第121話 秋山さん「見せつければそれでチェックメイト!」
俺達はリヴァイアサンの話を聞いた後、ジュリアさんの家に行き、皆で夕食を食べた。
そして、翌日から月曜になり、淡々と仕事をこなしていく。
ただ、何故だかわからないが、今週は苦ではなかったし、ワクワク感が強かった。
なんでだろうね?
月曜から始まった1週間もあっという間に過ぎ、金曜になると、水の国の方の別荘に泊まることになり、夕食後に翌日の準備をする。
「ふー! ふー! 全然、膨らまないんですけど?」
タマヒメ様が一生懸命、息で浮き輪を膨らませようとしていた。
「すみません……ここに空気入れが……」
黄色くて丸い空気入れを袋から取り出した。
「はよ言えや」
タマヒメ様が真顔になる。
「バッカじゃのー……本当にバッカじゃのー。息でできるわけないじゃろ」
俺は子供の頃にサクヤ様が息で膨らませていたのを覚えているけどね。
「うるさいわねー。私は最近、泳ぎにいってないのよ」
タマヒメ様は空気入れを受け取ると、その小さな足で踏み、浮き輪に空気を入れていく。
「釣りはできるか?」
「それはできる。30年くらい前にやった」
神様の時間の感覚がすごいな。
30年は最近のうちらしい。
「釣り道具は完全に日本のものですけど、大丈夫なんですかね?」
ジュリアさんが聞いてくる。
「まあ、やり方は一緒だし、大丈夫でしょ。エサは一応、こっちのものを使うし」
明日は午前中に海で泳ぎ、午後から釣りをすることになったのだ。
そして、夕食は釣った魚を焼く予定。
釣れたらね……
「それもそうですね。ハルトさんは釣りをしたことあるんでしたよね?」
「子供の頃にね。まあ、適当でいいでしょ。釣れなかったら魚を買ってきて針につけるよ。それで写真を撮って」
「ふふっ、いいですね。あ、タマヒメ様、こっち向いてください」
ジュリアさんがスマホをタマヒメ様に向ける。
「何?」
タマヒメ様はそう言いつつ、ピースサインを作った。
すると、ジュリアさんが写真を撮り、見せてくる。
「可愛いね」
「ええ。可愛いです」
本当に海が楽しみな子供みたいだ。
「私なんか撮らなくてもいいわよ」
「と言いつつ、しっかり嬉しそうにポーズを取るタマちゃんであった」
サクヤ様が茶化した。
「うっさい。貸しなさい。写真がいるのはあんたらでしょ」
タマヒメ様はジュリアさんのスマホを取り、足をへこへこさせながらこちらに向けてきた。
「撮れますー?」
「問題ないわ。私がカメラマンをしてあげるからあんたらは適当に過ごしてなさい」
まあ、任せるか。
「明日の午前中は撮らないでくださいね」
まあ、水着は嫌だろうね。
「わかってるわよ。というか、防水かは知らないけど、海にスマホなんて持っていけないわよ」
俺のスマホは防水だな。
あ、他意はないです。
俺達はその後も準備をし、この日は早めに就寝した。
そして、翌朝、皆で朝食を食べる。
「あれ? 少ないね?」
朝食はトーストなのだが、ジュリアさんは半分しかない。
その分、何故か、俺は1.5枚だ。
「お気になさらずに」
「タマちゃん、我と半分こしよう」
「そうね。ハルト、育ち盛りなんだから食べなさい」
俺のトーストが2.5枚になった。
「いただきます……」
そんなもんは誤差だし、気にしないって思ったけど、何も言わずに2枚と半分を食べた。
そして、女性陣が2階の寝室に行ったので1階の寝室で着替える。
「大丈夫だよな?」
今さらながらに気になり、お腹を触ってみる。
まだ、大丈夫だと思うが、俺ももう30歳……トーストを2.5枚も食べて大丈夫、かな?
「よし」
自分に大丈夫と言い聞かせ、寝室を出ると、昨日準備していた浮き輪やパラソルなんかを持って、外に出る。
一度では持っていけなかったので何往復かすると、サクヤ様がやってきた。
サクヤ様は可愛らしいワンピースタイプの水着を着ている。
「可愛いですよー」
「我のことはよい。それよりも日焼け止めは塗ったか?」
あー……
「塗ってないです」
「ほれ、塗れ」
サクヤ様から日焼け止めを受け取ると、パラソルの下に設置した敷物に腰かけ、日焼け止めを塗っていく。
「背中に塗ってやろう」
「ありがとうございます」
サクヤ様が俺の背中に日焼け止めを塗ってくれる。
「……昨日、タマちゃんはああ言っておったが、写真が欲しければ言えよ。我がこっそり撮ってやる」
サクヤ様が耳元で囁いてきた。
「盗撮犯みたいなことを言わないでくださいよ」
というか、まごうことなき盗撮だ。
これが岩見の神様か?
「そうか? いらんか?」
「大丈夫です」
目に焼き付けるから。
「そうか……きっと春まで何を悩んでいたんだろうって思うと思うぞ」
「どういうことっすか?」
「後ろを見てみい」
サクヤ様にそう言われたので振り向くと、タマヒメ様とジュリアさんが別荘から出て、こちらにやってきていた。
タマヒメ様はサクヤ様と同じようにワンピースタイプの水着で思わず笑顔になりそうなくらいに非常に可愛らしかった。
一方でその隣のジュリアさんは薄ピンクのパーカーを羽織っている。
ただし、前は開いているし、ちゃんと水着は見えており、まさかの白いビキニだった。
「あれ、大丈夫だったんです?」
「セパレートはやめよって言うつもりじゃったんだが、まさかの自分であれを選んだ」
まさかだな。
あ、秋山さんか。
「すごいっすね」
ジュリアさんの肌は白く、全体的にすらっとしていて美しい。
そして、服の上からでもあるなーと思っていたが、やっぱりある。
「……写真は?」
「それはいいです」
ただ、春まで何を悩んでいたんだろうっていう意味はわかった。
男の子だもん。
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