと影が濃くなり、海が盛り上がっていく。
「魔物?」
「いえ、魔力は感じません」
となると、クジラかな?
俺達がそのまま見ていると、盛り上がった海面から竜が顔を出す。
「おー……ウチの竜だ」
「リヴァイアサンさんですね」
「近くで見ると大きいです」
水中神殿で見たリヴァイアサンが何故か海から現れ、俺達を見下ろしている。
ちょっと怖いが、リヴァイアサンから敵意はまったく感じない。
それどころか神々しさを感じる。
「水の巫女と異界の神の眷属か……」
あれぇ!?
「しゃべった!?」
「え? リヴァイアサンさんってしゃべられるんですか?」
ジュリアさんがディーネさんに聞く。
「知らない。しゃべったことある奴なんていねーし」
まあ、湖で寝ているだけだしな。
「あのー、しゃべられるんですか?」
リヴァイアサンさんに聞いてみる。
「言語くらいは扱える。たいしたことじゃない」
たいしたことだよ。
「えーっと、こちらノルン様の巫女のディーネさんです。私はイワミノサクヤヒメ様の一族であるハルトでこちらがアサイノタマヒメ様の一族のジュリアさんです」
「ふむ。のんきに海で遊んでいる神の子だな」
遊んでいるらしい。
まあ、そう言ってたし、そうか。
「ええ。我らの神です」
「そうか……ちなみに確認だが、あそこの船はお前達が乗っていたのか?」
リヴァイアサンさんが桟橋の先で半沈みしている船を見る。
「そうですね。何か当たって船底に穴が開いたようです」
「そうか……それはすまんな」
え……
「あのー、もしやリヴァイアサンさんに当たりました?」
「いや、俺は当たってない。ただ、エサの魚を狙って魔法を使ったのだが、外れてお前らの船に当たった」
魔法かーい。
思いっきり攻撃されてんじゃん。
「えー……」
「いや、低級魔法だぞ? 獲物が粉々になってもいかんし、気絶させる程度だ」
そりゃそうだろうけど。
「それで船が沈んだのか……」
「そうだ。すまんな。弁償してやる。ほれ」
リヴァイアサンさんが口から大きな石を吐き出した。
「これ、何ですか?」
砂浜に落ちた石を見る。
大きさは50センチくらいあり、もはや岩だ。
「北の海にいたシーサーペントを狩った時の魔石だ。やる」
これ、魔石かよ……
「いくらくらいするんだろ?」
「あのドラゴンよりは絶対に高いと思います……」
俺もそう思う。
ってか、シーサーペントって何?
どう考えても雑魚の魔物とは思えないんだけど。
「これでいいか? いいなら帰るが」
「あ、いや、こんなものを渡されても重くて持って帰れないんですけど……」
サクヤ様もタマヒメ様もいないし。
「それもそうか。じゃあ、お前らの神がいる海岸に持っていくか」
リヴァイアサンさんがそう言って、魔石を飲み込む。
「あのー、ついでに送っていってくれません? 船がなくなって途方に暮れてたんですけど」
「あん? あ、そうか。お前らはロクに泳げないから船に乗るんだったな。よかろう。ついでに砂浜まで送っていってやる。乗れ」
リヴァイアサンさんがそう言って、海に潜っていったのだが、尻尾を砂浜に乗せる。
「尻尾から乗るんですかね?」
「多分そうじゃない?」
「リヴァイアサンに乗るっていうのがよくわからんなー」
俺達は尻尾に近づき、そーっと乗る。
そして、そのまま背中に乗ると、リヴァイアサンさんがゆっくりと泳ぎだした。
「周りから見たら俺達って海に浮いているのかな?」
「多分……すごいことになってますね」
「私、今日からリヴァイアサンに乗った巫女で売り出していこうと思う」
マイペースだな、この人。
今週は土曜日も更新します。
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