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第130話 無人島


 ディーネさんに操縦を代わると、かなりのスピードを出し、無人島にまっすぐ進み始めた。


「あははー! 見よ! これが風だー!」


 この人、バイクとか車とか好きそうだな……


「絶対に車に乗せないようにしようね」

「そうですね」


 俺達は呆れつつも風を感じながら海を眺める。

 すると、大きな衝撃が走り、身体がわずかに宙に浮いた。


「――キャッ!」

「ジュリアさん!」


 慌ててジュリアさんを片手で抱きしめるように支え、もう片手で手すりを取る。


「すまーん! 何かに当たったー!」


 ディーネさんが謝罪してきた。


「びっくりしましたー」

「ホントね……何かってなんです?」

「この辺に岩礁はないし、多分、でっかい魚だと思う。たまにあるんだが、ちょっとスピードを出しすぎたわ。わりぃ、わりぃ」


 そんなでかい魚もいるのか。

 マグロとかサメかな?

 もしくは、クジラなんかも考えられる。


「ジュリアさん、大丈夫?」


 そう聞きながら座っているジュリアさんを起こす。


「ええ、大丈夫です。ちょっとびっくりしましたが、ケガもないです」


 ジュリアさんは問題なさそうだ。


「こう言ったらなんだけど、タマヒメ様は来なくて正解だったかもね」

「多分、もう家に帰ってますね」


 すぐ逃げるもんな。


「いやー、本当に悪い。でも、こういうことはたまにあることだから船で遊ぶ時は気を付けてなー」

「わかりました」

「スピードの出しすぎには注意ですね」


 本当にそうだわ。

 海だから事故らないって思ってたけど、水の中には生き物がいるわけだ。


 ディーネさんはスピードを落とし、正面の島に向かっていく。

 そして、島が近づいてくると、桟橋が見えてきた。


「いやー、着いた、着いた」


 ディーネさんは船を桟橋に停泊させると、舵から手を離す。


「色々あったけど、楽しかったね」

「そうですね。今思えば、そういうアトラクションみたいでした」


 まあね。


「降りるぞー」


 俺達は船から降り、桟橋の上を歩いていく。

 すると、奥には森があるのだが、1本の道が見えていた。


「あそこですか?」


 道を指差しながらディーネさんに確認する。


「そうそう。ちなみに、すぐに着く。50メートルくらいかな?」

「そんなもんです?」

「この島はそんなに大きくないんだよ。動物も住んでないし、本当に何もない島だな。ただ祭壇があるだけだ」


 へー……


「ここで一人はなんか嫌ですね」

「だろー? だから助かるわ」


 俺達は桟橋を降りると、砂浜を歩き、森の道に入っていった。

 すると、確かに奥に何かが見える。


「あれです?」

「そうそう。まあ、特に何もないただの祭壇だ」


 俺達がそのまま歩いていくと、高さが3メートルもない小さなピラミッドみたいな祭壇があった。


「火の国と一緒ですね」


 正直、ショボい。


「聖都の教会や神殿みたいに見せるためのものじゃないからなー。祭壇がすごいのは土の国にある通称、生贄の祭壇だな」


 い、生贄……

 火の国で祭壇を見た時にそういうことを思ったが、本当にあるのか。


「すごい名前ですね」

「物騒ですよね……」


 ちょっと怖い。


「まあ、詳細は土の国に行ったら巫女に聞いてくれ。そういうわけで悪いけど、ちょっと待ってくれるか。祈りだけは真面目にしないといけないんだ」

「わかりました」


 ディーネさんは祭壇に登ると、膝をつき、祈り始めたので俺達はそれを眺めながら待つことにした。


「ノルン様への祈りかな?」

「だと思います。多分、ノルン様も聞いておられると思います」


 うん。

 ゲームをしながら聞いていることだろう。


 あんなに活発なディーネさんは祈り始めてからピクリとも動いていない。

 俺達はその場で待ち続け、30分以上経つと、ようやくディーネさんが立ち上がった。


「あー、疲れた」

「お疲れ様です」

「大変ですね」


 サラさんの時も思ったが、これを月一か。


「まあな。でも、大事なことだし、勉強しているよりずっとマシだ」


「帰りましょうか」

「そだなー。適当にクルージングして、夕方まで遊ぼうぜ」


 サボりたいわけね。


「そうですね」

「では、行きましょうか」


 俺達は来た道を引き返し、森から出ると、一面に広がる海と桟橋に見える船を見る。


「………………」

「………………」

「………………」


 俺達は足を止め、何も言葉を発せずにただただ船を見る。


「……小さくなった?」

「……低くなりましたかね?」

「……いやー、沈んでるなー」


 船は下半分が海に沈んでおり、なんか廃船のように見えた。


「魚に当たった時か……」

「多分、あれだと思います」

「船底に穴が開いちゃったかー……特殊な素材でできているから丈夫なはずなんだけどな」


 うーん……


「どうしよ」

「とてもではないですけど、船を直すことはできませんし、この距離は泳げませんね」

「ごめーん……」


 ディーネさんがしょぼーんとなる。


「いえ、あれは事故ですよ」

「ですね。私達もスピードを出していましたし、たまたまディーネさんの時に当たっただけです」


 本当にそう。


「いや、私が誘ったから遭難に……」

「いやいや、そんな大事ではないですよ。教会の人もディーネさんがここに来ていることは知っていますし、戻ってこなかったら捜索に来ます」

「そうですよ。ウチの神様達も夜になっても戻ってこなかったら動いてくださいます」


 多分、ノルン様に頼んでどうにかしてくれるだろう。


「そっかー。じゃあ、ここで待機か……あ、仕事とか用事は大丈夫?」

「明日も休みですから問題ありませんよ」

「せっかくですし、無人島を探索しません? 昔の海賊が隠した財宝でもありそうじゃないですか」


 ありそう。


「そんなもんは絶対にないと思うけど、暇だから探索してみるか」

「そうしましょう」

「行きましょう」


 俺達は島を見て回ることにした。


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― 新着の感想 ―
ディーネさんとノルン様が御対面して欲しいw
祭壇でノルン様に言えば、すぐにサクヤ様が 迎えに来てくれるのではw
船底が損傷するとか海の生物頑強過ぎる…
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