第128話 本当に気が合う
遅くまでディーネさんとお酒を楽しんだ俺達は別荘に戻ると、すでにサクヤ様とタマヒメ様が寝ていたので音を立てないようにこっそりお風呂に入り、就寝した。
翌日はちょっと遅めに起き、午前中はこちらでゆっくりと過ごす。
そして、昼食を外で食べると、家に戻り、解散となった。
「夜の神殿はどうじゃった?」
部屋の掃除をしていると、サクヤ様が聞いてくる。
「良かったですよー。ジュリアさんがすごく喜んでいましたし、行って良かったです」
「そうか、そうか。ええことじゃの」
「それで帰りにディーネさんに会ったんで一緒に飲みに行きました」
「ん? あ、それで帰りが遅かったのか。てっきりどこぞにしけこんでいるのかと思った」
だから今まで聞いてこなかったのか……
「確かに良い雰囲気ではありましたが、そんなことしませんよ。それで今度の土曜日なんですが、ディーネさんの仕事の手伝いで島に行くことになりました。ほら、別荘から見える島がありますよね? あそこです」
「んー? 仕事って何じゃ?」
「火の国でもサラさんがノルン様に祈るために火山の近くまで行きましたよね? あれと同じように水の巫女はその無人島で祈るらしいです」
「ふーん、この部屋に連れてきて、こやつに祈ればいいのに」
サクヤ様が我関せずとゲームをしているノルン様を見る。
「やめた方が良いですよ」
「まあの。幻滅しそうじゃ」
「失礼ですね」
ゲームをしていたノルン様が振り向く。
「事実じゃろ」
「まあまあ……そういうわけで土曜日の朝からジュリアさんと行ってきます。サクヤ様は行きませんよね?」
「船か?」
すでに嫌そうだ。
「ええ。前に言っていたクルージングです」
「うむ、行かん。タマちゃんと海で遊ぶわ」
だと思った。
「じゃあ、3人で行ってきます」
「気を付けろよ」
「魔物は出ないらしいので本当にただのクルージングですよ。ディーネさんは暇だから付き合ってほしいって言ってました」
水の国に来てから全然、魔物を倒していないし、仕事もロクにしていない。
遊んでばっかりだ。
「そうか。なら問題ないな。楽しんでこい」
「そうします」
次の週末の予定を決めると、掃除を再開し、家のことをしていく。
夕方になると、ジュリアさんの家に行き、南蛮漬けと身がたっぷりのあら汁をご馳走になった。
そして、翌日から仕事が始まる。
この週もあまり天気は良くなく、それでいて暑いので不快指数がものすごく高い。
それでも仕事を頑張っていき、木曜の昼にジュリアさんとお互いの会社の中間地点にあるファミレスで待ち合わせをした。
そして、定食を注文し、一緒に食べる。
「お肉が美味しいよ」
「ずっと魚でしたもんね」
ジュリアさんが苦笑いを浮かべた。
今週は残った魚の処理でずっと魚だったのだ。
美味しいけど、さすがに肉を食べたいと思ってきていた。
「またワイバーン狩りでもする? バーベキューできるよね?」
「良いですね。そろそろ倉庫もできた頃でしょうか?」
それの確認のためにも一度、フロックの王都に戻ろうかな……
「水の国はいつでも来れるしさ、今度の仕事が終わったら次を目指さない?」
「良いと思います。どうします? タマヒメ様とサクヤヒメ様は私達で予定を決めろって言ってましたけど」
言ってたね。
「それなんだけどさ、候補としては他の聖地である土の国と風の国がまず上がると思うんだよ」
「確かにそうですね。でも、遠いんでしたっけ?」
「だね。地図を見ても明らかに距離があるし、ディーネさんも普通に遠いって言ってた」
「まあ、ゆっくり行っても良いと思いますけど……」
それはそうだ。
別に急いでいるわけではないし、色んな国を見ながら向かってもいい。
「それでさ、そういう話をサラさんとディーネさんとしたんだけど、2人がまずは魔導帝国に行ってはどうかって勧めてきたんだよ。理由は近いから」
「確かに近いですよね。地図的にはボアのバター焼きのルイナの町をずっと南でしたよね?」
ボアのバター焼きが食べたくなってきたなー……
「そうだね。色んな魔道具とかありそうだし、俺達は魔法使いだから優遇されるらしい」
「色んなところでそれを聞きますけど、ものすごい差別臭がしませんか?」
それは俺もものすごく感じていた。
魔法使いを優遇し、そうじゃない者には厳しいっていうのが魔導帝国の印象だ。
「するね。その辺がちょっと不安だけど、サラさんとディーネさん、それに魔法ギルドのチェスターさんも勧めるわけだしね」
「その3人が勧めるなら大丈夫なような気はしますね」
チェスターさんも軽いだけで悪い人じゃないからな。
「図書館があるらしいし、行ってみようよ」
「図書館……魔法に関する本がたくさんありそうですし、気になりますね」
「でしょ? 外交官だったカーティスさんに話を聞いてみて、目指してみようよ」
あの人が止めるようならまた考えよう。
「そうですね。良いと思います」
ジュリアさんが頷いた。
「じゃあ、その方向で進めるって感じでサクヤ様やタマヒメ様に伝えておくよ」
サクヤ様もだが、タマヒメ様もよくウチにいる。
サクヤ様とアニメを見ているかノルン様とゲームをしているのだ。
「お願いします……あ、もうこんな時間ですね」
「ホントだ。じゃあ、会社に戻ろうか」
「そうですね」
俺達は会計を済ませると、ファミレスを出る。
「じゃあ、午後からも頑張ってね」
「はい。ハルトさんも……あの、今日の夕食はルイナの町でボアのバター焼きを食べません?」
ジュリアさんも同じことを考えていたようだ。
「話をしたら食べたくなったよね?」
「はい。魚ばっかりでしたし、言葉に出したら今欲しているものがわかりました」
うん、濃厚な肉だね。
「じゃあ、そうしよっか。仕事が終わって準備ができたら連絡してよ」
「わかりました。なんか午後からも頑張れそうです」
「だよねー」
俺達は手を振り合うと、それぞれの車に乗り込み、仕事場に戻る。
そして、午後からの仕事を頑張り、夕食は珍しくノルン様も交えて、皆でボアのバター焼き定食を食べた。
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