第117話 BBQ
そのまま待っていると、部屋着と和服に着替えたジュリアさんとタマヒメ様がやってきた。
時刻は18時を回っており、ちょうどいい時間だ。
「お待たせしました」
ジュリアさんがそう言って、テーブルに食材を並べていった。
魚、エビ、貝なんかと共に俺が買ってきた野菜やキノコを見ていると、焼く前なのに食欲をそそる。
「美味しそうだね」
「ですよね。味付けはあえて、日本風にしました。塩をかけてもいいですし、醤油も持ってきてあります。あと、貝用の料理酒を加えた醤油もありますね」
「良いねー。おにぎりも握ってきたんだね」
海苔を巻いていない白い三角のおにぎりはラップに包まれている。
「これはあとで焼きおにぎりにしようと思っています」
おー、それは良い!
「ええの。我は好きじゃぞ」
「私が提案したのよ」
「おぬしもたまには良い提案をするの」
「たまにじゃないから。いつもだから」
仲良しさんだなー。
「焼こうか」
「そうですね。えーっと、火は?」
まだ木炭が置いてあるだけだ。
「見てて。ファイヤー」
なるべく威力を落とし、火魔法を使った。
すると、あっという間に火が点く。
「ハルトさん、すごいです!」
ジュリアさんが拍手してくれる。
「そう? じゃあ、焼こうか」
「はい」
俺達は野菜と魚介類を乗せていく。
「この貝は私のね」
「じゃあ、我はこれ」
子供みたいだ……
というか、もう姉妹だろ。
「サクヤ様、お酒をくださいよ」
「あ、そうよ。あんた、なにを1人で飲んでんのよ?」
「はいはい。何がいい?」
サクヤ様が俺達を見渡しながら聞いてくる。
「ハイボール!」
「俺はレモンのやつをください。あ、ジュリアさん、いっぱい買ってきたから種類はあるよ」
「じゃあ、ぶどうのやつはありますかね?」
「はいはい……」
サクヤ様が転移を使うと、ウチの冷蔵庫にあるハイボールが2本、レモン酎ハイ、ぶどう酎ハイがテーブルに現れた。
俺達はそれぞれの缶を手に取ると、乾杯をし一口飲む。
「いやー、夏じゃのー」
「夏ねー」
おっさんみたいだなー……
「美味しいね」
「そうですね。こういう風に飲むのも風情があって楽しいです。間違いなく、私の人生で一番の夏です」
「俺もだよ」
絶対に超えないだろうと思っていた学生の頃の夏休みを超えている。
それぐらいに楽しいし、充実していた。
まさしく、リア充。
ここはリアルと言っていいかわからない異世界だけど。
俺達はちょびちょび飲みながら焼けるのを待つ。
「この貝はもう大丈夫ですよ」
ジュリアさんがそう言って貝類を指差した。
「そうか、そうか」
「どれどれ」
サクヤ様とタマヒメ様がハマグリみたいな貝を取り皿に乗せ、食べ始めた。
「おー! 美味いの!」
「この町の謎の調味料も美味しいけど、やっぱり醤油よね!」
ほー……
絶賛する2人を見て、俺とジュリアさんも箸を伸ばす。
そして、食べてみたのだが、濃厚で美味しかった。
「これは美味しいね」
「そうですね。牡蠣に近いかもしれません」
「確かに……」
貝を食べ終えたので酎ハイを飲む。
3人もそれぞれのお酒を飲んだ。
「夏じゃのー」
「良いわねー」
「美味しいなー」
「異世界って素敵なところですね」
ホント、ホント。
「エビ焼こ」
「良いですね!」
俺とジュリアさんはエビが好きなのだ。
「サクヤ様とタマヒメ様は何が良いです?」
「魚を焼いてくれ。塩な」
「貝」
俺達は要望通りに網に食材を乗せていく。
「あ、ノルン様にも送らないと」
「そうじゃったの。すっかり忘れておった」
忘れないで。
「ノルン? あいつ、何してんの?」
「ゲーム」
「好きねー……ハルトの家の電気代をどれだけ食ってんのかしら?」
そこは考えないようにしている。
仕方がないことだもん。
「まあ、良いじゃないですか。ノルン様の分も焼きますんで送ってください」
「はいよ」
俺達はその後も焼いた魚介類や野菜を食べ、お酒を楽しんでいく。
「あー、良いわねー。絶対に向こうではできないことだわ」
「できんことはないが、金と時間はかかるの」
異世界のお金はいっぱい持ってるし、転移があるからすぐに来れるからね。
これが向こうだと、車で海まで行き、さらに色々と借りたりしないといけないから金が結構かかる。
「それはできないって言うのよ。ハルトもジュリアも仕事があるから時間がない。あと、そんなに給料は良くない」
「はい……」
「すみません……」
なんとなく、ジュリアさんと同時に酎ハイをテーブルに置いた。
「あ、いや、責めているわけでもないし、それが普通よ。でも、だからこそ、ここは良いわねってこと。あんたらはあっちで使えない魔法を使って、いくらでも稼げるし、ノルンのおかげでこうやって別荘までもらえたんだから」
ノルン様、ばんざーいってことだな。
「楽しいですよ」
「私もです」
「うんうん。さあ、飲みなさい」
俺達はその後も飲み食いを続けていったが、さすがにお腹もいっぱいになってくる。
「そろそろ締めじゃの」
「じゃあ、おにぎりを焼きますね……食べられるかな?」
ジュリアさんはかなりお腹に来ているようだ。
「半分こしない? 余った1つはノルン様に送ってあげようよ」
「あ、良いですね。そうしましょう」
ジュリアさんは頷くと、4つのおにぎりを網に乗せ、焼いていく。
そして、両面を焼くと、醤油ダレをつけ、さらに焼いていった。
「ええ匂いじゃの」
「良いわよねー」
確かに醤油が焦げた良い匂いがする。
「もう大丈夫ですよ。1つをノルン様に送ってください」
ジュリアさんがそう言うと、サクヤ様が紙皿におにぎりを乗せ、転移で送る。
そして、タマヒメ様と共に焼きおにぎりを食べだした。
「美味いの」
「おいひいわね」
ホント、姉妹みたいだ。
なんとなくだけど、サクヤ様が姉でタマヒメ様が妹感がある。
「ハルトさん、どうぞ」
ジュリアさんが焼きおにぎりを半分に分けてくれる。
「ありがとう」
ジュリアさんから半分こした焼きおにぎりを受け取り、食べてみる。
カリッとした食感と香ばしい匂いのするおにぎりは絶品だった。
「美味しいですね」
「そうだね」
タマヒメ様の提案に感謝だ。
あと、ジュリアさんと半分こして食べるというのもなんとなく良いなと思った。
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