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第127話 水の国の深夜


「こっち、こっち」


 教会を出ると、ディーネさんが南の大通りの方に歩いていったのでついていく。


「よく抜け出すんですか?」

「たまーにだよ、たまーに」


 それを聞いて、ジュリアさんと顔を見合わせる。


「……しょっちゅうって聞こえた」

「……私もです」


 この人、本当に裏表がないというか、嘘が下手くそな人だ。


 俺達がそのまま歩いていくと、ディーネさんがとある店に入っていったので俺達も続く。

 店は大衆店ではなく、ちょっと薄暗くてバーのようなお店だった。


「いらっしゃい、ディーネちゃん……あら? 今日はお友達が一緒なの?」


 バーの店主っぽい女性が出迎える。


「そうそう。だから今日はボックス席で頼む」

「どうぞ。2人もよく来てくれたわ」


 俺達が店に入ると、奥にあるボックス席に通された。


「何飲む?」


 俺達が席につくと、店主が聞いてくる。


「私はいつもの。この2人は新婚さんだからなんかそれっぽいもの」

「はいはい」


 店主がカウンターに戻ると、お酒を作っているのが見える。


「……いつものって言ったよね?」

「……そういうことなんでしょう」


 やっぱりしょっちゅうだ。


「別にいいだろー。サラだって、好き勝手してんじゃん」


 聞こえたようだ。


「サラさんも飲み歩いているんですかね?」

「いや、食べ歩きというか、辛い物を求めてさまよっているらしい」


 どんな放浪記だよ。

 でも、サラさんらしい。


「お待ちどおさま」


 店主がお酒を持ってきてくれた。

 ディーネさんは透明なお酒で俺とジュリアさんは水色のカクテルっぽいお酒だ。


「どうもー」

「ゆっくりしていってね」


 店主がカウンターに戻っていく。


「乾杯しようぜ。かんぱーい」


 ディーネさんがグラスを掲げたので合わせた。


「かんぱーい」

「乾杯」


 俺達は乾杯をし、一口飲む。

 ちょっと甘めのお酒だが、しつこくなく、飲みやすい。


「あ、美味しい」


 ジュリアさんの口にも合ったようだ。


「飲みやすいよね?」

「はい。すごく美味しいです」


 異世界のお酒もやっぱり美味しいわ。


「ウチの国は水が良いからなー。お酒も自慢なんだよ」

「良い国ですね」


 本当にそう思う。


「だろー? 夜の神殿はどうだった?」

「俺達がこう言うのもなんですが、別世界に来たようでしたね」

「ずっといられそうでした」


 本当にそう思う。

 時間を忘れるっていうのはああいうことを言うんだなって思った。

 ジュリアさんは特にだろう。


「あそこはすごいからな」

「あ、そういえば、リヴァイアサンがいませんでしたけど、どこに行ったんですかね?」

「海にでも行ってるんだろ。リヴァイアサンはあそこを寝床にしているだけだからな」


 やっぱりご飯のための狩りかな?

 それとも空気を読んだか。


「完全に家ですね」

「そうなんだろうな。ずっといるからわかるけど、リヴァイアサンはいつも同じところで寝るんだ」

「へー……」


 本当に家だな。


「私らはそれで助かってるんだよ。ところで、ハルトさんとジュリアさんって暇? 仕事をする気ない?」


 ん?


「仕事って何です?」

「今日、サラに聞いたんだけど、火の巫女の祈りに同行したらしいじゃん。ウチも同じようなのがあるんだけど、付き合ってくんね?」


 ワイバーンを狩ったあれか。


「山登りです?」

「いや、ウチの祈りの場所は山じゃなくて海だな。近くに無人島があるんだよー。そこに祭壇があるからそこで祈る。あ、ちょうどあのコテージから見える島」


 あー、あれかー……

 確かにあった。


「わかります」

「確かにありますね。毎月、あそこまで行くんですか?」


 ジュリアさんが聞く。


「まあなー。当然、船で行くんだけど、せっかくだし、2人も付き合わない? 別に魔物が出るわけでもないし、ただ付き合うだけだけど、護衛ってことでさ。1人は暇なんだよ」


 護衛ってことは依頼料が出るわけだ。


「いつも1人なんですか?」

「基本的にはな。でも、退屈じゃん。付き合ってよ」


 まあ、別にいいが……


「それいつです? 実は俺達も仕事があるので来れる日も決まっているんですよ」

「近いうちならいつでもいいよ。祈りも月一っていうのは決まっているけど、別に日にちが決まっているわけでもないから」

「来週の今日は?」

「それでいい。天気も良いし」


 さすがはお天気お姉さんだ。


「ジュリアさんはどう?」


 俺は大丈夫だが、ジュリアさんにも確認する。


「私も大丈夫です。ディーネさんのお手伝いならしたいですし、無人島も気になります」

「だよね。ディーネさん、付き合いますよ」


 ジュリアさんが言うようにディーネさんの手伝いなら喜んでするし、クルージングを楽しもう。


「おー! ありがとう!」

「朝から行くんですか?」

「そうだなー。迎えに行くよ。それから港に行く感じだな」


 じゃあ、来週の金曜はこっちで泊まるか。


「わかりました」

「魔物が出ないかもしれませんが、何かあったら任せておいてください」


 ドラゴンやワイバーンが出ないかな?

 そしたら御馳走なのに。


「心強いなー。ママー! おかわりー! それとこっちの人間ができた新婚さんにもー!」


 いつの間にか俺達のグラスも空いていた。


「マスターって呼びなって言ってるでしょー。ちょっと待ってねー」


 マスターがお酒のおかわりを持ってきてくれたのでその後も話をしながら飲んでいく。

 お酒は美味しかったし、ディーネさんの話が面白かったので日を跨ぐまで楽しんだ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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